米金融大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)が2024年、25年の株式市場について早くも予測を提示している。
Brain light/Alamy
米連邦準備制度理事会(FRB)は11月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを決定し、今サイクル中の追加利上げはないと予想される。ここ数年上昇基調で推移してきた米国債の利回りもピークアウトした——。
上記の見解は、米金融大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)のチーフ米国株ストラテジスト、デービッド・コスティン率いるチームによる2024年予測の一部だ。
同チームが11月15日に発行した顧客向けレポートでも、景気後退入りは回避されるとの見方が示されている。
間もなく新年を迎えるに当たってポジティブな予測であり、ブルームバーグ(Bloomberg)のアナリストコンセンサス予想が2024年中の景気後退の可能性を55%としていることを考えれば、ゴールドマンのスタンスは大半の専門家以上に楽観的と言える。
だからと言って、間もなく劇的な強気相場や急速な経済成長がやって来ると期待するのは早計だ。
ゴールドマンの予測が的中した場合でも、S&P500種株価指数の上昇幅は2024年末時点で5%にとどまると同社は予測しており、大統領選挙が実施される年の平均リターンが歴史的に8%程度を記録してきたのと比べると見劣りする。
ただし、ゴールドマンは続く2025年もS&P500種が5%上昇すると予測している。
いずれにしても、相場の先行きを完全に予測することは不可能だ。そこでコスティン氏は上記のシナリオとは別に、FRBが利下げに転じて経済成長が加速する、より楽観的なシナリオも用意している。
その「超」楽観シナリオが展開された場合、S&P500種指数は2024年に11%上昇するという。
さらにその逆の悲観シナリオもある。インフレが粘着力を維持し、政策金利の誘導目標も相応に据え置かれた場合、S&P500種指数は8%、極端な場合で18%下落すると予測される。
とは言え、シナリオはあくまでシナリオだ。景気や主要株価指数の動向次第で投資家の運命が決まってしまうわけではない。
大統領選挙イヤーの過去平均を下回るというゴールドマンの基本シナリオに賭けるのであれば、同社がアウトパフォームを予測する三つの戦略を徹底することで、市場全体の平均とは異なる結果を得られる可能性はある。
ただし、この手法は気弱な投資家には向かないので要注意だ。
ゴールドマンの基本シナリオに賭けて投資先を絞り込めば、地政学的不安定性や迫り来る大統領選挙、商業用不動産(CRE)に内包されたリスクが金融機関を直撃するリスクなど、株価の上下動や不安に怯むことなくポジションを保有し続けるしかない。
そうした覚悟を前提に、ゴールドマンが推奨する三つの戦略を紹介しよう。
第一の戦略は、クオリティ株の保有だ。
ゴールドマンは景気後退入りを想定していないが、投資家の悲観的なセンチメントは、強固なバランスシートと売上高・利益の堅調な成長を維持できる収益性の高い企業が競合をアウトパフォームする状況を示す。
ゴールドマンの高クオリティ株バスケットに名を連ねるのは、メタ・プラットフォームズ(META、以下カッコ内はティッカー)、オライリー・オートモーティブ(ORLY)、チャーチ・アンド・ドワイト(CHD)、マラソン・ペトロリアム(MPC)、インターコンチネンタル取引所(ICE)、トゥルイスト・ファイナンシャル(TFC)、エレバンス・ヘルス(ELV)、ロリンズ・インク(ROL)、モノリシック・パワー・システムズ(MPWR)、シャーウィン・ウィリアムズ(SHW)、アメリカン・タワー(AMT)、アメリカン・ウォーター・ワークス(AWK)など。
第二の戦略は、グロース(高成長)株の厳選保有だ。
金利が安定し、着実な成長基調の経済環境では、資本利益率(ROC)の高い企業が競合をアウトパフォームする傾向がある。
S&P500種構成銘柄のうち、2025年の予想売上高成長率が上位3分の1以上で、なおかつ投下資本利益率(ROIC)、総資産利益率(ROA)、自己資本利益率(ROE)が上位4分の1以上の銘柄としては、エンフェーズ・エナジー(ENPH)、サービスナウ(NOW)、イーライリリー(LLY)、エヌビディア(NVDA)、アルベマール(ALB)、EQT(EQT)などが挙げられる。
第三の戦略は、人気が落ちた「低迷」シクリカル(景気敏感)銘柄の押し目買いだ。否定的な評価にひるまないことと言い換えてもいい。
悲観的な経済見通しがコンセンサスとなっている状況では、すでに一部の銘柄がアンダーパフォームで推移しているものだが、ゴールドマンの予測に賭けるのであれば、それは買い時だと考えねばならない。
以下に挙げるのは、米国株の時価総額上位3000銘柄から成るラッセル3000種指数の構成銘柄で、時価総額は20億ドル超、業績も好調だが、予想売上高成長率は2023年の数字を下回る。
トロカンパニー(TTC)、ジョン・ビーン・テクノロジーズ(JBT)、デルタ航空(DAL)、クロックス(CROX)、アラスカ・エア・グループ(ALK)の5銘柄がそれだ。