米金融大手モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)は、コンシューマー(一般消費者)向け人工知能(AI)から、エンタープライズ(法人)向けAIへの関心のシフトが始まると予測する。
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2022年11月に公開された対話型人工知能(AI)「ChatGPT」は、それまで専門家の占有物だったAI技術を誰でも使えるようにしたことで、AI分野への集中投資を呼び込んだ。
しかし、米金融大手モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)のマイケル・ウィルソン最高投資責任者(CIO)は、本当のビジネスチャンスは個人向けのAIではなく、法人向けのAIにこそあると指摘する。
ウィルソン氏は最近の顧客向けレポートで次のように書いている。
「2022年秋に『ChatGPT』がローンチを果たして以来、ジェネレーティブ(生成)AIに関する初期的な議論の多くはコンシューマー向けの活用法がテーマとされてきましたが、当社はエンタープライズ(法人向け)AIソフトウェアによる業務やプロセスの自動化にこそ、よりベーシックなチャンスがあると考えています」
2024年、AI投資でリターンを得るには
間もなく新たな年を迎えるに当たり、ウィルソン氏は投資家に対し、対照的な資産を組み合わせる「バーベル戦略」の重要性を強調し、伝統的なディフェンシブ銘柄、ビジネスサイクル後期のシクリカル(景気敏感)銘柄、さらには徹底的に絞り込んだグロース銘柄に分散投資してバランスを取るべきと助言する。
「過去のデータが示す通りの展開で、2022年に始まった現在のサイクル後期のレジームでは、上記のコホート(群)の組み合わせが市場平均をアウトパフォームしています」
「徹底的に絞り込んだ」「グロース銘柄」は、より具体的には「ボラティリティ(価格変動)の小さいグロース株、特に長期テーマに連動し、シクリカル(循環的な景気変動)リスクを上回る銘柄」(ウィルソン氏)を指す。
そうした長期テーマの一つがAIの急速な台頭であり、市場にどんな逆風が吹いたとしても、引き続き力強くアウトパフォームを維持するというのがウィルソン氏の見方だ。
「マクロ経済指標の変化率が平凡な水準に収束していくサイクル後期の環境では、このように長期でリターンを生むテーマに対して、投資家がプレミアム(上乗せ幅)を払い続けるケースが多々あるのです」
ChatGPTの登場以降続くAIブームの中で交わされてきた議論のほとんどは、AIが人々の日常生活にどのように組み込まれていくのかに関するものだった。
しかし、今後についてウィルソン氏は異なった見方を持っており、AIが真価を発揮するのは、従来的な企業経営やビジネスのあり方を破壊していく局面だと指摘する。
「米労働省労働統計局が職業総合データベース『O*NET(オーネット)』を通じて提供する労働市場関連の豊富なデータセットと、当社独自の調査結果を組み合わせて分析したところ、現在利用可能なジェネレーティブ(生成)AIの影響を受けるのは全米の労働力の25%。それが3年後には44%まで上昇すると予測されます。
加えて、当社の分析によれば、生成AI技術は現時点で上記の(労働力が担う)仕事に伴う人件費2.1兆ドルに影響を及ぼし(つまり削減効果をもたらし)、3年後にはさらに4.1兆ドルへと影響範囲が拡大する可能性があります」
進化の急激なテクノロジーの世界において、とりわけここ数カ月でAIが急速に台頭し、投資家の心を鷲掴みにして大規模な資金投下が行われた現実を踏まえると、3年後に影響範囲が倍になると言われたところで、相当先の話に感じられるかもしれない。
しかし、ゆっくり着実に投資が行われることで、法人向けAIはより長期持続的に定着することになる。
ウィルソン氏によれば、企業がこの新たなテクノロジーにコミットして多くの予算を投じるほど、サンクコスト(撤退時に回収できなくなる投下費用)が嵩むため、リテンションレートが上昇し、ターンオーバーが低下する。
したがって、現時点で最高の法人向けAI銘柄を見出して投資すれば、長期的には配当を得られることになる。企業は足元でコミットした技術を手放さないので、投資家たちは向こう数年、堅実なリターンを手にすることができるというわけだ。
以下に列記する16銘柄は、モルガン・スタンレーが厳選した法人向けAI銘柄トップリストだ。各銘柄のアナリスト評価、業界グループも付す。
アマゾン(Amazon)
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[投資判断]オーバーウェイト
[業界グループ]一般消費財流通・小売り
アルファベット(Alphabet)
Markets Insider
[投資判断]オーバーウェイト
[業界グループ]メディア・エンターテインメント
メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)
Markets Insider
[投資判断]オーバーウェイト
[業界グループ]メディア・エンターテインメント
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)
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[投資判断]オーバーウェイト
[業界グループ]半導体・半導体装置
インテル(Intel)
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[投資判断]イコールウェイト
[業界グループ]半導体・半導体装置
エヌビディア(Nvidia)
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[投資判断]オーバーウェイト
[業界グループ]半導体・半導体装置
アクセンチュア(Accenture)
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[投資判断]オーバーウェイト
[業界グループ]ソフトウェア・サービス
アドビ(Adobe)
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[投資判断]オーバーウェイト
[業界グループ]ソフトウェア・サービス
クラウドストライク(CrowdStrike)
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[投資判断]イコールウェイト
[業界グループ]ソフトウェア・サービス
データドッグ(Datadog)
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[投資判断]オーバーウェイト
[業界グループ]ソフトウェア・サービス
ドセボ(Docebo)
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[投資判断]オーバーウェイト
[業界グループ]ソフトウェア・サービス
ファイブナイン(Five9)
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[投資判断]イコールウェイト
[業界グループ]ソフトウェア・サービス
マイクロソフト(Microsoft)
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[投資判断]オーバーウェイト
[業界グループ]ソフトウェア・サービス
モンゴDB(MongoDB)
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[投資判断]オーバーウェイト
[業界グループ]ソフトウェア・サービス
NICE
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[投資判断]オーバーウェイト
[業界グループ]ソフトウェア・サービス
パロアルトネットワークス(Palo Alto Networks)
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[投資判断]オーバーウェイト
[業界グループ]ソフトウェア・サービス