1140億円調達の中国版テスラ、その侮れない実力 —— EV自動車メーカーNioが目指す破壊的イノベーション

・元Ciscoの役員だったパッドマスリー・ウォーリアー(Padmasree Warrior)氏は、中国を拠点に電気自動車の開発を行っているベンチャー企業Nio社のアメリカ支社のCEOに就任した。

・Nio社はコネクテッドカー(常時インターネットに接続している自動車)に焦点を絞ることにより、アップルが携帯電話業界にもたらした革命的な変化を自動車業界にもたらすと、ウォーリアー氏は言う。

・Nio社は2020年にアメリカ市場で自動運転機能を搭載した電気自動車をリリースする予定だ。

Nioが開発する中国市場向け電気SUV「ES8」

Nioが開発する中国市場向け電気SUV「ES8」

Reuters/Aly Song

自動運転市場のシェアを狙っているのはもちろんNio社だけではない。

中国に拠点を置くベンチャーのNio社は、カリフォルニア州サンノゼにアメリカ支社を持っており、テンセントや百度(Baidu)、セコイア・キャピタル、レノボなどから10億ドル(約1140億円)もの出資を受けている。自動運転の技術において、フォードやゼネラルモーターズなどの大手と競争を繰り広げるだけでなく、電気自動車業界で幅を利かせるテスラとも競合する。

Nio社はまず、JACモーターズと製造提携のある中国市場で一戦交えるつもりだ。電気SUVであるNio ES8を2018年に中国で発表する。詳細は公表されていないが、7人乗りのモデルはテスラ同様、レベル2の自動運転である。だが、SUVの自動運転機能はNio社が思い描くアメリカ市場でのサクセスストーリーの中で重要な役割を担うことになる。

Nio社は中国製のSUVからデータを収集し、レベル4の完全電気自動車用ソフトウェアを開発していく。これはテスラの戦略と同じだ。Nio社の自動運転チームを統括するのはジェイミー・カールソン氏。アップルが極秘で進めていると言われる自動車プロジェクトにおいても経験があり、前職はテスラのオートパイロットプロジェクトに参加していたエンジニアだ。

完全自動運転を搭載したNio社の車は2020年にアメリカ市場に登場する。そしてその指揮を執るのは、テクノロジー業界で今、最もパワフルな女性の1人とされるCEOのウォーリアー氏だ。

手本はアップル

ウォーリアー氏と言えば、Ciscoの元CTO兼CSO(最高戦略責任者)だった人物だ。2015年の再編成でチャック・ロビンズ氏がCEOに就任した際に、Ciscoを退社した。

Cisco在籍の8年間、ウォーリアー氏は定期的にプレゼンテーションを行い、会社の顔として貢献してきた。彼女のキャリアはモトローラから始まり、23年間働いた後、CTOの座に就いた。

Nio US CEO パッドマスリー・ウォーリアー(Padmasree Warrior)氏

Nio US CEO パッドマスリー・ウォーリアー(Padmasree Warrior)氏

Bloomberg

モバイル業界でのバックグラウンドは、Nio社が今後アメリカ市場においてコネクテッドカーで競争をしていく上で大きな鍵を握ると、ウォーリアー氏はBusiness Insiderに語った。

「現在の自動車の問題点はスマートフォンのインターフェースや機能性を車に搭載しようとしていることだ。しかしスマートフォンはただの高性能携帯電話ではなく、根本的に全く違うデバイスだ」と同氏は言う。「我々は次の世代のモバイルスペースを構築する最初の会社でありたい」

Nio社が開発しているのは「移動をも担ってくれる生活空間」だ、とウォーリアー氏は言う。車が自ら運転してくれるのであれば、眠ることや映画を観ること、電話会議に出席することが、快適でハイテクなエコシステム内で可能となる。

Nio社が開発を計画するのは、iPhoneのSiriのような人工知能(AI)アシスタント・システムで、自動車としての機能性だけでなく居住空間の制御をもアシストするというもの。

今年のSXSWでデビューを飾ったNio社のコンセプトカーには、大型ディスプレイとリクライニングシートが搭載されていた。この車が2020年に発売予定のモデルのベースとなる。

SXSWで出展されたNio社のコンセプトカー

SXSWで出展されたNio社のコンセプトカー

NIO

当然、Nioのビジョン自体に目新しさはない。BMWもリクライニングシートやフラットスクリーンTVを搭載したコンセプトカーを開発し、自動運転の普及により、自動車がリビングルームのように進化していくであろう、という方向性を示している。ある企業はすでに、リビングルームの延長という概念の車作りに踏み切っている。例えばフォードは、アマゾンのAlexaとつながった乗用車を発表している。

しかし、自動車メーカーは真のデジタルエコシステムを構築する能力において不利な立場にある、とウォーリアー氏は言う。既存の製造業者やサプライチェーンとの関係性が逆に足かせとなっているというのだ。

ウォーリアー氏の考えはあながち間違っているとは言い難い。車内のナビゲーションシステムやエンターテインメントシステムの今日までの成長を、自動車業界がけん引してきたわけではない。どちらかというと苦手とする分野だった。

「携帯電話業界で学んできたことを思い返すと、結果的にスマートフォンを生み出したのはアップルで、市場で75年、80年間存続してきた既存の携帯電話メーカーではなかった」とウォーリアー氏は言う。

調査機関J.D. Powerが2016年に行った調査によると、車の所有者の50%が購入から90日以内で車載インフォテインメイント(編集部注:インフォメーションとエンターテインメントが融合したもの)の使用をやめている、と回答している。また、17カ国で2万2000人を対象にDeloitteが行った調査では、この傾向は恐らく変わらないであろうとされている。

自動車メーカーが車での体験を全く新しいものにしようとするのであれば、これまで彼らが作り上げてきたルールブックを破り捨て、もう一度ゼロから始めなくてはならない。

「そういう意味では新規参入者の方が、根本的に自動車のデザインを変化させ、全く違うものを生み出す可能性が高いだろう」とウォーリアー氏は語る。

テスラと競う

Nio社は開発において「インサイドアウト」アプローチを取るつもりでいるが、同時にデジタルの領域にとどまらないイノベーションを引き起こそうとしている。例えば、充電方法がその1つだ。

SXSWで発表されたコンセプトカーのインテリア

SXSWで発表されたコンセプトカーのインテリア

NIO

「自動運転が実現すれば、ワイヤレス充電などの重要性が増してくる。それも我々は視野に入れている」と彼女は言う。

これは交換可能なバッテリーを搭載した中国で発売される電気自動車SUVにおけるNioのビジョンとも合致する。

Nio社は自動車の航続距離に関して明らかにしていないが、今日の長距離走行可能モデルと同等にはなるだろうとしている。つまり、少なくとも250マイル(約400キロ)の移動が可能なシボレーのボルトや、テスラのハイエンドモデルと競合することを意味している。

Nio社は現在、カリフォルニア州で自動運転テストを続けており、サンノゼでは320人の従業員がこのプロジェクトに関与している。Nio社の車には主となる部分だが非常に高価なセンサーシステムであるLIDAR(ライダー)が採用されるが、どこのサプライヤーと提携しているかについては明らかにされていない。

2020年に発売される際の金額は、10万ドル以下になるとされている。

自動運転においてはWaymoやフォード、ゼネラルモーターズ、Uberなどとのし烈な競争が予測される。また電気自動車では、中国展開を行うテスラや、Nioと類似したデジタル戦略を掲げているLucid Motorsなどと競合する。

しかし、自動運転車の車内空間へのフォーカスだけでなく、他社がライドシェアやカーシェアリングに尽力する間に、直接消費者に販売するというビジネスモデルの活用という点においても、同社の差別化は図れるだろう、とウォーリアー氏は話す。

「運転によって奪われた時間を人間は取り戻すべきだ」ウォーリアー氏は言う。「我々が描く車のビジョンは、”コンピュータを搭載した車輪”だ」 [原文:The CEO of an electric vehicle startup said she's making the iPhone of cars — here's her plan]

(翻訳:まいるす・ゑびす)

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