ウィキペディアの共同創設者 ジミー・ウェールズ氏
Carl Court/Getty Images
フリー百科事典「ウィキペディア」の共同創設者のジミー・ウェールズは4月25日、フェイクニュースおよびメディア不信への対策として、コミュニティーベースのニュースサイトWikitribune の新規立ち上げを発表した。また彼は、この新規事業の立ち上げが、賛否両論あるトランプ大統領顧問ケリーアン・コンウェイの発言に後押しされたものであることも明らかにした。
「これについてはずいぶん昔から頭の片隅で考えてきたし、アイデアは常に膨らませ続けてきた。だが、自分にとって優先順位が高いとは言えないプロジェクトだった」
ウェールズは4月24日、Business Insiderとの電話インタビューでそう回答した。
「わずかな時間を置いたんだ。トランプ大統領に100日間のチャンスを与えてみよう、と私は友人に説得された。100日間は全てが好転することを想定し、大統領がいい仕事をしてくれることを望みながら大統領を全般的に支持することにした」
「だがある日、ケリーアン・コンウェイが出てきて、『もう一つの事実』について語り始めた。その時に『これ以上は無理だ。もう我慢できない。ゲームオーバーだ』となってしまった。それからこのプロジェクトを前進させ始めた。これはどうしても私がやらなくてはならないことだ。この世界で価値があると自分が信じるもののためにも、自分がこの問題の解決策を提示しなくてはならないと」
Wikitribune は、従来型のニュースと誰でも編集可能なオンラインの百科事典「ウィキペディア」を織り交ぜたようなサイトだ。プロのジャーナリストたちが大筋を決め、コミュニティー・ボランティアと共同で記事を執筆し、編集する。 「関係する全ての人が対等な立場で関わり合うメディア組織」とウェールズは言う。 50歳のジミー・ウェールズは少なくとも最初の段階ではCEOに就任し、同時に編集長的な立場でいながら、サイト運営を指揮していく。
新会社では、30日間のクラウドファンディングキャンペーンを実施し、ジャーナリストの雇用に必要な資金を集めている。キャンペーン終了後、ウェブサイトはローンチされる予定だ。まずはジャーナリスト10名から開始し、徐々に拡大させていくという。
ケリーアン・コンウェイ
Spencer Platt/Getty Images
今日のメディア組織にとって、売り上げを確立させることは簡単ではない問題だ。グーグルやFacebookなどの組織が巨額の広告収入を集め、ニュースが無料で読めることに消費者たちは慣れてしまっている。Wikitribuneは有料会員制などは考えておらず、ウィキペディアの運営と同様に、ユーザーに自主的に購読料を支払ってもらうか、寄付してもらうことによって運営費を賄おうと考えているのだ。 Wikitribuneは拡散性の強いニュースストーリーに焦点を置くつもりだ、とウェールズは語る。
この市民参加型のジャーナリズムは、情報漏えいなどで特にその強みを発揮するだろう。 主流メディアへの信頼性が過去最低レベルを記録する昨今では「フェイクニュース」に関する議論が加速している。昨年の大統領選では、Facebookなどのプラットフォームで拡散されたフェイクニュースがドナルド・トランプ大統領を勝利に導いた、とする見解もある。
だが、「市民ジャーナリズム」およびコミュニティーによって運営される調査にも信頼性の問題がある。最も有名なものは、Redditで2013年のボストンマラソン爆弾テロ事件の犯人ではないかと疑惑をかけられた行方不明男性の例だ。
「Redditには素晴らしいコミュニティー性と同時に、粗悪なものや騒がしい噂まみれの場所も共存している。それにRedditは事実確認を行い、記事を発表していくジャーナリズムの場所として設計されているわけでもなく、そこを目指しているわけでもない」
「ボストンマラソンの一件ではRedditに対する全ての評価が公平だったようには思えない。一部の人たちが『こいつが犯人じゃないのか?』と面白半分にメッセージボードに書き込むことを阻止するのは、開かれたインターネットの世界では困難だ」
彼はさらに続けてこう言った。
「我々の立場から言うと、記事を公開するのであれば、事実確認を行い、それが承認されてからにしよう、ということだ。そこに違いを生み出すために、我々が目指すところがどこにあるのかを最初に明確にし、そのために必要となる基本的な社会規範や従うべきルールをあらかじめ設定しておかなくてはならない」
[原文:Wikipedia cofounder Jimmy Wales is launching a community-powered news site]
(翻訳:まいるす・ゑびす)