撮影:荒幡温子
11月17日(金)〜12月4日(月)まで、「『パルコを広告する』 1969 - 2023 PARCO 広告展」が開催中だ。
PARCOの広告と言えば、その時代の世相を色濃く反映し、広告の域を超えた一つの作品のように強烈なインパクトを与えてきた。
あの頃を懐かしむことができるだけでなく、一世を風靡した伝説の過去作からも、クリエイティブのヒントが得られるはずだ。
業界人のキュレーションから読み解く
今回の展覧会では、「2000年代以降〜/アート」「1990年代/渋谷」「1980年代/広告」「1970 年代/予言」の4つの年代に分けてパルコの広告史を追っていく。
こうした場合、過去から未来へと流れていくのが普通だが、この展覧会ではその逆。
「現在から過去の時代に遡ることで、 パルコの広告の原点を探っていくという構成になっています(展覧会担当者)」
そのような構成でも過去作が決して劣ることがないというのが、パルコの広告の時代を超えた影響力を物語っている。
展覧会にあたって、クリエイター・編集者・哲学者などのゲストキュレーターが広告を厳選。こうした広告の展覧会を行うのはほとんど初めてといい、特に初期の広告は「倉庫から引っ張ってきた貴重なもの」とのこと。
「2000年代以降〜/アート」
撮影:荒幡温子
つい最近のことのように感じられる2000年代、見覚えのある広告が並ぶ。
水曜日のカンパネラ・詩羽さんやchelmicoの出演するコーポレートメッセージ広告「SPECIAL IN YOU.」シリーズや、箭内道彦氏がクリエイティブディレクターを務め、木村カエラさんが出演する「PARCO SAYS,」など、他の年代と比べて自由や多様性を尊重するムードが漂う。
佐藤可士和氏の手がける、メッセージのみのグラフィックのような、斬新な広告も。
・ゲストキュレーター:布施琳太郎氏(アーティスト)、野村由芽氏(編集者)
1990年代/渋谷
コーネリアスや小沢健二、ピチカート・ファイヴといった渋谷系ジャンルのアーティストの起用や、世界的監督・ソフィア・コッポラを始めとするガーリーカルチャーの表現など、90年代の名だたるプレイヤーが参加。
特にソフィア・コッポラは、初監督作品『ヴァージン・スーサイズ』(1999)を発表する前にフォトグラファーとして起用されたとあって、パルコの先見の明がうかがえる。
・ゲストキュレーター 野宮真貴氏(歌手・エッセイスト)、千葉雅也氏(哲学者・作家)
1980年代/広告
日本の広告史を築き挙げたクリエイターたちがしのぎを削った1980年代は、いわば広告の華の時代。
井上嗣也氏の手がけたハドソン川で泳ぐ内田裕也の姿や、「狩人か。旅人か。」「どうも明日は。」「エブリバデ、大統領ッ。」といった糸井重里氏の象徴的なコピーなど、商業施設であるパルコを分かりやすく物語るものではないことに気づく。
ある種謎解きのようだが、それでいてパワフルな印象を残している。
・ゲストキュレーター 椹木野衣氏(美術批評家)、菅付雅信氏(編集者)
1970 年代/予言
山口はるみ氏の描く女性たちは「はるみギャルス」と呼ばれ、女性の社会進出のアイコンに。
石岡瑛子氏(アートディレクター)、山口はるみ氏(イラストレーター)、小池一子氏(コピーライター)の3名が中心となって作り上げた、広告黎明期のアートワークたち。ニューヨーク近代美術館(MoMA)にも展示されており、国際的評価も高い。
1970年代は、女性が精神的にも社会的にも自立していった時代。当時創刊されたばかりの平凡出版株式会社(現マガジンハウス)の「an・an」や集英社の「non-no」などの女性誌も、相次いで自立する女性像を掲げていた。
パルコのクリエイティブも同様に、そんな女性の解放の一端を担っていた。
さらに、白人・黒人・アジア人が並んだ「さらば故郷、ファッションに国境はない。」のように、かつて社会の周縁的存在とされた人々にもスポットライトを当てた広告も。2000年代以降のメッセージは、実は1970年代から未来のあるべき姿として“予言”されていたのだ。
・ゲストキュレーター:上野千鶴子氏(社会学者)、はらだ有彩氏(テキストレーター)
渋谷PARCOは50周年
2023年は、渋谷PARCO50周年の年。
「DISCOVER UNKOWNS」と冠された記念広告を担当するのは、井上嗣也氏。名クリエイティブディレクターがメモリアルな1年を飾った一方で、2023年の「HAPPY HOLIDAYSキャンペーン」では、実在のモデル撮影を一切行わず、画像生成AIで制作したファッション広告を発表した。
日本の広告表現の金字塔として、進化を続けるパルコ。会場内で放映されるゲストキュレーターによる対談ビデオとともに、50周年という時の流れに思いを馳せてみてほしい。
「パルコを広告する」 1969 - 2023 PARCO 広告展
会期 : 2023年11月17日(金)~2023年12月4日(月)11:00~21:00
※入場は閉場の30分前まで。展覧会初日・最終日は18時閉場。
会場 : PARCO MUSEUM TOKYO (渋谷 PARCO4F/ 東京都渋谷区宇田川町 15-1)
入場料 : 無料