2023年11月15日、カリフォルニア州ウッドサイドで開催されたAPEC首脳会議の合間に、庭園を一緒に歩くジョー・バイデン大統領と習近平国家主席。
BRENDAN SMIALOWSKI
- バイデン大統領と習近平国家主席は、APECでの首脳会談でこじれた関係の改善に努めた。
- しかし、超大国間の対立が直接的な衝突に発展する恐れは依然として残されている。
- 11月15日の会談ではいくつかの進展があったものの、両首脳間の深い溝は残っている。
中国の習近平国家主席は11月15日、サンフランシスコで開催中のアジア太平洋経済協力(APEC)でアメリカのジョー・バイデン(Joe Biden)大統領と1年以上ぶりとなる会談に臨んだ。
その後に行われたビジネスリーダーに向けた講演では、米中の緊張によって引き起こされる可能性のある悲惨な結果をことさら強調し、「もし我々が互いを最大のライバル、最も重大な地政学的挑戦、そして常に差し迫った脅威とみなすならば、それは必然的に間違った政策、間違った行動、そして間違った結果を招くだろう」と語り、「中国はアメリカのパートナーであり、友人であることを望んでいる」と付け加えた。
習近平はこの演説で、数カ月にわたって関係が悪化している超大国間で、共通の着地点を見出そうと躍起になっているようだった。しかし、言葉とは裏腹に、軍事、技術、経済で世界をリードする2国の間には大きな隔たりが残った。
両国は直接的な衝突に発展する可能性さえあるとアナリストは述べていた。11月15日の会談でこの懸念は薄れたものの、解消されたわけではない。
「中国政府が緊張を緩和させ、偽りの約束をしたとしても、中国政府はアメリカやその同盟国とのグローバルな競争・対立に向けた戦略の性質や構造を変えることはないだろう」とアトラス・グループ(Atlas Group)のCEOで、米中関係の専門家であるジョナサン・ウォード(Jonathan Ward)は、会談の前にInsiderに語っていた。
習近平、アメリカのビジネスリーダーを口説く
習主席は普段、世界の紛争や不安定性の責任をアメリカになすりつけようとしているが、バイデン大統領との会談後にアメリカのビジネスリーダーに向けて講演した際には、突然トーンが変化した。
中国経済が稀に見る低迷期に陥っている最中に、アメリカのビジネスリーダーを説得するような演説を行い、中国経済の回復につながる投資を確保しようと懸命になっていると報じられた。
習主席とバイデン大統領の会談では、気候危機、医療用麻薬フェンタニルの製造・輸出の取り締まり、ナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)前下院議長による2022年の台湾訪問以来、途絶えているホットラインの再開などの問題で重要な合意に至った。
この首脳会談は、台湾独立やウクライナ、中東での戦争といった問題で互いに非難の応酬が繰り広げられる中で開催されたため、大きな成果は期待されていなかったが、その割には成功したと言えそうだ。
台湾、ウクライナ、中東をめぐる衝突の可能性
しかし、米中間には根本的な相違が残っている。アナリストによると、15日の首脳会談で、関係性に多少の改善は見られたものの、外交の現実的な面ではそうではないという。
両首脳が合意に至った分野と同様に、合意に至らなかった分野も注目に値する。会談前には政府関係者の間で、核兵器制御システムにおけるAI使用の新たな制限について両首脳が合意するのではないかとの期待が高まったが、これは実現しなかった。
また、バイデン大統領が武力を行使してでもアメリカが守ると主張していた(この主張は後にホワイトハウスによって撤回された)台湾の自治という悩ましい問題に関しても、新しい現実的な合意には至らなかった。
ニューヨーク・タイムズによると、習主席は会談でバイデン大統領に台湾を武装させることをやめるよう求めたという。だが、そうすれば中国の侵略を煽ることになるため、バイデン大統領がそれに応じることはないないだろうとアナリストがInsiderに語っていた。
世界各地で発生している紛争において、中国とアメリカはそれぞれ反対の陣営を支援している。ウクライナ戦争では中国がロシアを、アメリカがウクライナを支援し、イスラエルとハマスの戦争では、中国はパレスチナ人を支援し、アメリカはイスラエルのガザ攻撃を支持している。
また、中国が覇権を確立しようとしている南シナ海では、中国の軍用機がアメリカの戦闘機への威嚇を試みていた。
このような世界の火種について、両首脳は具体的な外交的進展を見い出せなかった。
両首脳の間を隔てる溝を示すように、バイデン大統領は入念に準備された会談のわずか数時間後、記者会見で習主席を「独裁者」と呼び、中国からの激しい反発を招いた。
習主席は、不振にあえぐ中国経済を活性化させるため、アメリカとの敵対関係を改善しようと躍起になっているようだが、アメリカを蹴落として世界の超大国になるという野心に変わりはないだろう。一方のアメリカも、中国を撃退しようという決意に変わりはない。