オバマケアを廃止するための10段階のステップ

（編集部注：この記事の内容は執筆時点のものです）

1月12日木曜日（現地時間）の朝、オバマケアの名で知られるAffordable Care Act（ACA：医療費負担適正化法）を廃止するため、共和党上院議員らが長く煩雑そうなプロセスを開始した。

東海岸時間の午前1時すぎ、上院議会はオバマケアを廃止する法案のための予算決議案を51対48で可決した。

エリザベス・ウォーレン（Elizabeth Warren）上院議員やバーニー・サンダース氏（Bernie Sanders）は投票期間中、廃止法案に対して声を大にして反対した1人だ。代替案抜きの廃止は国家予算の赤字に通じかねないとぼやいていたランド・ポール（Rand Paul）上院議員は、共和党の中で唯一党派の垣根を超えた人物だった。

｢#RepealObamacare（#オバマケア廃止）への第一歩を踏み出した上院議会、おめでとう。次は下院議会だ！｣とドナルド・トランプ次期大統領（当時）は木曜日にツイートした。

民主党は100以上の修正案を加え、被保険者の持病の有無を問わないことや26歳以下の子供が保護者の保険プランに加入できるなどの条件を守ろうと試みたが、そのほとんどは議会の支配権がないゆえに単なる象徴にすぎなかった。すべての修正案は否決された。

投票結果から、共和党と民主党がオバマケアとその廃止をそれぞれ政策の中核としてきたことがわかった。

1週間あまりでトランプ氏が大統領執務室を引き継ぐことを受け、共和党立法者のあいだで代替案を出すタイミングについて議論が行われる中、共和党は念願の廃止を推し進めてきた。

民主党はオバマケア廃止を阻止するために最善を尽くすと誓っており、代替案にも非協力を貫く姿勢だ。

決議は下院議会へと持ち込まれ、早ければ金曜日にも同じように投票にかけられる。

やや難解なプロセスなので、噛み砕いて説明しよう。

1. 廃止法案起草のための予算法案が上院通過
2. 廃止法案起草のための予算法案が下院通過
3. 下院が廃止法案を起草
4. 廃止法案が下院で決議にかけられ、上院へと進む
5. 下院の廃止法案が上院にて討議にかけられ、修正が加えられる場合も
6. 上院が廃止法案と修正事項を決議にかける
7. 上院と下院の廃止法案が一致しない場合、両院協議会が内容の相違をなくす
8. 両院協議会が廃止法案を元に妥協法案を作成
9. 両院協議会による妥協法案が両院で決議にかけられる
10. 両院を通過した場合、トランプ大統領により承認または否認

共和党はオバマケアの大部分を廃止するために予算調整という手を使っている。

予算調整をすると、国家予算に関わる法案を可決することが立法者の単純過半数票だけで可能になる。この場合、メディケイド（低所得者・身体障害者向け公的医療保険）の拡大や保険加入時の補助金など、オバマケアに関わる支出が当てはまる。

予算調整以外の方法を取ると、民主党による法案通過妨害が可能になってしまう。これを無効化するには、討論終結動議にて上院議員60名の支持を得ないといけない（上院議会所属の共和党員数は52名のみ）。

では、木曜朝に上院を通過した法案は、次はどこへ向かうのだろうか？

下院議会所属の共和党員らは寄り集まって数日間上院の予算法案に取り組む見込みだ。可能性としては高いが、この法案が共和党支配の下院を通過した場合、下院の各委員会による廃止法案の起草が始まる。

そこからは、他の法案とほとんど同じだ。単純多数によって下院で決議にかけられ、のちに法案の修正が可能な上院に進む。修正が加えられた場合、両院協議会に持ち込まれる。

もし、上院が修正を加えた場合、草案に関わる両院協議会員が招集され、妥協法案を作成する。その妥協法案は両院で決議にかけられ、通過した場合、トランプ次期大統領の元へ届き承認または拒否権の行使により否認される。

オバマケアの廃止が立法議案の中でも優先順位が高いとされる中、トランプ氏が近いうちに行動を起こす見込みは薄いようだ。

共和党リーダーらは、オバマケアを廃止すると同時に代替法案を採用したいが、スムーズな移行には時間がかかるだろうと発言している。下院議長のポール・ライアン（Paul Ryan）氏は法案の交換と廃止は｢一斉に行われる｣と述べ、トランプ氏は｢同時進行でやっていく｣と誓った。

［原文：Here's the 10-step process that the Republicans will use to repeal Obamacare］

（翻訳：近松）