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2030年までに、アメリカではマイカーを持つ人がほとんどいなくなり、代わりに自動運転車のライドシェアサービスが利用されるだろう。
これは、テクノロジーと個人の車の所有に関する最新の報告書でアナリストが示した「未来予想図」だ。レポートをまとめたシンクタンクRethinkXの共同創業者でスタンフォード大学の講師でもあるトニー・セバ(Tony Seba)氏と、ハイテク投資家で慈善家のジェームズ・アービブ(James Arbib)氏は、「ライドシェア会社が保有する自動運転の電気自動車公共ネットワークが、未来の都市交通を担うだろう。その未来が実現すれば、アメリカの交通システムは大きく影響を受ける」と述べた。
研究による予測:
- 2030年までに、アメリカのマイカー所有者は80%減少する。
- 全米を走る乗用車の台数は、2億4700万台(2020年)から、4400万台(2030年)に減る。
- 2021年までに、電気自動車のライドシェアサービスを利用した場合の1マイル(約1.6km)あたりの費用は、新車を購入した場合の4分の1~10分の1になる。各世帯の年間コストも、マイカーを購入・維持するのに比べ約5600ドル(約63万円)安くなる。
- 世界の石油需要は、2020年に1日あたり1億バレルとピークを迎え、2030年には1日あたり7000万バレルに減少する。
- 移動コストの軽減で、2030年のアメリカの世帯可処分所得(年間)は、現在より合計1兆ドル増加する。
アメリカ人の大多数が自動運転車や電気自動車のライドシェア利用に移行したら、都市の道路計画は大きく影響を受けるだろう。報告書によると、ライドシェアは駐車の必要がないため、2030年には車の台数が減少する。乗客を降ろすとすぐに新しい乗客を拾いに行けるため、多くの駐車場が不要になり、歩道の拡幅、住宅や公園の拡大、車乗り入れ禁止区域の増設が可能となる。
アメリカで販売された車は、平均して95%以上の時間が駐車にあてられている。しかし、路上の車が減れば、道路の車線や駐車場を他の用途に使える。中にはすでに、こうした未来に備えている都市もある。例えば、サンフランシスコでは、多くの駐車場が「パークレット(parklet)」というベンチや植物、時にはアートのある小さな公共スペースに替わっている。また、ピッツバーグは自動運転車の普及を見込み、今後20年は車線を増やさないとしている。
多くの自動車メーカーは、運転手がいらない未来の創造を競う。
テスラは2016年、配車サービス参入への意欲を示し、同年後半には、自社の電気自動車に完全自動運転対応のハードウエアを搭載すると発表した。
Uberも同時期、企業として初めてピッツバーグの公道という現実世界で自動運転車の走行実験を行った。実験で使われたのは個人所有のガソリン車だったが、UberのCEOトラビス・カラニック(Travis Kalanick)氏は「UberPool」(知らない者同士で相乗りすることで、運賃を抑えるUberのサービスのアプリ)をUberの、そしてアメリカの交通の未来だと説明した。同社の交通政策に関わる部署の責任者アンドリュー・サルズバーグ(Andrew Salzberg)氏はかつて、「私は、どこへでもマイカーを運転して行く人の割合が減っていくと確信している」とBusiness Insiderに語っている。
GMやフォードのような既存の自動車メーカーも、自動運転車のライドシェアに関する新たな取り組みを行っている。
今回の研究の著者たちは、駐車スペースはいずれ無くなり、都市計画や道路インフラの将来図が再検討されるべきだと信じている。
セバ氏はプレスリリースで「我々は歴史上で最も速く、深く、そして重大な既存の交通システムの混乱の渦中にいる。しかしそれは魔法でもたらされるのではなく、経済によって導かれるものだ」とコメントした。
[原文:Only 20% of Americans will own a car in 15 years, new study finds]
(翻訳:四方田里奈)