モトローラは「motorola razr 40/40s」を発売する。写真は左からサマーライラック(40s限定色)、バニラクリーム、セージグリーン。
撮影:小林優多郎
レノボ傘下のスマホメーカー・モトローラが11月20日、新型折りたたみスマートフォン「motorola razr 40s」および「motorola razr 40」の日本発売を発表した。
razr 40sもrazr 40もハードウェア的な違いはないが、razr 40sがソフトバンク専売モデルで12月8日発売予定。razr 40が公開市場向けモデルで11月22日発売予定となっている。
モトローラは7月にも同種の折りたたみスマホ「razr 40 ultra」を発表していたが、razr 40s/40は基本性能的には「ultraに比べて下位モデル」となる。だが、単なる下位モデルとは言えないインパクトがrazr 40s/40にはある。その詳細を解説する。
10万円以下でも買える「縦折りスマホ」
折ることで自立できるのも折りたたみスマートフォンならではの使い方。
撮影:小林優多郎
本機種最大のポイントは「価格」だ。
日本で現在展開されている折りたたみスマホは、サムスンの「Galaxy Z Fold/Z Flip」シリーズ、グーグルの「Pixel Fold」、そしてこのモトローラのrazrがある。
各社それぞれの特色があるが、共通して言えることは「プレミアム路線のスマホ」だという点だ。モトローラのultraを含めた現在の最新機種の一括購入価格を並べると以下の通りだ。
- Galaxy Z Fold5(横折り)……25万7400円〜(NTTドコモ版)、24万2660円〜(KDDI版)
- Galaxy Z Flip5(縦折り)……16万820円(NTTドコモ版)、15万4300 円〜(KDDI版)
- Pixel Fold(横折り)……25万3000円(直販モデル)
- razr 40 ultra(縦折り)……15万5800円(直販モデル)
ソフトバンクは「ペイトク」加入やMNP転入などで10万円以下まで値引きを実施する。
撮影:小林優多郎
ざっくり言えば「普段は小さく開くと大画面で使える」横折り端末が25万円前後、「普段は畳んでコンパクトに持ち運んで、通常利用時は開く」縦折り端末が15万円前後といった具合だ。
そこに対して今回のrazr 40s/40の価格は以下の通りになる。
- razr 40s(縦折り)……12万1680円(※ソフトバンクの指定のプラン等加入の条件で最低9万9680円)
- razr 40(縦折り)……12万5800円(直販価格)、9万5800円(※IIJで2024年1月31日までのキャンペーン価格)
いずれも通信事業者の販路には限定されるが、10万円を切る形になっているのは、同種の機構としてはインパクトが大きい。特にIIJでは、期間限定となるが、同社の格安SIMサービス「IIJmio」の契約が必須条件となってはいない点も大きい。
ソフトバンクでモバイル事業推進本部 本部長の郷司雅通氏。
撮影:小林優多郎
20日にモトローラが開催した製品発表会には、ソフトバンクのモバイル事業推進本部 本部長の郷司雅通氏が登壇し、上記のような競争力のある価格で「フォルダブルスマホを一気に市場で展開していきたい」と意欲を語った。
郷司氏は、グローバル全体で折りたたみスマホ市場の伸びについて触れ、ユーザーからのニーズは今後も強くなると予想している。
ただソフトバンクでは、コンシューマー向けのサムスン製スマホは2015年5月発売の「Galaxy S6 edge 404SC」以来、採用例がない。
また、モトローラとソフトバンクは昨今、2万円台で購入できるスマホ「moto g53y 5G」が「ワイモバイルでは好評」(郷司氏)ということもあり、他の通信事業者との差別化を図る上で、サムスンではなくモトローラと協力関係を強め、専売モデルまで用意したと言える。
上位機では非対応だった、おサイフケータイに対応
背面のモトローラロゴ付近にあるおサイフケータイマーク。
撮影:小林優多郎
次に気になるのは、安くても普通に使えるのか、というところだ。この点については、「むしろ日常の使い勝手は、上位モデルの40 ultraよりある」というのが筆者の意見だ。
その最大の根拠は「おサイフケータイ」対応にある。40 ultraでは非対応だったが、モバイルSuica/PASMO、楽天Edy、nanaco、WAON、iD、QUICPayといった電子マネーサービスが40s/40では使える。
またAndroidスマートフォンの一部ではマイナンバーカードの電子証明書機能をスマホに搭載する「スマホ用電子証明書搭載サービス」が利用できる。razr 40s/40についてモトローラは20日の発表会時点では「鋭意対応の準備を進めている」としていたが、マイナポータル上では11月20日時点の更新で両機種が対応機種としてリストにあがっている。
おサイフケータイの対応サービス一覧。
撮影:小林優多郎
スマホ用電子証明書搭載サービス対応は現時点では「日常生活で必須」と言えるほどの機能ではないが、今後活用の幅が広がることも予想され、3年、4年と長くスマホを使うのであれば押さえておきたい機能ではある。
その他、ソフトバンクとしては日本で折りたたみスマートフォンが広まっていない理由について価格以外には「折りたたみ部などが壊れるのではないか」という安全性の懸念を指摘している。
修理は「iCracked」の拠点が利用できる。
撮影:小林優多郎
そのため、モトローラはスマートフォンなどの修理業者である「iCracked」と連携し、全国92店舗でのrazr 40s/40の修理が可能にしている。
iCrackedでの修理料金もモトローラの「moto care」(月額748円・税込)や、ソフトバンクの「あんしん保証バックネクスト」(月額990円・税込)に加入していれば、moto careでは自己負担金のみ(年1回まで)、ソフトバンクの保証では負担金0円(年2回まで)で済む点も大きい、
サブディスプレイの使い勝手は
サブディスプレイの使用用途はやや限定されている。
撮影:小林優多郎
とはいえ、上位モデルのrazr 40 ultraや、サムスンのGalaxy Z Flip5と比べて見劣りする部分があるのも事実だ。
最も大きいのは閉じた時に使うサブディスプレイの機能性だ。
モトローラはrazrシリーズのサブディスプレイを「アウトディスプレイ」と呼んでおり、40 ultraや2021年発売の「razr 5G」では、他社より比較的大きな画面で、特に自社では制限することなく、さまざまなAndroidアプリが起動できる点を特徴としていた。
一方、razr 40s/40のアウトディスプレイはわずか約1.5型のスリットのようなディスプレイで、基本的にはモトローラの用意した時計や天気、音楽プレイヤーなどの単機能を持つ「パネル」を切り替えて利用し、着信やメールの通知を確認する用途に特化している。
アウトディスプレイは表示領域は狭いがセルフィーにも使える。
撮影:小林優多郎
例えば、こういったサブディスプレイ付きの機種では、インカメラに比べて高画質なアウトカメラを使って、サブディスプレイでプレビューを見ながらセルフィーができる点が比較的便利な使い方なのだが、1.5型のディスプレイではかなり狭い領域に表示されるため、あまり使いやすいとは言えない。
もちろん時間や天気、通知を確認したり、音楽をコントロールする分には十分ではある。この辺りは、ユーザーがどの程度サブディスプレイで操作や表示をしたいかで評価は分かれるだろう。
手に入れやすい折りたたみスマホ、で認知度アップを狙うモトローラ
モトローラ・モビリティ・ジャパンの松原丈太社長。
撮影:小林優多郎
アウトディスプレイの小ささや基本性能の違いはあれど、金額やおサイフケータイ対応の面で、razr 40s/40が「折りたたみスマホの入門機」としては非常に特異な位置にあるのは確かだ。
モトローラ・モビリティ・ジャパンの松原丈太社長は20日の発表会に登壇し、2023年の同社の出荷台数が2022年に比べて倍近く伸びていることを報告。
ただ、その多くが中〜低価格スマホの販路拡大や、前述のワイモバイルとの販売施策によるもので、松原氏も「razrはプレミアム価格帯だったため、全体のパイから見ると小さなシェア」と認めている。
razr(当時はRAZR)は、日本でも展開されていた人気のフィーチャーフォンのブランドだった(写真はNTTドコモが2006年12月に発売した「M702iS」)。
撮影:小林優多郎
ただ、razrはモトローラとしてもフィーチャーフォン時代から人気のあるブランドであり、同社としても「イノベーションの象徴」(松原氏)として位置付けられている。
折りたたみスマホのような競合がまだ少ない形状や特徴を持つス製品でかつ、手の届きやすい価格帯で販売することで、モトローラ自身の存在感を示す狙いがある。