EVERYWHERE SPORTS

Sponsored byスポナビライブ Sports navi LIVE

なぜ僕は日本代表になれたのか —— アルバルク東京・田中大貴選手に聞く、成長を加速させた3つの転機

Sponsored

昨年9月22日に華々しく幕をあけた、プロバスケットボールリーグのBリーグ。開幕戦の2チームに選ばれたのはアルバルク東京と琉球ゴールデンキングス。アルバルク東京のエースが田中大貴だ。日本代表としても2017年2月の対イラン戦で素晴らしいプレーを見せるなど、日本バスケットボール界を代表する選手として活躍を続けている。

働いていれば誰しも、自分の能力や決断に自信が持てなくなることもあるだろう。迷いを払拭し一段高いレベルに上がれるかどうかは、目の前にある〝機会〟を自分のものにできるかどうかにかかっている。 田中選手はなぜ日本を代表する選手にまで登りつめられたのか。そこには彼の成長を促した3つの転機と出会いがあった。

大半を費やした高校時代の守備練習

プロバスケットボール選手の写真

「中学のときから全国大会に出て活躍している選手のほうがよっぽどエリートなんじゃないかな、と思っていました」

最初の大きな転機は高校への進学だった。 長崎県出身の田中が選んだのは、全国大会にも出場していた長崎西高校だった。田中が東海大学在学中から現在まで背負っている「24番」は、長崎西高校の「西」(24)に由来する。田中は当時をこう振り返る。

「長崎西高校に進むことはできましたけど、自分はそれまで全国大会にも出ていなかった。中学のときから全国大会に出て活躍している選手のほうがよっぽどエリートなんじゃないかな、と思っていました」

いまでこそ身長192cmで、ダンクシュートも決める田中だが、高校入学当時は180cmにも満たなかった。バスケットボール選手としては決して大きい方ではなかった。

だが、そうした要素はコンプレックスではなく、田中を突き動かすモチベーションとなった。真摯にバスケットに向き合う。その姿勢は、田中がいまも誇りにしているものである。

長崎西高校に田中を誘ったのが、当時監督を務めていた後藤慶太である。彼の言葉が田中に明確な指針を示してくれた。

「将来、日本代表になるだけの力がおまえにはあるぞ。だからこそ、必死で頑張れ!」

ことあるごとに、後藤から声をかけられた。

田中は入学と同時に長崎西高校の寮へ入ったのだが、その寮の管理人が後藤であり、寮の食事を作ってくれていたのは後藤の妻だった。後藤はいわば、第二の父のような存在だった。

「もちろん、あの言葉をいただけたのはすごく嬉しかったです。ただ、大きかったのは、自分にも代表選手になるチャンスがあるかもしれない、と初めて思えたことです」

当時のチームの練習の大半は、ワクワクするような攻撃ではなく、地道な守備に費やされた。攻撃が2割、守備が8割といったところか。いまでも親交のある当時のチームメイトたちと「守備の練習、多いよな……」と嘆きつつも、励まし合い、汗を流した。その時に培ったディフェンスの能力は、プロになった今でも田中の礎となっている。

今シーズンのリーグ戦55試合を終えた時点で、田中の1試合あたりの平均得点数は13.6点。日本人のなかでは2番目だ。キレイな放物線を描く3Pシュートや華麗なダンクシュートなどが注目されがちだだが、バスケットボールの基本は守備だ。その守備でチームに貢献できるからこそ、華やかなプレーを見せるチャンスも手にできる。プロバスケットボール選手になるための一生モノの財産を手に入れた。

代表試合で体感した海外勢の迫力

2つ目の転機は、東海大学3年生のときに訪れた。 初めて日本代表に選ばれたのだ。代表入りが決まると後藤からはすぐに電話があった。だが、恩師は祝福するだけではなかった。

「おめでとう。でも、ここからが本当のスタートだぞ。おまえには活躍して欲しいと思っている。だから、頑張れ!」

日本代表の一員に選ばれた瞬間から、どうすれば活躍できるか考えていた田中だが、他の国の代表チームと実際に試合をしたときに、それまでの自分の考えの甘さを思い知った。

ドリブルをするプロバスケットボール選手

「何より大きかったのは、メンタルです。海外の選手は『襲いかかってくるのではないか』というくらいの迫力と気持ちをもって戦っていたんです」

「それまでは海外の選手に対して『身体が大きい』というようなぼんやりとした情報があるくらいでした。でも、実際に対戦してみて、その違いを肌で感じましたね。プレーの力強さやプレースタイル自体もそれまでに経験したものとは全く違うものでした。何より大きかったのは、メンタルです。海外の選手は『襲いかかってくるのではないか』というくらいの迫力と気持ちをもって戦っていたんです」

このままではいけない。これまで取り組んできたバスケットボールは、日本という国の中だけのものだったんだ。世界の広さを感じた気がした。

「あの経験は大きかったですね」と振り返る。 田中は決して雄弁なタイプではない。コート上での1つひとつのプレーで、海外の選手と戦っても負けないような厳しさを体現しようと考えるようになった。

「代表で得た経験を、大学に戻ってチームメイトにも共有しようと心がけました。周りの選手たちも、代表での試合や練習ではどんなことを感じたのかを聞いてくれて、お互いに高め合おうというムードがすごく強くなったんです」

言葉ではなく、態度で見せて、高みを目指す。 結果、大学3年生と4年生のとき、2年連続で、大学の日本一を決めるインカレで優勝できた。自分のレベルアップだけではなく、仲間と一緒に高め合いたいと考える。それはチームワークが求められるバスケットボール選手として大切な資質である。

選手は見られて強くなる

プロバスケットボール選手の顔写真

「たくさんの方が見てくれるからこそ、良いパフォーマンスを見せたいという思いが強くなりました」

そして、3つ目の転機となるのが、Bリーグの開幕だ。 2016年、それまで2つあったリーグを統合した男子のプロバスケットリーグとして設立されたBリーグ。それ以前から、日本を代表する強豪の一員として注目されてきた田中だが、プロリーグ発足による変化をもっとも実感するのは、ファンの存在に触れるときである。明らかに観戦に訪れるファンの数が増えた。

「たくさんの方が見てくれるからこそ、良いパフォーマンスを見せたいという思いが強くなりました。初めて会場に見に来てくれた人が、『面白いな』と感じてくれたら、『また見に来たいな』と思ってくれるかもしれないですから」

ファンの目はBリーグの選手たちの成長を促す。アスリートは見られて強くなる。

いま、すべての試合がスポナビライブで放送されることもあり、いつでも試合を見られる環境が生まれた。Bリーグのファンの大半が10〜20代。スマホで見られる環境は、よりBリーグを身近に感じることができる。

冷静なプレーを持ち味とする田中が、力を込める。

「いままでだったら、会場に来た人にしか見てもらえないことがほとんどでした。高校時代のチームメイトなども、自分のホームゲームのときに会場に応援に来てくれることも多いのですが、アウェーゲームもスポナビライブでチェックしてくれたりするみたいで。僕のシュートの成功率など、細かい数字などもチェックして、すごく厳しいことを言ってきたりもしますから(笑)」

笑顔を見せてから、こう続けた。

「でも、嬉しいことですよね。そうやって応援してくれるわけですし、それができるような環境が整ったんですから」

今シーズンからはBリーグのシーズン中にも日本代表の合宿が組まれるようになり、以前よりも多忙な日々を送っている。

「そのなかで自然と、コンディションに気を使うようになっています。何よりも優先するのはバスケットのこと。厳しいスケジュールのなかで、プロとして良いパフォーマンスを出すためにどうしたらいいのかを考えて生活していますし、それによって普段の生活も変わってきているなと思っています」

そう話す表情は、凛としたものだった。 バスケットボールを観るファンにも、プレーする選手にも幸せな日常がある。それこそが、スポナビライブの全面的なバックアップのなかで一歩ずつ、確実に日本のバスケットボールがステップアップをしている何よりの証拠なのである。


田中選手が出場するアルバルク東京の試合を含め、以下試合を無料ライブ配信! スポナビライブ 初回最大1カ月無料!

4/29(土):

4/30(日):


Text by ミムラ ユウスケ:フリーライター。2006年7月に活動をはじめ、2009年1月にドイツへ。ドイツを中心にヨーロッパでスポーツの取材をする。16年9月22日、Bリーグ開幕日から拠点を日本に。内田篤人との共著『淡々黙々。』や、岡崎慎司の著書『鈍足バンザイ!』の構成も手がけた。

Photo by 今村拓馬



関連記事

サッシャさん

未知の競技と出会うのも、深掘りするのも自由。「スポナビライブ」の魅力を、スポーツ観戦のエキスパート・サッシャさんに聞いた

ギズモード・ジャパンより転載(2017年3月30日公開の記事) まだ見ぬ興奮との出会いが加速します。 見放題、聞き放題、使い放題。月額制のサブスクリプションサービスが充実してきましたね。特にコンテンツ系はどこも魅力たっぷり。 この「月々○○円で○○放題」という感覚、ほんと楽しい。パッケージを買うorレンタルが一般的だった時代を思うと、支払う料金を抑えつつ、より多くのコンテンツと触れることができて幸せだなーと感じます。 往年の名作を再生して当時の思い出に浸るのもいいけど、今まで見たこと、聴いたことのない映画やドラマ、アニメに音楽なども、定額ならば時間がある限り試し続けたくなります。そして気がつくのですよ。「えっ、このジャンルいいじゃん…」と。 例えば僕の場合、音楽だったらEDM。ハンズアップ&ジャンプもいいけどアゲアゲすぎないかー?と初期のEDMを毛嫌いしていましたが、近年のEDMはポップなメロディック・ハウスも増えてきていて。こんなに気持ちのいい音楽を聴き逃していただなんて! 映像だったらアクションホラーですね。映画館に行くほどではないと思い続けて幾星霜。しかしスマホやタブレットで、フリースタイル気味に見るならツッコミどころが多くて面白いんです。これまた見逃していたことを後悔しちゃった。 あれ? ほかのジャンルでも聴かず嫌い、見ず嫌いがあるのでは。例えばスポーツとかどうだろうか?と自問自答。地上波で放送する試合は見るけど…ほかに、もっとグッとくるスポーツのジャンル、あるんじゃないか。 そこで探してみることにしました。「スポナビライブ」で! 教えてサッシャさん! 「スポナビライブ」の楽しみ方 「スポナビライブ」は、生中継やビデオが見放題で楽しめるスポーツ専門のサブスプリクションサービス。 せっかくなので「スポナビライブ」の楽しみ方をエキスパートに教わりつつ、まだ見ぬ新たな出会いを探してみたいと思います。 登場していただくのは「スポナビライブ」の「ぶちまけ!スポーツトークライブ」やBリーグ専門番組「B.WEEK!!」のMCを務めるサッシャさんです。 サッシャ「昔は、海外のものなど数多くのスポーツの試合を見るとしたら、それなりの投資が必要でしたよね。でも『スポナビライブ』は手軽に始められる。お金はあまり使いたくないし、新たな機器も導入したくない。でも手に汗握る試合を見たい、という人に『スポナビライブ』は最適なんですよ」 まず、手軽に始めることのできる「スポナビライブ」の魅力を語るサッシャさん。 また、「スポナビライブ」は取り扱っているスポーツの種類も番組数も多いことで、スポーツ好きからの支持も厚いんです。 例えばプロ野球。パ・リーグはフルカバー。セ・リーグも「巨人、広島の全主催試合、中日の一部主催試合」以外は見ることが可能。カバー率高いですね。 さらに、サッカーはプレミアリーグとリーガ・エスパニョーラをカバー。ほかにもテニス、大相撲、卓球にキックボクシング(KNOCK OUT)の試合を配信。Bリーグ(ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)は1部も2部も配信しているじゃないですか! サッシャ「テレビだとチャンネル数に制限があるから放送する試合を厳選しなければならないけど、ネット配信なら何試合でも同時に配信できる。例えば、リーガ・エスパニョーラでいえば、テレビの考え方だとバルセロナやレアル・マドリードの試合が優先されて、せいぜい日本人選手の乾貴士がいるからエイバルの試合を放映するかなくらいのものです。『スポナビライブ』はそれだけじゃなくて、下位のチームも含めて全試合見られるのがいいですね」 サッシャ「Bリーグだと、今は川崎がとても強いのでテレビでも注目されているけど、苦戦しているチームの試合も『スポナビライブ』なら見られる。本当は試合会場に行って見たいけど、それが難しい人たち…例えば北海道出身だけど地元が遠くてホームゲームが見られない人とかね。地元愛を大事にしたい人にも『スポナビライブ』はいいですね」 サッシャ「サブスクリプションって図書館が自分のデバイスの中に入っているようなものだから。いままでチェックしていなかった競技も気軽に見られるのもポイントですね。最初は野球目的だったのが、サッカーの魅力に気がつくこともあるでしょう。ちょっと前までは野球ファンとサッカーファンがなぜか対立していて『野球ファンだからサッカーは見ません』みたいなノリがあったけど(笑)」 やっぱそうですよね! 新しい発見がうれしい。個人的に一番の発見はアメリカズカップでした。ヨットを操って競い合うレース。「海のF1」と称されるほど、最新鋭のテクノロジーと極限のフィジカルが求められる競技なんですよね。 サッシャ「アメリカズカップはおすすめですよ。スキッパー(艇長)は理工系のトップクラスであるハーバード大学出身のような人たちで、その頭脳を使ってその場で計算で風の動きを読むんですよ。一方で筋骨隆々の人たちがぐーっ!と船を引っ張って。そのチームワークがめっちゃ面白い。頭脳と肉体の両方が最高峰じゃないとトップをとれない…というのが、いままでは分かりづらかったところがありました。最近はCGが発達して、ゴールやブイの位置が視聴者に伝えられるようになりましたし、初めて見たときから楽しめると思いますよ」 新しいスポーツとの出会いだけでなく、そのスポーツの深堀りができるできるのも魅力なんだよなぁ。リアルタイムに移り変わっていく戦局を、監督や選手がどう判断して実行していくのか、戦術の醍醐味をフルに堪能できるんです「スポナビライブ」は。 サッシャ「深掘りということなら、例えばBリーグは1節18試合、それが32節あるんですけど、全部見る人っていままでいなかったと思うんですよ。でも『スポナビライブ』なら『見逃し機能』もあるから、その気になれば可能です。全部の試合を見たとしたら、どんなスポーツライターよりも詳しくなると思う。いままでにない発見や、魅力ある選手との出会いもたくさん生まれると思いますよ」 「見逃し機能」は、過去1週間分は試合丸ごとプレイバック視聴できるナイスな機能。忙しい日に気になる試合を見逃したとしても安心です。また、こちらは現在プロ野球のみの対応となりますが、ライブ視聴中に気になったシーンをもう一度見たいとき「タイムライン機能」を使ってちょっと前のシーンを再生することもできますよ。 さらに、「スポナビライブ」はライブ中継が一番のウリですが、試合のダイジェストや、見どころたっぷりのシーンを切り取ったオンデマンドビデオの充実も見逃せません。深掘りに最適です。 うん、いろいろ見識広がった。サッシャさん、ご教示ありがとうございました! いつでもどこでも見られて、しかもリーズナブル 「スポナビライブ」は、リビングルームのテレビで楽しむもよし、書斎のパソコンでも、バスルームの防水タブレットでも、移動中のスマホでも視聴OK。場所とデバイスを選ばずに見ることができます。 番組充実、機能も充実なので、月額料金は高めかな?と思ったら、フル機能が使えるスポナビライブ会員は月額1,480円。Yahoo!プレミアム会員、ワイモバイルユーザー、ソフトバンクユーザーは月額980円! 4月末日までの申し込みなら5月利用分まで無料となるキャンペーンを実施中ですし、いますぐ入会したらこの春のスポーツ事情をがっつりつかむことができるかも。寝不足になりそうな予感もしますが、それはそれで幸せなGW前後の時間を過ごせそうだ! source: スポナビライブ (文:武者良太、写真:佐藤哲郎) .p-post-contentFigureImage{border: 1px solid #ccc;}

Sponsored

MORE

kisenosato-1

運動を科学する「スポーツバイオメカニクス」で横綱・稀勢の里の強さを分析

ギズモード・ジャパンより転載(2017年5月12日公開の記事) 今日から「大相撲」の見方が変わるかも? 2017年3月場所での涙の優勝 が記憶に新しい、横綱・稀勢の里。2016年度は年間最多勝を獲得、日本出身力士として19年ぶりの横綱昇進、さらには新横綱としては貴乃花以来となる22年ぶりの2場所連続優勝など、ここ最近の稀勢の里は本当に強い! いまでは勝負所での安定感もグッと増し、まだまだ強くなる可能性を秘めている稀勢の里。今回は、そんな稀勢の里の強さをスポーツ専用の動画配信サービス「スポナビライブ」の映像を見ながら「スポーツバイオメカニクス」の視点で探ってみようという企画です。 スポーツバイオメカニクスとは、運動を主として力学的視点から解き明かしていこうという分野。取材にご協力いただいたのは、スポーツバイオメカニクスの分野に詳しく、自身も稀勢の里の大ファンという明治大学の桑森真介教授です。 桑森先生は、明治大学相撲部在籍中には、全国学生相撲選手権大会個人2位・団体優勝という輝かしい成績の持ち主。相撲に関する著書も多数執筆されています。 「スポナビライブ」にアーカイブされた過去の取組を分析しながら、桑森先生に稀勢の里の強さの秘密をスポーツバイオメカニクスの視点から語っていただきました。はたして、科学的に見た稀勢の里の強さの秘密とは? スポーツバイオメカニクス的「大相撲」の楽しみ方とは?── はじめに「スポーツバイオメカニクス」とは、どういった分野なのですか? 桑森教授:昔は「スポーツ力学」とか「キネシオロジー」とも呼ばれていました。運動パフォーマンスを力学を中心として科学的に検証し、その仕組みを分析するという領域ですね。 ── 「大相撲」を力学的に観ると、どのようなことが分かるのですか? 桑森教授:相撲の基本は、前に出て相手を“押す”ことにあります。ただし、相手を押そうとしても、体重の重い相手だと、重力によって相手の足の裏と土俵との摩擦抵抗が大きくなり、移動させることが難しくなります。しかし、力学的に考えると、どんなに重いものでも「氷の上」のような摩擦抵抗が少ない状況なら楽に動かすことができます。この原理から考えると、相撲の技術は大変理に適っています。相手の足の裏と土俵の摩擦抵抗を小さくするため、相手を「押し上げるようにして前に出る」ことで、体の小さな力士でも大型の力士を動かすことができるのです。 ── いうことは、稀勢の里が強い理由は「相手を押し上げる」のがうまいから? 桑森教授:と言いたいのですが、そうじゃないのが稀勢の里なんです(笑)。稀勢の里は身長が187cmと高く、足も長い。こういう大型の力士は、相手の懐に入って押し上げるのは困難です。じゃあ、稀勢の里はどうやって相手を動かすのか? その答えは、上から「引き上げる」なんです。 ── 上から、引き上げる? 桑森教授:自分よりも低いものを動かすとき、人はそれを上へ引き上げて動かそうとします。引き上げることで地面との摩擦抵抗を少なくするわけです。ところが、この方法は相撲の技術的にあまりいいものではありません。止まっているものならまだしも、相手はこっちを倒そうとしているわけですから。腰高の構えで、相手を引っ張り上げるようにして前に出ようとすると、相手に投げられたり、動かれて不利な体勢になったりする危険性があります。 稀勢の里の驚異的な「引き上げ力」【大相撲3月場所 5日目 勢戦】── であれば、なぜ稀勢の里は相手に勝てるのでしょうか? 桑森教授:そこで観てほしいのが3月場所での勢(いきおい)との取組です。実際に「スポナビライブ」で観てみましょう。この取組で稀勢の里は、自分よりも背の高い勢(身長195cm、体重165kg)を引っ張り上げています。 (動画を観ながら)まず立合いで稀勢の里は左差しから、下手まわしをつかみます。しかし、右の上手がうまく取れない。それにもかかわらず、右腕で相手の左腕を抱え込み、引っ張り上げるようにして、強引に前へ前へと出ていきます。 ── うわぁ、すごい! 稀勢の里、ぐいぐい引っ張り上げますね。こうやって相手の足を土俵から浮かせて、前へ前へと出るわけですね。いやぁ、稀勢の里の方が小さいとは思えない…。 桑森教授:そこなんですよね。普通の力士ならこんな相撲は取れません。自分よりも大きな力士に対して、それを引っ張り上げながら前に出るなんて。でも、こういった相撲を稀勢の里は取ることができるんです。 ── なぜ、稀勢の里はこういう相撲が可能なんですか? 桑森教授:スポーツバイオメカニクス的な視点で見ると、その理由の1つに、体幹を伸展する筋群の強さがあります。体を反らせるための「脊柱起立筋」や「大臀部」といった筋群の筋力が強く、使い方も非常にうまい。 ── 強さの秘密は、強靭な筋力にあると。 桑森教授:要素の1つではあると思います。そのほかにも、稀勢の里の強さの特徴に、彼は頭が下がらない。 ── 頭が下がらない? 桑森教授:稀勢の里のような、相手を引っ張り上げる相撲は、どうしても腰の位置が高く不安定になるため、相手に投げられたり、回り込まれて不利な体勢になったりしやすいんです。このとき頭が下がると、さらにバランスを崩して投げられやすくなる。しかし、稀勢の里の頭が下がることはまずありません。 ── なぜ、稀勢の里の頭は下がらないのでしょう? 桑森教授:まず、股関節が非常に柔らかいことですね。稀勢の里の四股や仕切りの動作を見ていると、膝が外によく開き、腰が前に出ている。上体が前かがみにならないのです。これは、柔軟性があるからこそできるんです。柔軟性があるといっても、そう簡単にできることじゃありません。膝が外に開くというのは、ある意味不自然な形になるわけですから。 稀勢の里の知られざる「防御力」【大相撲1月場所 11日目 遠藤戦】── 引っ張り上げる筋力、そして投げられにくい。稀勢の里の強さの秘密は、そのあたりにあるわけですね。 桑森教授:さらに付け加えるなら、投げに強いだけでなく、相手の横への動きにも強いことです。分かりやすい例が、1月場所での遠藤との取組です。これも「スポナビライブ」で確認してみましょう。 まずは立合いから左四つになります。そのあと、稀勢の里がグイグイ前に出ますが、ここ(動画0:33秒ごろ)で遠藤が右から出し投げを打ちながら、稀勢の里の左側に回り込んで、体(たい)を入れ替えようとします。 ── は、はやい! 遠藤はいい動きをしますね! 桑森教授:稀勢の里からすると、右上手が取れてないため、相撲のうまい遠藤が相手だと、横に回り込まれるリスクがある。実際、途中で体が入れ替わって、土俵際まで追い込まれてしまいます。 ── (動画を観ながら)あぁ! おおぉ、うわぁ…すごい! 土俵際まで押されながらも、最後は稀勢の里が勝ちました。 桑森教授:これも稀勢の里の強さの1つです。彼はとにかく反応が早い。彼は175kgの大型力士にもかかわらず、素早さがあります。遠藤が回り込んできても、その動きについていき、すぐに正面を向くだけの俊敏性がある。 ── なるほど。稀勢の里は攻撃力だけでなく、防御力も高いわけですね。 桑森教授:稀勢の里はあまり前傾姿勢を取らずに、四つで組んでお腹をうまく使いながら、体全身で前に出てきます。膝は外に開き、腰が前に出て、頭が下がらない。相手が回り込んでも、それについていく。タイプは違いますが、あの大横綱・双葉山も膝が開き腰が前に出て頭が下がらない力士でしたね。ちょっと褒めすぎかもしれませんが(笑)。 稀勢の里を覚醒させた「歴史的な名勝負」【大相撲1月場所 千秋楽 白鵬戦】── これまで稀勢の里は、勝負所での弱さを指摘されていました。長年、稀勢の里を見てきた先生からして、なぜここに来て2場所連続優勝ができたと思いますか? 桑森教授:相撲ファンとして感じるのは、彼は本当に力がついてきたということです。これまで後ろに下がったときにふんばり切れなかったところが、土俵際でも残せるようになってきた。そういった展開でも勝てるようになってきたということが、彼に自信を与えているのかもしれません。そういう意味では、なんといっても1月場所での白鵬戦は、彼に大きな自信を与えた取組でした。これも「スポナビライブ」で観てみましょうか。 ── この取組はよく覚えています。とにかく白鵬の寄りがすごかった! 稀勢の里も、本当によくふんばりましたよね。 桑森教授:それこそスポーツバイオメカニクス的な見方をすると、土俵際での稀勢の里の「脛(すね)」の角度がポイントなんです。動画で確認してみると、脛がすごく前に傾いているのが分かります。 ── ああ、かなり倒れてますね。 桑森教授:さらに、土俵に足がかかっているのもポイントです。例えるなら、土俵際の俵に棒をひっかけて、その棒を水平方向にいくら押しても前に進まないのと同じ状況なんです。つまり、脛がちょうど“つっかえ棒”のようになって、白鳳の攻撃を受け止めていたわけです。 ── 白鵬の押す力と脛の角度が絶妙にリンクし、力が相殺されていた…。 桑森教授:そうだと思います。ただし、脛が倒れているというのは、押しには強いですが、一方で、相手が引いた瞬間にバランスを崩す可能性もある。 ── ああ、なるほど。とうことは、もし白鵬が少しでも力を弱めていたら? 桑森教授:それこそ稀勢の里は簡単に倒れていた可能性もあります。白鵬がバーッと前に出たあと、体を開いて上手投げか上手出し投げで横に揺する。それだけで勝負の行方は変わっていたかもしれませんね。 ── そういう目で見ると、大相撲の奥深さが本当によく出た取組でしたね。 桑森教授:(動画を観ながら)こうして動画を確認してみると、白鵬は一気に前に出て勝負を決めることしか考えていないですよね。白鵬の意地のようなものが、このときばかりは裏目に出てしまったように思います。結果的に、この勝利が稀勢の里に自信を与えた気がします。立ち合いでは左を差しにいくという「自分の型」を貫き、あの白鵬の攻撃にあれだけ耐えることができた。これは彼にとって、大きな意味を持つ勝ち星だったと思います。 ── 最後に、5月場所で稀勢の里は優勝すると思いますか? 桑森教授:うーん、どうですかね(笑)。まずは腕の怪我がどれだけ治っているか。それから立合いに、迷うことなく、左を差しにいくという「自分の型」で立てるか。まずは初日の取組に注目したいですね。 ── 本当に初日が楽しみです。本日は、どうもありがとうございました! 注目の大相撲5月場所に向けて「スポナビライブ」の準備を稀勢の里の3場所連続優勝がかかった大相撲5月場所(5月14日〜5月28日)。絶対王者・白鵬との対戦はもちろん、人気・実力ともに急上昇中の高安、勢といった次世代ニュースターの活躍も見逃せません。 ただし、1つ悩ましいのが、大相撲中継は基本的に夕方にテレビで放送されているため、会社勤めの人はなかなかリアルタイムで見られないこと、ですよね? ご安心を。今回、稀勢の里の分析にも使用した「スポナビライブ」では、スマートフォンとネット環境さえあれば、いつでもどこでも“序の口から幕内までの全取組”を生中継で楽しむことができます。しかも「スポナビライブ」は「見逃し配信」にも対応しているため、休憩中や帰りの電車などで気になる取組だけを見ることもOK。早い話が全場所、全取組、すべてが見放題というわけです。 今回の取材で「スポナビライブ」を初めて知ったという桑森先生も、「映像がキレイだし、タブレットで見られるのはすごく便利。何度も繰り返しチェックできるから、相撲ファンだけでなく、指導者にとってもうれしいサービス」と、かなり気に入っていた様子でした。 「スポナビライブ」では大相撲の配信だけでなく、プロ野球・MLB・テニス・サッカー(プレミアリーグとリーガ・エスパニョーラ)など、12種目の人気スポーツを毎日リアルタイムで配信しています。利用料金は月額1,480円で、4端末から同時視聴が可能。さらに、Yahoo!プレミアム会員・ワイモバイルユーザー・ソフトバンクユーザーなら、利用料金が月額980円になります。 先日入ったニュースによると、稀勢の里が5月場所で着用する化粧まわしには、なんと、あの名作漫画『北斗の拳』に登場する「ラオウ」があしらわれているとか。ケンシロウじゃなくラオウというのも、なんだかちょっと稀勢の里っぽいかも? ということで、皆さんご一緒に! 「わが生涯に、一片の悔いなし!!」(って優勝コメントで言ってほしいなぁ…) 記事で紹介した取り組みの動画は以下のとおり。すべて無料で見られます! 大相撲3月場所 5日目「勢 - 稀勢の里」大相撲1月場所 11日目「稀勢の里 - 遠藤」大相撲1月場所 千秋楽「白鵬 - 稀勢の里」 source: スポナビライブ (執筆:稲崎吾郎/撮影:小原啓樹)

Sponsored

MORE