フランス大統領選の第1回投票が終了し、投資家らが動き出した。
決選投票へは中道系独立候補のエマニュエル・マクロン前経済相と極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首が進んだ。
第1回投票後の世界市場の反応を見ると、投資家が望んでいるのは明らかにマクロン氏だ。ほとんど全ての主要指標ではリスクオン相場で株価が上昇し、金や国債といった従来の安定市場では売りが生じている。
マクロン・大統領候補が進める政治運動「アン・マルシェ!(前進)」
Sylvain Lefevre/Getty Images
ドイツ銀行のエコノミスト、マルク・デミュイゾン(Marc de-Muizon)氏とマーク・ウォール(Mark Wall)氏は4月24日月曜日、「マーケットにはフランス(大統領選)の先を見通すゆとりがある」と述べた。
「全体的に見て、第1回投票の結果が選挙前の世論調査の結果に非常に近く、また決選投票の予想ではこれまで常にマクロン氏がルペン氏を上回っていることから、5月7日の決選投票に関する残余リスクについて市場は比較的、楽観視しているはずだ」
フランスの欧州連合(EU)離脱や通貨フランの復活、さらに外国人労働者への課税強化や移民抑制策を掲げるルペン氏は、フランス大統領選の有力候補の中で最も市場に敵対的だとみなされてきた。
昨年6月のイギリスの国民投票でブレグジット(イギリスのEU離脱)が支持されたことや同11月の米大統領選の結果を受け、懸念が高まる中、世論調査もそれを反映していた。ドイツ銀行が算出した複数の世論調査の結果の平均値で、第1回投票のマクロン氏の支持率は23%とトップだったが、2位のルペン氏とは僅差だった。
決選投票への期待
従って決選投票へ向けた支持率で、グローバリストで親EU派のマクロン氏が60%を獲得していることは、市場に安心感を与えている。4月23日日曜日の第1回投票の結果を受けて、翌24日月曜日に起きた市場の動向は、単なる安堵感だけではなく、決選投票への期待感も表しているものだろう。
しかし、世論調査が外れることももちろんあり得る。今後2週間のうちに新たなスキャンダルが生じるかもしれないし、前回調査以降に考え直す有権者もいるだろう。
「中期的にフランス経済の見通しを改善するために重要なことは、次期大統領が下院で多数派を獲得することだ」とドイツ銀行はみている。
「フランスの政治史上初めて、歴史的に主流を占めてきた政党が大統領選の決選投票に残らない事態となった。中道左派・社会党の政権運営に対する失望と、中道右派・共和党が3位に終わったことが相まって、フランスの政治情勢は今後数週間のうちに大きく再編されるだろう」
欧州では英国で6月、ドイツで9月、イタリアで来年と次々に総選挙が待ち構えている。それらはEU圏外の展望も一新する可能性がある。
「我々の見解では、市場にマイナスなポピュリスト候補の当選による衝撃リスクが最も高いのはイタリアだ。だがイタリア総選挙は各国の選挙の一番後で、半年以上先になることが見込まれ、それまでの間、市場はそれに捕われてはいられない」とドイツ銀行は指摘している。
フランスの政治より企業決算
米国では今週、S&P500が過去数年間で最も活況を示した。今年第1四半期の決算発表シーズンはこれまでのところ順調で、投資銀行オッペンハイマーによると、特にエネルギーセクターの改善は目覚ましく、前年同期比11%を超える伸びを見せている。
米国の投資家にとって目下の関心事はこちらであり、フランス大統領選に関する懸念や熱狂ではない。ルペン氏が決選投票で勝ったとしても、フランスのEU離脱を含む同氏の政策を実行に移すためには、議会の過半数を確保する必要がある。
「そうしたレベルの懸念が投資家の間にあるとすれば、それは見当違いであり、実行に移されるまでにはどれだけ長い道のりがあるかを理解していない証拠だ」。シュワブ金融リサーチセンター(Schwab Center for Financial Research)のトレーディング&デリバティブ部門担当副社長、ランディー・フレデリック(Randy Frederick)氏は、フランス大統領選第1回投票の前にそう述べた。
「そうした投資家らはフランスの議会制度を理解していないし、米国の議会制度の成り立ちとどう違うか分かっていないと思う」と同氏は語った。
[原文:The first round of the French election is over, and Wall Street can start moving on]
(翻訳:Tomoko.A)