3つの事件、3つの成功、嘘とスキャンダル——トランプ政権100日を検証する

4月28日、エネルギー規制緩和の大統領令に署名するトランプ大統領

共和党員の84%が、トランプ氏に投票した人の94%がトランプ政権を支持している

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トランプ政権100日に起きた3つの事件

1. ホワイトハウスが、「トランプ大統領100日」のビデオを公開

保守系テレビ「FOXニュース」に出演した保守系テレビアンカー、ルー・ドブス氏がこう、トランプ大統領を讃えた。

「彼は、最近の大統領の誰よりも、多くのことを成し遂げた。ほとんど“完璧”と言っていい」

2. 4月29日、ホワイトハウス記者会の恒例ディナーを欠席

大統領が出席しなかったのは、レーガン元大統領が狙撃されて欠席した1981年以来。ディナーは1920年代から開かれ、歴代大統領がジョークたっぷりに、批判的なメディアに対し応酬する演説が有名で、毎年テレビで生中継されていた。

トランプ氏は代わりに、ペンシルベニア州で開いた集会で7000人のトランピストを前に演説。最初の11分間をメディア批判に費し、聴衆を大いに盛り上げた。特にCNNとMSNBCは「フェイク・ニュース」で、ニューヨーク・タイムズは「倒産しそうだ」と話した。

「(メディアが)重要だと思っていることは、私にとって重要ではなく、あなたたちの優先事項でもない。メディアの仕事が、誠実なもので、事実を伝えるということであるならば、今のメディアはとんでもない落第点を食らっているところだ。メディアは、ひどく不誠実な輩だ」

これを聞いたトランピストからはブーイングが起き、「CNNはムカつく」と唱和した。

世論調査によると、トランプ氏の支持率は最初の100日の時点で戦後最低の42%。不支持率は53%と10ポイント上回っている。しかし、トランプ氏に投票した人は94%、共和党員84%が支持しており、「投票して後悔している」という人は2%しかいない。

3.「大統領閣下、メディアはフェイク・ニュースではありません」

一方、ワシントンで開かれたホワイトハウス記者会のディナーに参加したボブ・ウッドワード氏が演説の際、トランプ氏にメッセージを送った。同氏はワシントン・ポスト記者時代、ニクソン元大統領の辞任につながるウォーターゲート事件をスクープした。

「私たちは、倒産しそうな報道機関ではありません。アメリカ人の敵でもありません」 とし、同夜開かれたトランプ氏の集会演説に反論した。

3つの事件から学べることは、米国が、トランプ支持層とトランプ反対派の真っ二つに分断されているだけでなく、トランプ支持層と主要メディアの間の対立も深いことだ。

4月29日、ホワイトハウス記者会のディナーでスピーチするボブ・ウッドワード氏

記者会のディナーでスピーチするボブ・ウッドワード氏。トランプ政権とメディアの溝は深い

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トランプ氏にとっての3つの成功

1. トランプ氏が指名したゴーサッチ氏が連邦最高裁判事に就任

大統領のもっとも大事な任務は連邦最高裁判事を指名し、上院の承認を得ることだとさえ言われる。トランプ氏はそれを100日以内に達成した。

2. シリアへのミサイル制裁攻撃、アフガニスタンでの大規模爆風爆弾(MOAB)を使ったイスラム国(IS)攻撃で成果

シリアのアサド政権の化学兵器を使った空爆で、多数の市民の犠牲者が出たことに対して行ったミサイル制裁は、「化学兵器の使用をアメリカは看過しない」という姿勢を示した。

3. 中国の習近平国家主席と会談し、個人的な信頼関係は築かれた模様

フロリダ州の別荘「マーラーゴ」で、4月6日から2日間にわたり計5時間会談した。米メディアによると、トランプ氏は習主席に対し、北朝鮮を非核化させるため、金正恩・朝鮮労働党委員長に圧力をかけるように迫った。これに対し、習主席は中国側の事情を説明。トランプ氏は習主席にこう理解を示している。

「10分間、主席の話を聞いて、中国が北朝鮮に強硬な姿勢を取ることが難しいとわかった。中国は中国なりに努力している」

これらのトランプ氏の成果から、ホワイトハウスのインサイダー情報に強いメディア「Axios」のマイク・アレン氏は、こう分析している。「(トランプ氏の)アメリカ第1主義は、伝統的な保守主義に取って代わられたようだ。マイク・ペンス副大統領が、大統領になっても、100日目は同じような感じだっただろう」

そして嘘やミスリードとスキャンダル

1. トランプ大統領は100日間に488回の正しくない、あるいはミスリードの発言をした

米紙ワシントン・ポストのファクトチェッカー・チームによると、トランプ氏は最初の100日間の演説やインタビューなどで、1日平均にすると4・9回の正しくない、嘘、あるいはミスリードの主張をした。合計で488回となる。

ミスリード発言がなかった最長期間は10日間。1日に20回以上の正しくない、ミスリードの発言をした日は100日間のうち4日間で、100日目を迎えた4月29日は19回に上った。

ワシントン・ポストはこう指摘する。

「多くの人は、間違った発言をしたのち、間違っていたとわかれば、発言を撤回する。しかし、トランプ氏は同じ発言を何度も何度も繰り返す」

2. 長女イヴァンカ・トランプさんがホワイトハウス入り

トランプ氏の愛娘イヴァンカさんはトランプ氏が築き上げたトランプ財団でエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントだったが、大統領補佐官としてホワイトハウスにオフィスを与えられた。

「縁故主義」と批判されたが、ホワイトハウスはイヴァンカさんが「無給」であることを理由に縁故採用ではないと説明。しかし、イヴァンカさんのスタッフや出張費用はアメリカ国民の税金で支払われている。シリアへのミサイル制裁も、イヴァンカさんと夫の大統領上級顧問ジャレッド・クシュナー氏がトランプ氏に影響を及ぼした。

イヴァンカさんが4月25日、ドイツで開かれた20カ国・地域(G20)女性会合のパネルディスカッションに出席したことについて、ドイツのガブリエル外相は、こう批判した。

「選挙で選ばれてもいないのに、国賓のような立ち居振る舞いをする大統領の家族に、まるで君主の家族のように敬意を払うことには違和感を抱く」

イヴァンカさんは、ドイツのメルケル首相の招待で参加した。

3. 「ロシアゲート」スキャンダルは、捜査・調査が進行中

米連邦捜査局(FBI)が「ロシアゲート」、トランプ氏の選挙陣営が大統領選の結果が有利になるようにロシア政府と共謀したかどうかについて、昨年から捜査していることがわかった。

上下院の情報委員会もロシアゲートについて調査中。クシュナー氏や元選対本部長のポール・マナフォート氏がそれぞれの委員会で聴取されるが、日程は未定。

嘘、ミスリード、縁故採用、スキャンダルと、過去の政権に見られないネガティブな印象の100日だった。しかも、これらは、トランプ氏が敵対するメディアが暴いたのではなく、全てトランプ氏自身とその周辺から発せられている。



津山 恵子:ジャーナリスト、元共同通信社記者。ニューヨーク在住。2007年から独立し、主に「AERA」に米社会、政治、ビジネスについて執筆。

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