食に関心のないミレニアルが「完全食」で半年生活してみた

ソイレントのボトルが敷き詰められている写真

ソイレントはレシピをウェブ上で公開している。世界各国でオリジナルの完全食を作る動きも

Rick Kern/Getty

僕は27歳独身男。都内で一人暮らしをしている。ランチに何を食べようかと考えることもなく、飲み会の幹事の時以外「食べログ」を見ることもない。時代に逆行するようだが、家の台所に調理器具は一切なく、ゆで卵も作れない。毎日の食事はだいたい外食かコンビニ弁当だ。脂っこいものや味が濃いものを食べることが多く、さすがに食に関心のない僕でも「これでは栄養が偏るのでは?」と、一生懸命サプリや野菜ジュースを取るようにしていた。

そんな僕の目に留まったのが、「ソイレント」という「完全食」のニュースだった。

完全食とは1食に必要な栄養素をすべて含むと言われる食品のこと。アメリカでは2013年にソイレントが発売されて以降、完全食市場ができつつあり、毎日の食事をほとんど完全食で済ませる人もいるという。ソイレントは、食事の時間がもったいないと考えるビジネスパーソンが最低限の労力で完全な栄養を摂取するという目的で開発され、現在はジュース、バー、パウダーの3種類を公式サイトで販売している。

何も考えず寿命もまっとうできたら

当時(16年夏)の僕にとって、ソイレントは「もってこい」の商品だった。そんなに簡単に食事を済ませることができ、しかも必要な栄養がすべて入ってるなんて! 早速購入しようとしたが、日本から個人で購入するのはかなりコストがかかった。食にそこまでお金をかけたくもない。もっと安く、簡単に手に入る完全食はないものか。

COMPのCEO・鈴木優太氏が製品を手に持ち立っている。

COMPの鈴木優太CEO。起業は2015年で、現在社員は4人だ

中西亮介

調べ続けていると、日本独自の完全食があるらしいと知った。それが「COMP」だった。COMPの開発者は東京大学大学院博士課程で薬学を専攻した鈴木優太氏(32)。「プログラミングが趣味で、食事の時間が惜しかった。かといって食事をおろそかにしては健康の保持が困難」と考え、手軽さと栄養面を同時に満足させることを追求した。

アメリカのソイレントはレシピが公開されており、世界各国で独自の完全食が作られているが、鈴木氏によると、外国人と日本人では必要な栄養配分が違い、そもそもレシピにある材料が日本では手に入らないので、「日本のアマゾンで手に入る材料」で作ることを目指した。

「『誰もが自然に健康に』が我々のビジョン。面倒なことを何も考えなくても寿命をまっとうできる社会を作っていけたらと考えたのです」(鈴木氏)

数日後、自宅に届いたダンボールにはパッケージに入ったCOMPとともに、パウダーをすくうスプーンやシェイカーが同梱されていた。水で溶いて初めて飲んだ感想は「まずくない」。後に他のドリンクで割るとおいしいと聞き、りんごジュースやオレンジジュース、牛乳や野菜ジュースで割ってみたが、どれもおいしい。水で溶いただけだと味の薄い豆乳のような感じだが、ジュースなどで割ると味にまろやかさが加わり、「全然アリ」だった。青汁などよりよっぽど飲みやすい。1食あたりのコストも500〜600円と手頃だったので(編集部内からは「全然、手頃じゃない」「高い」と突っ込まれたが)、すごく気に入った。

ベースパスタとコンプのパッケージが並んでいる

ベースパスタ(左)とCOMP(右)

読者提供

朝は自宅で飲み、昼は会社で飲み、夜はまた自宅で飲んだ。正直言うと、3食全てをCOMPにしたわけではない。栄養がすべて摂取でき、ある程度空腹感が紛れるとはいえ、噛まないので、何か物足りない感じがしたからだ。なので、夜は米やパスタなどの炭水化物と合わせて飲んでいた。こういう生活は半年ほど続いた。食事が圧倒的に楽になり、自由な時間が増えた。きちんとした栄養を取っているという安心感もあった。

しかし、6カ月ほど試して、私はCOMPの飲用をやめた。本当に健康を維持できているのかわからなかったからだ。完全食の効果を測るには、飲み始める前とその数カ月後に健康診断をし、その結果を比較する必要があるが、私はそこまでちゃんとやっていなかった。

日本でも完全食は少しずつ認知され始めている。ライフハッカー[日本版]は2月、「完全栄養食パスタ「BASE PASTA」は世界を変えるかもしれない」と題した記事を掲載。栄養を完璧に摂取できるパスタが取り上げられていた。「これは!」と思い、購入しようとしたが、売り切れていた。それほど人気だったらしい。

ベースパスタを発売したベースフードは、東京大学教養学部出身で、DeNAで新規事業の立ち上げを担当していた橋本舜氏(28)が2016年に立ち上げたスタートアップだ。主食を完全栄養化することで咀嚼という行為も発生し、通常の噛む食事をしている人も違和感なくベースパスタに移行できるというわけだ。かけるソースを変えることで、様々な味の完全栄養食を楽しめる。橋本氏は「主食にフォーカスし、現代人にあった形で完全栄養食を提供したかった。『健康を当たり前に』というビジョンのもと、日本だけでなく海外展開も視野に入れている」と話す。

BasePastaの橋本舜CEOが椅子に座って笑顔でこちらを向いている。

ベースフードの橋本舜CEO。DeNA時代にロボットタクシー事業の新規立ち上げに携わった。ベースフードは2020年までに新規株式公開(IPO)することを目指している。

中西亮介

数日後、橋本氏にメールで補足取材をしていたところ、ベースパスタが販売を再開したと教えてもらった。「待ってました」とポチったが、よくよく考えてみると、私の狭い家のキッチンには調理器具がなく、そもそもパスタが茹でられない。完全栄養食の前に、まず鍋だ。

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