35歳未満が家を買えるかどうかに「収入」は無関係:イギリスは2つの階層に分裂

  • 不動産市場において、イギリスは2つの階層に分裂している。1つは、自分の家を所有している富裕層。もう1つは家を借りるために、所得に対する割合にすると富裕層よりも2倍も家賃を支払っている、35歳未満の若者たち。
  • この分裂は最近の出来事だ。政府のデータによると、10年前は、35歳未満の若者の過半数が自分の家を所有していた。
  • 現在、35歳未満の若者の大多数は賃貸住宅に住んでいる。実際、イギリスの借家人の半数は35歳未満だ。
  • 所得に対する住宅ローンの比率は、2007年の不動産ブームのピーク時よりも現在のほうが高くなっている。

ホームレスの男性

ホームレスシェルターに佇む男性。イギリスでは分裂が進んでいる。

Oli Scarff/GettyImages

一見すると、下のグラフはイギリスにとって良いニュースのように見える。

長期的に見ると、70年代、80年代よりも多くの「64%」の人が自分が所有する家に住んでいる(グラフの青色)。そして、公的住宅(家賃補助を受けたり、行政機関が運営している住宅)に住んでいる人は、1953年以来なかったほど低い水準の、わずか「17%」だ(グラフの緑色)。

これはイギリスの多くの人にとっては生活の改善を意味していると言える。公的住宅から、自分の家に移行しつつあるのだから。バンザイ! ことわざにあるように、今や、以前より多くのイギリス人にとって、家は自分たちの「城」なのだ。

だが、本当は違う。実際に何が起こっているのか説明しよう。

持ち家、借家の推移のグラフ

このグラフはモルガン・スタンレーが作成したもので、誤解を招く意図などなかったことは明らかだ。

Morgan Stanley

このグラフは、青色と黄色の「内部」で何が起こっているかを知って、はじめて本当の意味が分かる。データの出どころは、今年3月に発表された政府の住宅調査(EHS)だ。つまり、自分が所有する不動産に住んでいる「64%」の人、そして民間の賃貸物件に住んでいる「19%」の人、このグループの中で新たな傾向が出現している。

  • 不動産所有者の大多数は、完全な所有権を有している。:全世帯の34%が完全な所有者である一方、29%がまだ住宅ローンを返済している。
  • 家賃を支払っている人の半数は、35歳未満。:借家人の46%が35歳未満で、EHSによると、2006年の2倍近くの水準だ。

家に対する支払いは、完全な所有者はもちろんゼロ。住宅ローンを抱えている人は収入の「18%」を返済に費やしている。しかしその一方で、民間物件の借家人は収入の「35%」も家賃に費やしている。収入に対する割合は、住宅ローンを返済している人のほぼ2倍にもなっている。

簡潔に言うと、公的住宅の割合が縮小するにつれて、不動産市場はイギリス人を2つの階層に分裂させている。自分自身の家を所有できる富裕層と、民間市場で賃貸物件を借りるために富裕層よりも所得に対する割合にすると「2倍の家賃」を支払っている35歳未満の若者層とに。

この傾向は最近のことだ。10年前、この国はもっと平等だった。EHSの調査によると、35歳未満の人々の過半数(53%)が不動産を所有していた。

富の不平等が進行していることは、だれが家を所有しているかについての、下記のグラフを見れば分かる。購入者の40%近くは所得の上位5分の1の階層に属している。所得階層の中央に属する人たちの割合は、その半分程度しかない。所得階層の下位5分の2に属する人たちが購入者に占める割合は10%に満たない。

家の購入者における所得階層の割合グラフ

English Housing Survey

もちろん、富裕層が不動産を所有する可能性が高いことは驚くべきことではない。しかし、この分裂は、イギリスの不動産価格が所得と比較して、過去のどの時期においてよりも高価になった時期に発生した。モルガン・スタンレーのアナリスト、クリストファー・フリーマントル(Christopher Fremantle)氏によるグラフ(下記)を見てほしい。現在の不動産価格対所得比は、2007年の不動産バブルのピークをはるかに上回っている。

イギリスの不動産価格の推移

Morgan Stanley

要するに、住宅価格が高くなってしまったので、時間が経てば経つほど、借家人から家の所有者になるためのハードルはどんどん高くなっている。

1990年代後半には、所得の約「2.5倍」の住宅ローンで家を購入することができた。現在では、平均的な住宅ローンは収入の「3.5倍」だ。

熱心に働き、才能を身につけ、きちんとお金を管理していけば、時間の経過とともに富と財産を築くことができるだろう ―― これがイギリスでは当たり前の話とされてきた。はしごの一番下の段(つまり、第1歩目)が、誰にでも開かれていることは重要なことだ。しかし、新しいデータによれば、普通に仕事をしているだけでは、はしごの一番下の段にも届かなくなっている。

だからこそBOMAD(the Bank of Mum and Dad、つまり親の財産)が、突然、大きな注目を集めているのだ。親からの資金を使った不動産ローン(モーゲージ・キャッシュ・デポジット・レンディング)は、今やヨークシャー・ビルディング・ソサエティ(イギリス第9位の不動産ローン会社)の規模に相当する。毎年、770億ポンド(950億ドル)の不動産取引がBOMAD(親の財産)で行われている。

家が買えるかどうかは、もはやあなたの収入の問題ではない(最後のグラフが示すように、あなたの収入では、もう足りないのだ!)。あなたの家族がすでに家を所有しているか、あなたに頭金を与えることができるくらい、富裕かどうかだ。

[原文:Britain is being split into two classes: Those rich enough to own their own homes and those under 35, who pay twice the percentage of their incomes in rent

(翻訳:竹田さをり)

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