ウォルマートのオンライン通販「Jet.com」がNYで期間限定店をオープン —— 小売の未来につながるか?

「Fresh Story」の看板とJet.comの雑貨の数々

マンハッタンにあるJet.com がスポンサーの期間限定店舗「Fresh Story」

Sarah Jacobs

Jet.com —— ウォルマートが2016年に30億ドル(約3400億円)で買収したオンライン小売業者 —— は現在、実店舗でも商品を販売する。5月10日から6月18日までの期間限定で、食べ物をテーマにしたコンセプトショップがマンハッタンにオープンした。職人技の光るアクセサリーや料理本、キッチン雑貨が展示販売される。トマトから作られたフェイスマスクや、ケール味のチョコレート、アイスクリームのイラストがプリントされた靴下やバナナ形のフラスコなど、ユニークなアイテムが揃う。

Jet.comは「Story」を通じて実店舗での販売を行う。創業5年目の小売販売スペースStoryでは、商品や店内のレイアウト、イベントのプログラムがスポンサーによって毎月変わる。この6週間のスポンサーはJet.comであり、店舗にあるほとんどの商品はオンラインでも購入可能だ。この期間限定店舗の目的は、Jet.comの食料品配達サービスへの認知度を高めることだと、Jet.comのマーケティング担当部長スマイヤ・バルベール(Sumaiya Balbale)氏はBusiness Insiderに語る。

アメリカ国内でモールに出店する何千もの小売店が閉鎖する中、定期的に変化し、インタラクティブなイベントを実施する店舗形態は、小売業の店舗販売の未来を示す、と彼女は言う。

「小売業は急速に進化している。テクノロジーによって、さまざまな方法で購買が可能になり、小売業者も顧客ニーズを満たすためにやり方を変えている。これはワクワクする実験だ。人々の消費行動は型通りではないし、それを新しく形作る機会はたくさんある」(バルベール氏)

アマゾンのライバルとして広く認識されているJet.comは、ウォルマートのEコマース担当幹部を務めているマーク・ロアー(Marc Lore)氏によって2014年に創業された。今回、Jet.comはStoryを通じて、オンライン小売業で初めて、実店舗で商品を販売する。

実際に売り場を見てみよう。


5月10日、Jet.comはマンハッタンの西側に位置する2000平方フィート(約186平方メートル)の店舗にFresh Storyをオープン。6週間にわたって商品の展示販売を行う。

Jet.comの実店舗販売がオープン(5月10日)

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販売スペースは、ギャラリーのように3週間から8週間ごとに変わる。Storyはコンサルタントのレイチェル・シェヒトマン(Rachel Shechtman)氏が2012年に創業した。

Storyの創業者、レイチェル・シェヒトマン氏。

Storyの創業者、レイチェル・シェヒトマン氏。

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過去のスポンサーには、アメリカンエキスプレスやアメリカのテレビドラマシリーズ「Mr. Robot」、ゼネラル・エレクトリック(GE)など。現在までに34の「story」が生まれた。

Jet.comの展示のため、店内の床には人工芝が敷かれている。

人工芝が敷かれた、Story店内。

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人工芝は壁にも。こするとチェリーの香りがする壁紙も貼ってある。

壁には、人工芝とこするとチェリーの香りがする壁紙が貼られている。

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店内には食べ物がテーマの商品がズラリ。例えば、スイカの形の財布や靴下。

スイカの形をした様々な商品

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テーブルや棚には、商品が食べ物ごとに並べられており、無料の新鮮なフルーツが横に置いてあることも。

テーブルに並べられた、オレンジをモチーフにした商品の数々。

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「フレッシュストアだから、偽物のフルーツは置かないの」と、シェヒトマン氏。

配送に使用される箱が、床から天井までディスプレイされた一画もある。配送のイメージをより鮮明にさせるためだ。

配送ボックスも展示されている。

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「食料品の配達は、我々がまさに注目し、革新したい分野だ」と、バルベール氏は言う。

テーブルに並べられた、食料雑貨。

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シェヒトマン氏のチームが選ぶ商品は、とてもユニークなものばかり。

アイスクリームをモチーフにした商品。

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アクセサリーからキッチン雑貨に至るまで、680アイテムの平均価格は38ドル(約4300円)。

スイカをモチーフにした商品が並べられたテーブル。

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最も手頃な商品は、5ドル(約570円)の草のペン。

草をモチーフにしたペン(5ドル)

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一方、最も高価な商品は、シリコンバレー発で有名な「June Oven」。人工知能(AI)が搭載されたスマートオーブンで、価格は1500ドル(約17万円)。

スマートオーブン「June Oven」

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バナナがモチーフのクラッチバッグやサンダルは、それぞれ1095ドル(約12万5000円) と795ドル(約9万円)。バナナ柄のノートやフラスコなども一緒に並んでいる。

バナナをモチーフにした、クラッチバッグやサンダル。

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顧客は気づかないかもしれないが、店内には顧客の動きを追跡するヒートマップ技術が採用されている。特定の売り場が、顧客を惹きつけられないとシステムに認識された場合、スタッフはその売り場のディスプレイを並べ替えることもできる。

イチゴのモチーフの商品。

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また、店内でのイベント開催も予定している。DJライブ付きのハッピーアワーや子ども向けの料理教室、有名シェフのマリオ・バターリ(Mario Batali)氏やメイクアップ・アーティストのボビー・ブラウン(Bobbi Brown)氏を迎えてのフリートークなど。

有名シェフのマリオ・バターリ氏を迎えるなど、店内では多くのイベントを開催する予定。

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「コミュニティとエンターテイメントの融合になるだろう」(シェヒトマン氏)

この店は、顧客とJet.comを現実につなぐ手段になる。「オフラインの人もオンラインの人も同じ。人々は現実世界でのつながりを強く求めている」とシェヒトマン氏はBusiness Insiderに語る。

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商品

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Jet.comが期間限定の店舗をオープンした目的は、食料品配達サービスだけでなく、よりニッチで職人技の光る商品の認知度を高めるためだ、とバルベール氏。

レモンをモチーフにした商品の数々

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「顧客は日用品や食料品を買うのに慣れている。ただ、Jet.comではいつも購入するトロピカーナと一緒に専門店のチーズも買うことができる。顧客が想像する以上に、さまざまな商品を幅広く提供することができる」(バルベール氏)

テーブルに並べられた、数々の生活雑貨

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ハッピーアワーや有名人によるフリートークはある意味、イマドキではあるが、顧客と店との交流において、新しいコンセプトとは言えない。

野菜をテーマにした雑貨コーナー

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早ければ19世紀半ばには、小売業者はクリスマスのディスプレイや有名作家の朗読会のようなイベントを、商品を売り出す方法として使っていた。StoryとJet.comが開催する、アルコール入りのアイスクリームやカクテル、DJによるライブイベントは、そのコンセプトの21世紀版と言えるだろう。

売場の様子

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多くの大規模小売店は、顧客を長く店に滞在させる(そして理想は、より多くの商品を購入してもらう)ためにソーシャルイベントを実施し始めている。 2015年、アメリカの大手書店チェーンのバーンズ・アンド・ノーブル(Barnes and Noble)は、コスプレイヤーのオフ会や「throwback Thursdays」(主にInstagramの#ハッシュタグのトレンド)の一環として、1950年代のフラフープコンテストの内容を含んだ、年刊の「Get Pop Cultured」シリーズを発行した。

ただ何が斬新かと言えば、Story全体のインテリアや店のテーマが、ほぼ毎月変わることだ。Storyは自身をポップアップストアとは位置づけていないが(常設店舗のため)、期間限定の小売店は近年トレンドとして増えつつある。

Jet.comの売り場の一画

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21世紀での生き残りをかけて、オンライン小売業との競争はやむを得ない。絶え間なく変化する小売戦略は、実店舗を救うのかもしれない。

ディスプレイされた「Story」の看板

Storyの店舗はマンハッタンの10番街、南東部の19番通り144にある。

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[原文:The company that Walmart bought for $3 billion just opened the 'grocery shop concept of the future' in NYC — here's what it's like]

(翻訳:Kamada Satoko)

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