OpenAIのサム・アルトマンCEOが突如会社を追放された。
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マイクロソフト(Microsoft)の首脳陣が、その最大の投資先のひとつであるオープンAI(OpenAI)の共同創業者兼CEOのサム・アルトマン(Sam Altman)が会社から追放されるとの知らせを正式に受けたのは、11月17日(現地時間)午後の一般発表のわずか数分前のことだった。それでもマイクロソフトはまだマシなほうだった。
オープンAIの従業員は、他のテック業界の人たちと同時にそれを知った。太平洋標準時の午後12時30分過ぎ、同社は厳しい言葉でアルトマン退社に関する声明を発表し、最高技術責任者(CTO)のミラ・ムラティ(Mira Murati)が暫定CEOとなることを伝えた。
この発表に、オープンAIとマイクロソフトの社員は「茫然自失の状態」だと、両社の関係者はBusiness Insiderに語る。オープンAIのサンフランシスコ本社で開かれたブリーフィングでは公式声明が繰り返され、冷静さを保つように呼びかけられた。
オープンAIの従業員は、同社の共同創業者でチーフサイエンティスト、かつボードメンバーでもあるイリヤ・サツキバー(Ilya Sutskever)は少なくともまだ会社に残っていることに安堵している。サツキバーは長年にわたって同社で尊敬を集めてきたリーダーであり、技術的な仕事の「責任者」もしばらくの間務めていたことがある、とオープンAIの関係者は語る。
だが安堵も束の間、その約1時間後には、オープンAIの共同創業者で社長のグレッグ・ブロックマン(Greg Brockman)が、アルトマンの追放を受け「退任する」と発表した。ブロックマンはX(旧Twitter)にも掲載された電子メールで、「今日発表されたニュースに基づいて」そうしたとスタッフに語った。同社の声明によると、ブロックマンは先にオープンAIの会長を解任されていたという。
オープンAIで働いてはいないが、同社に多くの知り合いがいるAI分野のある人物は、この突然の幹部交代劇を「歴史に残る出来事」と表現した。彼はアルトマンの追放を、1985年にスティーブ・ジョブズが当時のCEOと衝突してアップルを解雇された事件になぞらえた。
オープンAIとマイクロソフトの内部関係者は一様に、今回の一件は降って湧いた出来事だと口を揃える。しかしマイクロソフトは、パートナーの新しいリーダーを支持する姿勢を見せている。同社のサティア・ナデラ(Satya Nadella)CEOは声明の中で次のように述べる。
「われわれはオープンAIと長期契約を結んでおり、われわれのイノベーション・アジェンダとエキサイティングなプロダクトロードマップを実現するために必要なすべてのものにアクセスできる。私たちはパートナーシップ、そしてミラ(・ムラティ)と彼のチームに引き続きコミットし、この技術がもたらす意義深い利益を世界に提供し続ける」
マイクロソフトはオープンAIに対し、少なくとも100億ドル(約1兆5000円、1ドル=150円換算)を出資しているとされる。だがオープンAIのビジネスに関して、万事順調とは言えない兆候があったのかもしれない、とマイクロソフトのある社員は話す。
「たしかにそのバリュエーションはものすごい額で、AI周りにはいくつか望ましい動きが出てきていると思います。ただ、経済学的な現実として、今は基盤となるインフラコストを処理するために、AI機能に30ドル(約4500円)以上を請求する必要があります。これは、いまみんなが生産効率化ツールに支払っている一般的な額の2倍以上です。
それにオープンAIは、その推論コストに加えて、モデルのトレーニングに何十億ドルも費やす必要がありますからね」
オープンAIにコメントを求めたが、すぐに回答は得られなかった。
ナデラは声明の中で、同社が引き続きAIにコミットすることを示すために、最近開催された同社のテックカンファレンスにも言及している。
「今週(編注:米国時間の11月15日)の『Microsoft Ignite)でご覧いただいたように、われわれはAzure(アジュール)のAIシステム、モデル、ツールからCopilot(コパイロット)に至るまで、技術スタック全体にわたって100以上の発表を行い、このAIの時代に向けて急速にイノベーションを続けている。最も重要なことは、将来に向けてこれらを構築しながら、すべてを顧客に提供することにコミットしているという点だ」