佐々木ベジ氏がソレキア株33.7%を取得 —— ホワイトナイトの富士通はTOB失敗

電子部品商社のソレキア(9867)の株式公開買付(TOB)を提案していた佐々木ベジ氏は5月24日、ソレキアの株式33.69%(議決権ベース)を取得すると発表した。佐々木氏の提案に対抗し、ソレキアの買収を試みた富士通はTOBを仕掛けたが不成立に終わった。今月30日には、佐々木氏がソレキアの筆頭株主となる。

機械メーカーのフリージア・マクロス(6343)の会長で「秋葉原の風雲児」との異名を持つ実業家の佐々木べジ氏と富士通(6702)による買収合戦は、今年2月に始まった。佐々木氏と富士通は、ソレキアの株式公開買付(TOB)をそれぞれ提案、買取価格を引き上げた結果、ソレキアの株価は以来2倍以上に跳ね上がった。

富士通の買付期間は5月22日に終了したが、応募株式の総数は35万7765株で、同社が設定した下限の44万5924を下回り、TOBは不成立となった。現在3%弱のソレキア株を保有する富士通は、TOBでソレキアの3分の2の株式を買収することを目論んだ。一方、佐々木氏によるTOB期間は23日に終了、佐々木氏の提案に応募した株主は株数ベースで28万5,499株だった。

ソレキアの株価は24日、前日の終値から7.9%下落。4305円で取引を終えた。

これまでの経緯を振り返る。

東証

撮影:今村拓馬

2月3日 —— 2,342円(ソレキア株価:終値ベース)

佐々木氏がソレキアへのTOB開始を宣言する

佐々木べジ氏は、伊豆諸島最南端の東京都青ヶ島の出身。Bloombergによると、高校卒業後に秋葉原で電気製品の販売店を開業。他店よりも安く売ったことで電気街から反発を受けながら事業を拡大し、「秋葉原の風雲児」と呼ばれるようになった実業家だ。1990年代から巨額買収を仕掛け、自己破産も経験。1991年に経営難に陥った谷藤機械工業(現在のフリージア・マクロス)を再生、その後経営が破たんした企業の買収を重ねた。

佐々木氏はソレキアに対して、「適正な株価水準を実現する」ことを目標として、発行済み株式の35.9%にあたる36万4700株を上限として、1株あたり2800円でTOBを行うことを提案した。事前にソレキアの取締役会から同意は得ていなかった(いわゆる敵対的買収)。

これを受け、ソレキアは約60年にわたりビジネス上のパートナー関係にあった富士通に、同社の株式取得の可能性について打診、協議を開始した。

3月10日 —— 2,768円

取締役会を開催したソレキアは、佐々木氏のTOB提案に対して、「企業価値の向上は見込めず、逆に毀損するおそれがある」と判断して、反対を表明した

3月16日 —— 2,730円

富士通が「ホワイトナイト」として現れる。ホワイトナイトとは、敵対的買収を仕掛けられた会社を、友好的に買収または合併する会社のこと。白馬の騎士になぞらえて、このように呼ばれている(野村証券)。

ソレキアが所有する自社株式を除く発行済み株式の全てを取得、同社の完全子会社化を目指し、44万6045株を下限として、1株あたり3500円でTOBを行うことを発表した

ソレキア(当時の小林電材)は1958年の設立当初から富士通の特約店となった、同社にとって最古参の販売代理店の1つ。直近5年間でのべ2500社に富士通の製品・サービスを販売していて、富士通は同社を「グループのビジネス基盤の一翼を担う重要な販売パートナー」と位置付けている。完全子会社化することで、従来の取引規模を維持するとともに、引き続き富士通グループのビジネスへの貢献が見込めるとした。

この提案に対し、ソレキアは富士通の子会社となることが、「より一層の企業価値向上につながる」として、富士通の提案への賛同を表明した

3月21日 —— 3,565円

佐々木氏、TOB価格を3700円に引き上げる。

3月29日 —— 3,750円

富士通、TOB価格を4000円に引き上げる。

3月31日 —— 4,150円

佐々木氏、TOB価格を4500円に引き上げる。

4月5日 —— 4,820円

富士通、TOB価格を5000円に引き上げる。

4月12日 —— 5,020円

佐々木氏、TOB価格を5300円に引き上げる。

4月21日 —— 5,400円

富士通、TOB価格の据え置きを発表。TOB期間の延長を発表。

4月25日 —— 5,160円

佐々木氏、TOB価格を5450円に引き上げる。

5月22日 —— 4,885円

富士通による買付期間の終了。富士通のTOBは不成立に終わる。

5月23日 —— 4,675円

佐々木氏による買付期間の終了。

5月24日 —— 4,305円

佐々木氏は、TOBでソレキアの28万5,499株を取得すると発表。2月から始まった買収合戦が終わる。

*この記事は株価を追加し更新しました。

(編集:佐藤茂)

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