イングランド銀行のカーニー総裁。2017年5月11日、ロンドンで開かれたインフレ報告発表会にて。
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イギリスの中央銀行であるイングランド銀行のマーク・カーニー総裁は5月11日(現地時間)、インフレの進展による消費の減速が本格的に始まったと述べた。
イギリスのEU離脱(ブレグジット)を決定づけた国民投票以来、専門家らは消費が急激に減速する可能性に警鐘を鳴らしてきた。EU離脱によるインフレは、衣類や外食などの生活必需品以外の支出に影響を及ぼし始めている。
四半期インフレ報告書の発表後に行われた記者会見で、カーニー総裁は消費減速を公式に認め、次のように述べた。
「EU離脱に対する金融市場と家計の反応には、これまで温度差があった。2月の時点で、金融政策委員会(MPC)は、家計の消費意欲の強さと、相対的に悲観的な金融市場の開きは、今年中に縮小していくと見ていた。今まさにそのプロセスが始まった。賃金上昇率の鈍化と、インフレの進行により、家計支出とGDPの成長が著しく減速している」
多くのイギリス国民は、インフレが賃金の上昇を上回っていることを危機的な状況と考え始めている。生活必需品の価格上昇が進んでいるため、嗜好品や贅沢品などへの支出を控えるようになっている。
最新のデータでは、インフレ率が2.3%に達した一方で、賃金上昇率は2.2%にとどまった。
国民に安心感を与えるように、カーニー総裁はイングランド銀行は消費の減速と賃金上昇の鈍化が長期間続くとは考えていないと述べた。
「賃金上昇を抑え込んでいる要因は、長くは続かないだろう。MPCの予測では、需要と供給のギャップが小さくなり、最終的には解消されていくにつれて、賃金は大きく上昇する見込みだ」と述べた。
先日、イングランド銀行は金利を過去最低の0.25%に据え置き、量的緩和策を継続するとした。さらに2017年のGDP成長率を若干下方修正し、2%(2月時点の予測)から1.9%(5月時点の予測)に引き下げた。
「MPCとしては、消費の伸びは短期的には鈍化すると見ている。実質所得の上昇による消費の回復時期も、期待されていた今年後半よりも遅れるだろう」と5月のインフレ・レポートに記されていた。
2018年について、イングランド銀行は成長予測を若干上方修正し、1.6%から1.7%に引き上げた。2019年の成長率についても、1.7%から1.8%に修正している。
[原文:CARNEY: The Brexit-triggered consumer slowdown has begun]
(翻訳:原口 昇平)