劉延東副首相との会談に向かうアップルのCEOティム・クック氏。2015年5月12日、中国・北京にて。
REUTERS/China Daily
過熱する中国最大の時価総額を誇るインターネットサービス大手テンセントとアップルの「ビジネス上の戦い」に、中国政府が介入する可能性が出てきた。ウォール・ストリート・ジャーナルが18日(現地時間)報じた。
テンセントが開発したメッセージアプリ「ウィーチャット(微信)」は、中国国内で独占的なシェアを獲得し、その機能はメッセージ機能に留まらない。ユーザーは同アプリを使い、食べ物を注文したり、送金したり、ゲームを楽しむこともできる。
ウィーチャットには「チップ(tipping)」と呼ばれる機能がある。これはユーザーが誰かの投稿や写真を気に入ったら、アプリのアカウントからいくらかの中国元を送金できる機能だ。
先月、アップルはテンセントに対し、この「チップ」機能はアプリ内課金ではないかと指摘した。つまり、アプリ内課金に対し、30%の手数料を受け取るアップルは、同社がウィーチャットのチップ機能からも支払いを受ける権利があると考えているのだ。
これに対し、テンセント幹部は激怒している。
「我々はプラットフォームを無料で提供しているのに、アップルは何もせずに30%の手数料を得るのか」幹部の1人はウォール・ストリート・ジャーナルに語った。同社は中国の工業情報化部(Ministry of Industry and Information Technology)を含む政府の規制当局とも協議しているという。
テンセントはアップルの権威に屈しない力を持つ企業の1つだ。アップルは業績を伸ばし続けるため、中国市場でのiPhone人気を保たなくてはならない。
中国市場におけるアップルの2017年第1四半期の売上高は、前年同期比で14%減少した。これはアップルの業績が引き続き下降傾向にあることを示している。同社の2016年の中国での売上高は465億ドル(約5兆1700億円)で、前年に比べ約24%減少した。
テクノロジーアナリストのベン・トンプソン(Ben Thompson)氏は以前、アップルの中国市場における業績不調の原因の1つにウィーチャットがあると指摘した。
「(中国人にとって)ウィーチャットはスマートフォンを持つ意図や目的そのもので、中国ほどスマートフォンが全てという国はない。ウィーチャットはアンドロイド上でもiOSと同じように機能する。つまり、中国国民にとってiPhoneから他の機種に乗り替えたとしても何ら支障はないということだ。年初の報告書によると、他国とは極めて対照的に、2016年にデバイスの買い替えを行ったiPhoneユーザーのうち、Appleに留まったのはわずか50%だったが、それも当然のことだ」
アップルにとって、中国市場におけるウィーチャットの成長は必要不可欠だ。一方のウィーチャットは、アップルのApp Storeプラットフォーム上での特例扱いとルールを求めている。
これは近年最大のアメリカと中国のテック企業間争いになることだろう。
[原文:The opening shots have been fired in a battle between Apple and China's most valuable company (AAPL)]
(翻訳:Keitaro Imoto)