孫正義氏とトランプ次期大統領。トランプ・タワーにて。
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「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(1000億ドル/約11兆5000億円)がいよいよ仕上げの段階にきている。同ファンドは世界最大のテクノロジー投資ファンドになるとみられ、Apple、フォックスコン、オラクルの共同創設者 ラリー・エリソン氏、クアルコムとサウジアラビアの政府系ファンドのような出資者に資金を募っている。ファンドが公表された時点では、スタートアップ企業や先端技術に投資するように見受けられた。
昨年12月、孫氏はトランプ次期大統領にファンドの500億ドル(約5.5兆円)をアメリカのスタートアップ企業に投資すると話したとBloombergは伝えた。しかし、1月12日木曜日のニューヨーク・タイムズの報道によると、ファンドの資金の大部分が「より大規模な投資」としてM&A市場と株式市場へ行くことが分かった。報道によると、1000億ドルの4分の3は「株式市場で過小評価されたテクノロジー企業の株式取得」や「M&A」に充てられるという。つまり、残された4分の1の資金だけがスタートアップ企業へのベンチャー投資になるということだ。
ファンドに関与している銀行家はニューヨーク・タイムズに「成長」を強調。たとえ、ファンドが新たな成長企業を獲得するためのものだったとしても、仕事を大幅に削減するといった類いのM&Aで起こるようなものではないはずだ。肝心なのは雇用が増えることだ。
トランプ・タワーでトランプ次期大統領と面会した孫氏は、このファンドでアメリカに5万人の雇用をもたらすと話した。トランプ次期大統領はファンドによって創出される雇用は自分の手柄だと考えている。
マサ(孫氏)は、わたしが選挙に勝たなければこの件はなかったと言った!
しかしながら、Appleのソフトバンク・ビジョン・ファンドへの投資10億ドル(約1000億円)はより「小さい方の投資」へ充てられる。Appleは、投資した理由を「新しいテクノロジー開発の可能性」に賭けるためだと語る。これは一般的にスタートアップ企業から生まれるもので、M&Aによってではない。
「我々は長年ソフトバンクと親密な関係を築いてきました。彼らの新しいファンドがAppleにとって、戦略的に重要な技術開発を促進すると信じています」とAppleのスポークスマンはBusiness Insiderに語った。
また、Appleがその投資から高い投資収益を求めていることもあり得るだろう。投資した資金が投資家に戻る時、たとえファンドが何を創り出すことになっても、iPhoneとその他のApple製品による収益と比較すればたぶん見劣りするだろう。ソフトバンク・ビジョン・ファンドがその1000億ドルを投資する期間は5年。ロンドンの投資家Rajeev Misra氏が主導する。ニューヨーク・タイムズによれば、すでに“スタートアップな気配”があるそうだ。
[原文:The world's largest tech investment fund is almost ready for business, but it sounds different from what Trump was told (AAPL, QCOM)]
(翻訳:須藤和俊)