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2年ぶりに帰還! 謎に包まれた無人往還宇宙機「X-37B」のミッションとは

アメリカ空軍の謎に包まれた宇宙機X-37

X-37Bのサイズは、NASAが過去に運用していたスペースシャトルの約4分の1。

提供:Wikimedia Commons

5月7日(現地時間)、アメリカ空軍の無人往還宇宙機「X-37B」が新記録となる718日間の地球軌道周回の後、NASAケネディ宇宙センターに着陸した。フロリダ州の同センターに着陸するのは初めて。

アメリカ空軍は現在、2機のX-37Bを保有、「最新鋭の再利用可能なスペースクラフト」と呼んでいる。

全長29フィート(約8.8メートル)、翼幅14フィート(約4.3メートル)というサイズは、NASAが過去に運用していたスペースシャトルの約4分の1。貨物室のスペースは、ピックアップトラック1台分ほどだ。

X-37プログラムは1999年にスタートし、初の打ち上げは2010年4月、8カ月間の軌道周回飛行を行った。

2回目のミッションは2011年3月から始まり、15カ月間に及んだ。3回目は2012年12月から始まり、22カ月間に及んだ。

「我々は今日のために数年間準備してきた。そして今日の着陸が無事成功に終わり、皆のハードワークと献身を誇らしく思っている」とアメリカ空軍第45宇宙航空団の司令官ウェイン・モンティス(Wayne Monteith)准将は声明で述べた

今回のミッションは4度目にあたり、2015年5月に打ち上げられた。X-37プログラム全体での軌道周回日数は通算2085日となった。

X-37Bが比較的低高度で飛行している姿は、アマチュア天文家の望遠鏡によって捉えられ、観測されてきた。飛行高度は地上200マイル(約320キロメートル)以下といわれ、ISS(国際宇宙ステーション)の高度よりも低い。

一方で、X-37Bが通算2085日にもわたって周回軌道上で何を行っているのかは、ほとんど明らかになっていない。

アメリカ空軍は、X-37Bプログラムは「リスク削減、実験、そして再利用可能な宇宙機技術の運用構想の開発を行っている」と発表している。

同軍はこのプログラムで「先進的な誘導技術、ナビゲーションとコントロール、熱防御システム、航空電子機器、高温構造および高温シール、再利用可能な断熱材、軽量な電気制御航法システム、最新鋭推進システム、最先端素材、自律周回飛行、大気圏再突入および着陸」の試験を行っているとしている。

アメリカ空軍のX-37B

アメリカ空軍のX-37B。5月7日、NASAケネディ宇宙センターのシャトル着陸場にて。

US Air Force

アメリカ政府はX-37Bの写真と技術の詳細も公表している。軌道制御エンジンの燃料としてヒドラジンと四酸化二窒素を使用していること、NASAのスペースシャトルとは異なる熱防御システムを採用していることが明らかになっている。

専門誌「Air & Space」によると、2015年5月の打ち上げに先立ち、アメリカ空軍とNASAはX-37Bの2つの積載物の詳細を明らかにした。1つはNASAの材料科学の実験材、もう1つはアメリカ空軍がテストを行う小型のイオンロケットエンジンだ。

しかし、X-37Bが極めて先進的であり、一連のミッションがしばしば秘密にされる傾向があることから、他の目的があるのではないかという憶測もある。

X-37Bを製造したボーイングでチーフエンジニアを務めるアーサー・グランツ(Arthur Grantz)氏は2011年、X-37Bを最終的には有人機に改修することができると述べた。だが、軍がX-37Bを使って何をしようと考えているかは明らかにしなかった。

平和的な宇宙開発を提唱する非営利団体Secure World Foundationの技術顧問ブライアン・ウィーデン(Brian Weeden)氏は、X-37Bが低高度で飛行していることと、同機に搭載されているスラスター(姿勢制御用の小型ロケット)から、米軍が偵察衛星をより低い軌道で周回させようとしている可能性があると述べた。低い高度を飛べば、軌道制御のためにより多くの燃料が必要となるものの、撮影される画像はより鮮明になる。

宇宙機X-37B

X-37Bを製造したボーイングでチーフエンジニアを務めるアーサー・グランツ氏は、同機は有人機に改修することができると述べた。

提供:US Air Force

また同団体によると、X-37Bは諜報関係のハードウエアのテスト、あるいは評価を行っている可能性もある。

その他、X-37Bは監視装置の開発に関わっていると見る人もいる。

「おそらく秘密裏に、将来、偵察衛星の一部となる可能性のある機材・装置が積み込まれている」 とシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のジェームス・アンドリュー・ルイス(James Andrew Lewis)氏は、2016年初頭にAir & Spaceで述べている

ルイス氏によると、アメリカ空軍は最先端の小型センサーに注目している。なぜならアメリカ空軍は、高価な大型の人工衛星から、「小型ながら、これまでと同等の性能を持つ人工衛星」への移行を目指しているからだ。

X-37Bでテストされている装置や材料は、配備に向けて開発が進められるだろうが、一方、X-37Bそのものの開発は進まないだろうとウィーデン氏はAir & Spaceに語っている。しかしだからといって、X-37Bの終わりの日が近付いているわけではない。

5回目となる打ち上げは今年後半、フロリダ州のケープ・カナベラル空軍基地で行われる予定だ。

「着陸後、整備を行い、同じ地点から打ち上げができるX-37Bは、新たな宇宙航空技術の統合と評価をより一層推進することができる」と、アメリカ空軍緊急能力造成室のランディー・ウォルデン(Randy Walden)氏は語った

source: Wikimedia Commons、US Air Force

[原文:Here's everything we know about the mysterious Air Force plane that just landed after 2 years in space

(翻訳:忍足亜輝)

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