子宮頸がんワクチンはやっぱり打たない方がいいのか

結局のところ、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを打っても大丈夫なのか。子宮頸がんの引き金となるHPVウイルスに対するワクチン接種について、昨今、このような質問を受けることが多くなった。

子宮頸がんは、20代後半から40代前後の女性が発病しやすく、日本では毎年約1万人が罹患し、約3000人が死亡していると推定されている。多くの母親が小さい子どもを残して亡くなっていることから、マザーキラーとも言われている。

子宮頸がんワクチン

子宮頸がんワクチンを巡っては有効性を裏付ける報告がされる一方で、健康被害の訴えも起きている

広尾レディース提供

日本では、2013年から予防接種法に基づく定期接種となり、小学校6年生から高校1年生の女子は全額公費で接種できるようになった。 だが、ワクチン接種後の副作用の報告を重視した厚生労働省は、13年6月に「接種の積極的な勧奨」の一時中止という決定を下した。接種後にみられた慢性疼痛などの症状とワクチン接種の因果関係や、痛みが生じる頻度などについての実態調査が必要と考えたからだ。

厚生労働省研究班は4月、10万人に15・6人の頻度で、全身の痛みや起立障害など10以上の症状が出たとの推計を発表。一方、健康被害を訴える119人が原告となり、全国4地裁で国と製薬会社を相手取って係争中だ。ワクチン接種と症状との因果関係を巡っては争いがある。

「積極的な勧奨」中止から3年以上が経過した現在も、再開はなされていない。

「痛み」による体への悪影響

実は日本の状況を尻目に、HPVワクチンの有効性は早い段階から世界的に保証されていた。

16年2月、アメリカ疾病予防管理センターの研究グループは、ワクチン導入で、アメリカの若年女性のHPV感染率が大幅に低下したことを報告した。06年中旬にアメリカでHPVワクチン接種が始まって6年間で、14歳から19歳の女性におけるHPVの感染率が64%、20歳から24歳の女性においては34%も低下したというのだ。

同じくアメリカでは、シンシナティ大学の研究グループが16年9月、HPVワクチン接種が7割普及したことで、接種女性におけるHPV感染率が91%も低下したことを報告した。オハイオ州の13歳から26歳の性体験済みの若い女性1180人への調査により判明したものだった。

一方で、ワクチンの副作用に対する明快な「答え」は出ていない。どんなワクチンにも、副作用の可能性はある。複合性局所疼痛症候群(CRPS)や体位性起立性頻拍症候群(POTS)など大きく報道された接種後の症状が、HPVワクチンの副作用である可能性を否定することもできない。ワクチンの副作用は、さまざまなメカニズムで起こっている可能性があるからだ。

私は、大学に入学して間もなくHPVワクチンを接種した。接種部位の腫れがしばらく続いたことや接種時の痛みが強かったことを覚えている。ワクチンを接種した友人の多くも、同様の腫れや痛みを自覚していたようだった。「痛み」は単に痛いと感じるだけでなく、体にさまざまな悪影響を与える。前出のCRPSやPOTSを含め、ワクチンの副作用はこの「痛み」と強く関係していることがわかっている。

例えば、採血をしたときに生じる現象を「迷走神経反射」という。注射の痛みが迷走神経を刺激することによって、冷や汗をかいたり、気持ちが悪くなったりする。ひどいと、失神してしまうケースもある。

ワクチンの副作用もこの迷走神経反射と少なからず関係がある。アメリカのCDC(アメリカ疾病予防センター)とFDA(アメリカ食品医薬局)の研究によると、この迷走神経反射は11〜18歳において多く見られたという。

なぜ多感な時期に打つ必要があるのか

であれば、痛みや恐怖を敏感に感じやすい年齢で、あえてHPVワクチンを予防接種する必要があるのだろうか。 HPVは性交渉により感染する。国立社会保障・人口問題研究所が16年に発表した調査結果によると、18〜19歳の未婚の男性、女性で異性と性交渉を持ったことがある割合は、それぞれ23%と20%だが、20〜24歳になると48%、49%と大幅に増加する。感染が性交渉によるものであれば、もし大学生か社会人になってから接種するのでも遅くはないはずだ。その年齢であれば迷走神経反射も起きにくくなり、ワクチンによる予防接種のリスクと有効性を、親だけでなく自分自身でも考えて選択できる。

HPVワクチンの有効性が報告されている中、ワクチンの接種時期を小学校6年生から高校1年生という多感な時期ではなく、大学生や社会人になる時期に変更してみることも、ワクチン接種に悩んでいる女性やその親への一つの「答え」になるのかもしれない。

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