女子ゴルフ最後の1枠はTwitter投票で ソーシャル活用で生まれる画期的効果とは

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Hunter Martin/Getty Images

これまで多くの若手選手にチャンスを与えてきたショップライトLPGAクラシックが、ゴルフ界初の試みとなるTwitterでのファン投票で最後の出場枠を決めるという企画を打ち出した。ソーシャルメディア上での企画は女子ゴルフ界にどんな影響を与えるのだろうか?

ソーシャルメディアで絶大な人気を誇る4人

5月29日からニュージャージー州で開催されるショップライトLPGAクラシックは出場選手の最後の1枠を決めるのに、画期的な手段を選択した。主催者推薦枠の最後の1つは、Twitterによる投票を行い、最多票を獲得した選手に与えるというものだ。

大会運営側はスポーツ関連のソーシャルメディアをトラッキングするMVPインディックス社と組むことで、出場権を獲得していない選手の中からソーシャルメディアで人気を誇る女子選手を選出した。

ブレア・オニールの写真

ブレア・オニール。ゴルフ専用チャンネルのホストも務める

Kent Horner/Getty Images

投票の対象になったのは、ゴルフ専用チャンネルのホストを務めるブレア・オニール、インドのスター選手であるサミラ・二コレット、スコットランド出身でヨーロッパツアーに出場しているカーリー・ブース、そしてボリビア出身唯一のLPGA選手スサナ・ベナビデス(Susana Benavides)。

サミラ・二コレットの写真

インドのスター選手であるサミラ・二コレット

Stuart Franklin/Getty Images

オニールはLPGAの下部ツアーであるシメトラツアーに75試合以上出場した経験を持つ。二コレットはインド出身の選手としては、欧州女子ゴルフツアーの出場権を最年少で得ている。プロとしてもすでに11勝をマーク。ブースも欧州女子ゴルフツアーでは2勝あげており、17歳の時に最年少女子ゴルファーとしてツアーに初出場した。ベナビデスは名門オハイオ州立大学でゴルフをプレーし、卒業後にシメトラツアーに参加している。彼女たち4人はソーシャルメディア上で多くのフォロワーから人気を得ている。

ファンエンゲージメントを追及し続ける女子ゴルフ界

ショップライトLPGAクラシックは、現在ツアーで活躍する選手たちのキャリアがまだ浅かった時に主催者推薦枠を与えてきた。今シーズン賞金ランキング4位のレクシー・トンプソン、22位のブルック・ヘンダーソン、そしてツアー通算12勝をあげているポーラ・クリーマーに推薦枠を与え、これまでも大会に活気をもたらしてきた。

クリーマーは以前大会に出場する際に「この大会は私にとって常に特別であり続けている」と語っている。2004年にまだ17歳だったクリーマーは主催者推薦枠での出場権を得て、LPGA史上最年少での優勝を勝ち取るまでもう一歩、というところで大会を2位タイで終えた。

今では世界トップ女子ゴルファーの仲間入りをしたトンプソンもプロ転向後、初めて出場したのがこのショップライトLPGAクラシックだった。残念ながら予選通過とはならなかったが、15歳のプロデビューは多くの注目を集めた。

ゴルフの大会としては史上初の試みとなる、ファンエンゲージメントを意識して選手に出場枠を与える企画。実力とは別に、人気投票で同じフィールドに出場権のなかった選手が立つことには賛否両論があった。

だが、結果的に最後の1人を投票で選出することは大きな話題となり、今までLPGAに興味を持っていなかった多くの人を巻き込むことになった。大会全体に与える影響は図りしれない。

インド人としてのアイデンティティー訴え

選挙で候補者が駅前で演説をしたり選挙カーで一票を獲得するために1日じゅう街を走り回ったりするのは、日本独特の“当たり前”な光景となっている。

少ないターゲットに対して投票を促す活動としては効果的かもしれないが、LPGAの大会出場枠を勝ち取る投票のために選手が世界中を飛び回っていれば体がいくつあっても足りない。では一体どのような戦略を打ち立てて、票を獲得したのだろうか?

出場枠を勝ち取ったサミラ・二コレットはTwitterで自らの思い、そしてインド出身というアイデンティティーを訴え続けた。インドの国旗と共に写る姿を投稿し、LPGAツアーの常連になることが夢であると呟く。約12億人以上の人口が住むと推移されているインド人としてのアイデンティティーを全面に押し出すのは、効果的な戦略であることは間違いない。人口の何割がTwitterアカウントを持っているかは分からないが、母国出身の選手が世界の舞台に立つためなら力になりたいと思う国民は多いはずだ。

NBAでもオールスターのスタメン出場選手はファン投票によって選出されるが、中国出身のヤオ・ミンが現役時代の頃は凄まじい中国での人気を票数に変えていた。後半に「#GetSharmilaTOLPGA」というソーシャルメディア上のキャンペーンを打ち出すことも票数を増やすきっかけとなった。

惜しくも出場権の獲得には至らなかったが、カーリー・ブースはTwitter上で投票を促すメッセージと共に興味を引く動画もアップしていた。ゴルフ界以外のアスリートからも応援され、他競技のファンへも広がった。元マンチェスター・ユナイテッドのフィル・ネビルやラグビーイギリス代表でキャプテンを務めた経歴のあるマイク・ティンダルがTwitterでブースへの一票を呼びかけた。

最後の出場枠をソーシャルメディアの投票で決めることは、大会だけではなくLPGA全体が世界中に露出する効果を生んだ。結果的には合計2万7652票が投じられ、約90カ国の人々から投票が行われた。

どのスポーツでも世界一を目指すためには、実力でその権利を勝ち取っていくべきなのかもしれない。だがプロスポーツも興行である以上は、今回の試みのように新たなファン層を開拓することも必要だったのではないだろうか。

そして、これまでトンプソンやクリーマーという若い選手たちにチャンスを与えてきたように、新たな扉を開けてあげることで、その選手たちが成長した時に何倍もの利益をもたらしてくれることになるかもしれない。


新川諒:オハイオ州のBaldwin-Wallace大学でスポーツマネージメントを専攻し、在学時にクリーブランド・インディアンズで広報部インターン兼通訳として2年間勤務。その後ボストン・レッドソックス、ミネソタ・ツインズ、シカゴ・カブスで5年間日本人選手の通訳を担当。2015年からフリーとなり、通訳・翻訳者・ライターとして活動中。

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