KDDI田中社長、営業利益9130億円で好調も冷静「終わってみると好決算」

KDDIは11日、2017年3月期決算(2016年4月〜3月)を発表した。売上高は前年同期比6.3%増の4兆7483億円。営業利益は9130億円で、前年同期から9.7%増加した。

KDDI田中孝司社長

決算会見で壇上に立つKDDI田中孝司代表取締役社長

撮影:中西亮介

KDDIの田中孝司代表取締役社長は増益の要因の1つとして、モバイル通信量収入の拡大が牽引していると説明。決算資料によると、モバイル通信量収入は308億円(前年比1.8%)増だが、内訳として、減少を続けているau契約者数推移がありながら、特に「(格安SIMを展開する)MVNOの拡大が増収を牽引している」とコメントした。au契約者数の減少には、総務省の指導によるキャッシュバックの禁止の影響によって、大手キャリア間でのユーザーの流動性が低下している状況がある。

営業利益の増減を表した図

モバイル通信量収入は308億円増だった。

図:KDDI

こうした田中社長の発言以外にも、いわゆるau契約者数の数字だけを追う「純増」主義から離れ、MVNO事業も含めた状況を今後の成長指標に組み入れていこうというのがKDDIの方針だ。

決算発表の中で言及した「モバイルID数」というものがその指標で、前回の2016年度第3四半期決算から取り入れ始めた。モバイルID数とは、au回線の契約者数とMVNO契約数を合計したもの。決算資料によると、16年6月から同12月にかけては、au契約者数の減少をMVNO契約数増がカバーする形で推移したが、その後17年3月時にはMVNO契約数がau契約者数の減少を上回り、モバイルID数が上昇に転じた。

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KDDIのモバイルID数の推移

図:KDDI

KDDIでは今後もモバイルID数の拡大を図っていく方針で、目標としてUQmobileにてMVNO市場で30%のシェア獲得を目指していくという。「MVNOの普及が進んでいる市場環境に対応して、変革を加速させていく」(田中社長)という言葉には、MVNO市場に2017年度も積極的に取り組んでいく決意が強くにじむ。

KDDIの将来の大きなビジョンとしては、モバイル通信企業からライフスタイルデザイン企業への変革を目指す。このビジョンの中で印象深いのは、「今後もライフデザイン事業の強化に向け、M&Aを含めた成長投資を進めていく所存」(田中社長)と企業買収の可能性に言及したことだ。

KDDIは近年、異業種のM&Aを積極的に行なっている。14年8月には、ポップカルチャー情報サイト「ナタリー」を運営するナターシャの株式90%を取得し同社を連結子会社化。また今年2月にも、旅館やホテルの宿泊予約サービス「Relux」を運営するLoco Partnersの株式の過半数を取得し、同じく連結子会社化すると発表した。好調な通信企業としての財務状況を武器に、積極的に新しい領域に攻め入り新たな事業基盤を確立しようという構えだ。

ちょうどこの前日、最終利益1.4兆円の決算発表をおこなったソフトバンクグループの孫正義CEOは終始上機嫌で絶好調をアピールした。KDDIも昨年比で10%近い増益であり営業利益1兆円に手が届く好決算だが、田中社長の受け止め方は対照的なほど冷静だ。決算発表の終盤、報道陣からの「好決算だと思うが、どう受け止めているか」との質問には、一言、こう答えた。「終わってみると好決算ということで、その通りだと思う」。

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