カッシーニが4月26日に撮影した土星の巨大ハリケーン(左)と土星の表面を覆うガス雲の嵐
NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute
土星から届いた新たな画像は、小さく、粗く、ぱっとしない。しかし、これは史上最も至近距離から撮影された土星の画像だ。土星の大気にできた巨大な渦の様子がはっきりと確認できる。
NASAの土星探査機カッシーニは4月26日、「ring crossing(リング・クロッシング)」と呼ばれる土星と土星の環(わ)の一番内側の間を通り抜ける、危険を伴う観測飛行を開始した。
「画像が送られてきてすぐ、我々は今までに見たことのない土星の画像を目にした。探査を始めて13年近く経ってもなお、土星は驚きに満ちている」
NASAジェット推進研究所でカッシーニ・プロジェクトの科学エンジニアを務めるジョー・ピテスキー(Jo Pitesky)氏は、Business Insiderへのメールで語った。
土星の北極点にある六角形の渦の上空を飛ぶカッシーニの予想図
NASA/JPL-Caltech
これらの画像は、カッシーニが未知の領域を飛行して得た、そして今も収集を続けているデータのほんの一部だ。
「グランド・フィナーレ」と呼ばれる今回のミッションでは、カッシーニは、土星と土星の環の間を22回通り抜けることで、この隙間領域にかつてないほど接近し、これまでに得られなかった新たな発見を目指す。
そして原子力をその動力とするカッシーニは、2017年9月15日に土星の厚い大気に突入し、燃え尽きる。
カッシーニの最期は計画されたものだ。NASAは燃料がなくなったカッシーニが土星の衛星に墜落し、環境を汚染してしまうことを懸念している。土星の衛星、エンケラドスやタイタンには、地表を覆う氷の下に海の存在が指摘されており、生命が存在する可能性がある。
土星の新たな映像
下の動画は、ジェイソン・メイジャー(Jason Major)氏がTwitterに投稿したもので、カッシーニが土星の北極点上空を飛行したときに撮影したものだ。この時、カッシーニは時速7万6800マイル(時速約12万4000キロ)で飛行していた。これは銃弾の約45倍以上のスピードだ。
NASAジェット推進研究所の広報担当者、プレストン・ダイクス(Preston Dyches)氏によると、カッシーニは大きく、鮮明な画像を撮影することもできたが、敢えて低画質での撮影が選択された。
「今回の撮影は、画像サイズを半分にして行った。撮影時間を短縮するためだ」とダイクス氏は述べた。さらに、カラー撮影も行っていないと付け加えた。「(探査機の)すぐ下で、猛スピードで動いている物体を撮影するためだ」
カッシーニから送られてきた画像はこれだけではない。
カッシーニは、土星と土星の環の間を通り抜ける前に、地球の直径の2倍におよぶ六角形の渦の新しい映像を撮影した。ダイクス氏によると、科学者たちは新しい映像の解析に取り組んでいる。ただし、公開時期は未定だ。
無事に最初のミッションを成功させたカッシーニ
カッシーニは土星と土星の環の間、約1200マイルの隙間を通り抜ける。
NASA/JPL-Caltech; Business Insider
カッシーニが、1回目の(土星と土星の環の間の)通り抜けに成功したことは大きな成果だ。
土星と土星の環の間の約1200マイル幅の空間には、氷のかけらが漂っているとみられ、カッシーニに衝突する可能性がある。そこでNASAはカッシーニの大きなパラボラアンテナが進行方向を向くようカッシーニの姿勢を変え、アンテナを盾として使用している。とはいえ、安全が保障されたわけではない。
カッシーニ・プロジェクトに携わるNASAジェット推進研究所の惑星科学者、リンダ・スピルカー(Linda Spilker)氏は今回のミッションの前に、「氷のかけらが衝突する場所によっては、機器がダメージを受ける可能性がある。例えば、コンピュータが脱落したり、破損する可能性がある」と語った。
しかし、懸念されていたような事態は起こらなかった。NASAはカッシーニを再び土星と土星の環の間に向かわせ、5カ月間にわたる最後の、そして最も危険なミッションを続ける。
source:NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute、NASA/JPL-Caltech
[原文:New close-up photos of Saturn give a taste of what a doomed NASA probe may soon discover]
[翻訳:忍足亜輝]