児童を指導する教員。サンフランシスコのミッション地区にあるブライトワークス小学校にて。
Melia Robinson/Tech Insider
サンフランシスコの家賃は、カリフォルニア州の中で最も高い。にもかかわらず同市の教員の給料は、州内でも最低レベル ―― そんな調査結果が2016年、地元紙サンフランシスコ・クロニクルに掲載された。
サンフランシスコ市は、同市初となる教員向け住宅開発に4400万ドル(約50億円)を投入し、市内の公立学校に勤務する教員が市内で暮らせるよう取り組みを進めている。
エド・リー(Ed Lee)市長は、アウターサンセット地区に、教員向け賃貸住宅として130~150棟を建設する。教員は周辺相場よりも安く住宅を借りることができる見通しで、入居開始時期は2022年の予定だとサンフランシスコ・クロニクルは報じた。
市の発表に先立ち、同紙はホームレス生活を送りながら、市内の公立高校で数学教員を務めるエトリア・チークス(Etoria Cheeks)氏の記事を掲載した。修士号を持つ彼女は、およそ6万5000ドル(約730万円)の年収があるにもかかわらず、昨年12月、入居していた物件を差し押さえられ、住む場所を失った。それ以来、簡易宿泊所やホームレス・シェルター、退職した教員の家などを転々としている。
サンフランシスコ市内の単身者用物件の平均家賃は、月3300ドル(約37万円)を上回る。不動産検索サイトRent Jungleによると、平均家賃はここ6カ月間上がり続けている。
チークス氏のように、教員は窮地に立たされている。他人の家の狭い一室を借りて住む教員や、(空き時間に)Uberの運転手になる教員、はるかイーストベイ地区から通勤する教員もいるとサンフランシスコ・クロニクルは報じている。
市長による今回のプロジェクトを進展させるには、市内の学区および教育委員会からの支援が必要だ。
サンフランシスコ市内の単身者用物件の平均家賃は、月3300ドル(約37万円)を上回る。
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ただ、問題はサンフランシスコに限られたものではない。ロサンゼルス、ウィスコンシン州ミルウォーキー、ノースカロライナ州アシュビルなど複数の地域で、教員の定住支援のために住宅が建てられてきた。しかしその規模は多くの場合不十分で、希望者全員が入居できるわけではない。
ロサンゼルスの公立学校の学区内には、相場より安く借りられる教職員向け集合住宅が3棟建てられた。州内で最も多い数だ。だが、ここの入居者に教員は1人もいない。教員は法に定められた入居基準を上回る給料を受け取っているため、入居者は食堂の従業員やスクールバスの運転手など、より所得の低い、学校職員となっている。
たびたび報道されるニュージャージー州ニューアーク市の多目的施設は、いわば学校を教員の近くに持ってきた形だ。このプロジェクトでは、3つのチャータースクール(公的資金の援助を受けるが多くの法令の規制を受けない特別認可校)と6万5000平方フィート(約6040平方メートル)の店舗スペース、そして教育関係者に優先的に貸し出される住宅が200棟以上混在している。NJ.comによると、現在、教育関係者の居住スペース「Newark's Teachers Village」は半数以上が完成し、このうち70%で教員や他の教育関係者が暮らしている。
サンフランシスコの教員の住宅問題は、リー市長に言わせると、とっくに解決されていなければならない問題だ。「ホームレスの学校教員がいることに、私はみなさんと同じように困惑している」とリー市長はサンフランシスコ・クロニクルに語った。
[原文:San Francisco is so expensive, the city is spending $44 million so its teachers won't be homeless ]
(翻訳:まいるす・ゑびす)