写真左からNTT島田明社長、KDDI髙橋誠社長、ソフトバンク宮川潤一社長、楽天グループ三木谷浩史会長。
撮影:小林優多郎、出典:KDDI
NTT法の見直しを巡る議論がX(旧Twitter)上に飛び火している。
NTT広報室の公式Xアカウントが楽天グループ・三木谷浩史会長の主張に対して引用するかたちで「ナンセンスな話」だと斬りつけたのだ。
企業アカウントが、経営トップとはいえ個人アカウントに直接、意見をぶつけるのは本当に珍しい。
NTT法の見直しを巡る対立は、これまで記者会見の場で各社幹部が意見を述べていた。
しかし11月14日、自民党の作業グループで「NTT法を最終的には再来年の通常国会までに廃止すべきという原案がまとまった」という報道があった。
これに焦りを見せたのが楽天・三木谷会長だ。個人のXアカウントで「携帯含め、高騰していた通信費がせっかくさがったのに逆を行く最悪の愚策。国民の通信の将来を全く考えていない。こんなことがまかり通ってはいけない」と吠えたのだ。
ソフトバンク宮川社長のX上でのポスト。
撮影:小林優多郎、画像:宮川氏のXアカウントより
続いて、ソフトバンクの宮川潤一社長も個人Xアカウントで「三木谷社長だけに政府との溝を作らせるのはアンフェアなので私も久しぶりに投稿します。(中略)未来の日本にとって取るべき選択では無いと、届かないのは残念ですが声を上げます」と応戦した。
さらにKDDI・髙橋誠社長も「多くのものがNTT法の廃止に反対してるなか、強硬に押し通すことに疑問が残る」とこれまた個人アカウントで続けた。
KDDI髙橋社長のX上でのポスト。
出典:KDDI、髙橋氏のXアカウントより。
ちなみに髙橋社長は2019年8月30日に「バルス」とポストしたのが直近の最後の投稿で、実に4年以上ぶりの投稿だった。
今回、ポストした際には髙橋社長のアカウントにはフォロワー数が2000もなく、KDDI広報部の公式Xアカウントがリポストして、なんとか世間に伝わるように腐心していたのが印象的だった。
「公社継承資産」どう扱うべきか
11月14日に3社が公開した「日本電信電話株式会社が公表した『NTT法のあり方についての当社の考え 2』への見解」より
出典:KDDI、ソフトバンク、楽天グループ
NTT広報アカウントが三木谷会長に噛みついたのは「公社継承資産」についてだ。
NTTには全国にビルなどの局舎が7000も存在し、また光ファイバー網を110万kmも敷設している。
NTT法が廃止されることで、公社時代からの資産が完全民営化されたNTTに渡ることになる。それに対して三木谷会長は「NTT法を廃止して国民の血税で作った唯一無二の光ファイバー網を完全自由な民間企業に任せるなど正気の沙汰と思えない」と発言。
楽天グループ三木谷会長のX上でのポスト。
撮影:小林優多郎、画像:三木谷氏のXアカウントより
一方、NTTでは、NTT広報室のアカウントで「民営化時に公社継承資産は株主である政府に帰属。現在は株の持ち分に見合い、民間も含む各株主に帰属する」と応じた。三木谷氏に直接「勘違いだし、ナンセンス」だと指摘したのだ。
またKDDIに対してもNTT広報アカウントは「KDDが電電公社から分離した際、電電公社の資産を引き継いでいますが、KDD法を廃止して完全民営化した際も、そのまま資産を保有して事業をやっています」と言及。
さらにソフトバンクについても「ソフトバンクも元々の母体である日本テレコムが国鉄から分割された際、国鉄の通信士さんを受け継いでいますが、そのまま事業をやっています。JRは民営化後でも線路はJRの保有のままです」と、楽天以外の2社も「血税で作った資産を保有して事業をやっている」とお怒りモードでのポストを続けていた。
NTTも今さらではなく、KDDの完全民営化やソフトバンクが日本テレコムを買収したときに、いまのような指摘をして議論をキチンと整理しておけば、今回のようないざこざは起きなかったのではないか。
収集がつかない「4社の舌戦」
個人や会社などのXアカウントが入り乱れてのポスト合戦となり、もはや収集が着かなくなってきた感がある。
三木谷会長はNTT広報アカウントからのツッコミを受けた後に
「今回の騒動は防衛予算確保のためにNTT株を売却するということで始まったプロジェクトで、甘利氏を中心に情報通信に関係のない議員を中心に組成。防衛予算に充てることがなくなった今、そもそも情報通信政策の一環として、国民目線で多面的に議論するべきであり、情報通信分野に強い議員を抜きにして、どさくさにまぎれて進めようとしているのは正気の沙汰とは思えない。与党もしっかりとして頂きたい」と投稿。
論旨を見る限り、三木谷会長の主張は正論にも見える。
今回のNTT法の見直しの議論は拙速に結論を決める必要はないはずだ。X上で社長や広報アカウントが小競り合いをしている場合ではない。
国民に開かれた場所で、通信会社の社長や会長だけでなく、自民党のプロジェクトチームや情報通信に強い議員などが集まって「国民のために将来のインフラはどうあるべきか」「通信の世界で国際競争力を上げるにはどうするか」「GAFAMとは戦うのか、協調するのか」といったテーマでとことん話し合った上で、「未来の国民のためにNTT法はどうあるべきか」の結論を探していくべきではないだろうか。
三木谷会長以外もNTTの投稿に反応
(2023年11月17日 15:58追記)
ソフトバンクの宮川社長は11月17日15時50分に、NTT広報室のXアカウントの投稿について、自身のXアカウントで以下のコメントを投稿した。
(2023年11月17日 17:39追記)
KDDIの髙橋社長は11月17日16時43分に、自身のXアカウントでソフトバンク宮川社長に返信する形で以下のコメントを投稿した。