ドコモ新料金「ドコモwith」を単なる値下げだと思うのは大間違いだ

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ドコモwithはまず、適用機種を「arrows Be」と「Galaxy Feel」の2機種に限定して実施される。

撮影:伊藤有

NTTドコモは5月24日、夏商戦に向けた新製品・新サービスの発表会を行った。なかでも、世間を驚かせたのは月額料金を1500円、ずっと値引きし続ける新料金プラン「ドコモwith」(6月1日より開始)の発表ではないか。

ドコモwithは今の所新製品となる富士通「arrows Be」とサムスン電子「Galaxy Feel」の2機種のみに提供されるプランだ。2年間の端末割引補助がなく、定価での購入が前提となるが、毎月1500円が割り引かれるようになる。家族3人で契約した場合、基本プランとspモード、パケットパックの合計が1人あたり平均2013円から利用できるようになるという(端末代金は別途必要、15年以上契約の場合)。

格安スマホ事業者やKDDIやソフトバンクのサブブランド(UQモバイルやワイモバイル)は2000円程度のプランを主力としていることから、それらに対抗できるだけの値付けを意識していることは明らかだ。

ドコモ2017夏モデル発表会のドコモwithのスライド

発表会の壇上で「arrows Be F-05J」と「Galaxy Feel SC-04J」を発表するドコモ吉澤社長。すでに予約は始まっている。


ドコモwithの料金プラン説明

ドコモwithの料金プランを説明する吉澤社長。これまではいわゆる2年縛りをベースとした料金設計が多く、長期契約ユーザーであるほどメリットが薄かった。この点の解消と、選択肢を増やすという方向、そして総務省タスクフォースへの回答をきちんと示すという意図があるようだ。

撮影:伊藤有

昨今、ユーザーが格安スマホやKDDIやソフトバンクのサブブランドに流出していることを考えると、「NTTドコモは闇雲に値下げをして、格安スマホ勢に対抗してきたのではないか」と見えがちだ。

しかし、吉澤和弘社長は否定する。「ワイモバイルやUQモバイルへの転出はあるが、セカンドブランド、MVNO対策は視野に入っておらず、既存のドコモユーザーに長く留まってもらうというのが基本的な狙い。長くドコモを使っていても料金面のメリットを受けていない人向け」だと語る。

つまり、2年目以降も割り引くと宣言することで、既存のドコモユーザーを長期間、囲い込みたいという狙いがあるようだ。さらに注意深く見ると、このプランは、単に既存のユーザーを囲い込むという目的だけではなく、同社の懐具合を改善する秘策になっている。

新料金プラン「ドコモwith」に隠された「収益改善の秘策」

ドコモwith対応端末第1弾 Galaxy Feel

ドコモwith対応端末第1弾 「Galaxy Feel」。ほぼ完全な日本向け新設計で、ミッドレンジ価格帯でも有機ELSuperAMOLEDディスプレイやワンセグなど装備に抜かりなしの仕様。バッテリーも3000mAhと大容量だ。

撮影:伊藤有

Glaxy Feelの背面

Galaxy Feelのカラバリがよくわかる背面。女子にターゲットを合わせたピンクも用意してきている。

撮影:伊藤有

ライバル関係にある大手キャリア関係者は「契約数が伸び悩み、ARPU(月間のユーザー一人あたりの収入)が下がる中、NTTドコモは端末に対する購入補助を減らすことで収益を確保しようとしている。ここ最近、ハイエンドよりもミドルクラスのスマホを強化しているのは、調達価格を下げるだけでなく、端末に対する購入補助の金額を減らしたいからに他ならない」と分析する。

今回の新プランは「2年間の端末補助は一切しない。しかし、毎月1500円、2年目以降も1500円を割引し続ける」という内容だ。

つまり、同じ機種を何年も使うというユーザーには、得になるプランといえる。例えば、iPhone7 32GBモデルの場合、NTTドコモは毎月2150円、24ヶ月で5万1600円(いずれも税抜)の端末補助という割引を行っていることになる。

裏を返せば、ユーザーが2年ごとに機種変更していれば、NTTドコモは2年ごとに5万円以上の割引を余儀なくされてしまうのだ。

これが新料金プランであれば、端末補助の割引はなく、毎月1500円を引くだけだ。2年間では3万6000円のみの負担であり、iPhone相当の機種を2年ごとに機種変更されるよりも、NTTドコモの負担は少なくて済む。

業績に与えるマイナス影響は数十億円規模

arrows Be

ドコモwith適用端末第1弾のもう一方、「arrows Be」。防水防塵、ワンセグ、電池もち3日以上などをうたう。

撮影:伊藤有

吉澤和弘社長は業績への影響について「(新プランは)収入は減るが、月月サポートというコストも減る。端末そのものは定価で買っていただくかたちとなり、当社が端末販売で得る粗利は少し小さくしている。そのあたりの差し引きがどのようになるか。ただ今年度は"数十億円規模の減収"を見込む」と語る。

NTTドコモとしては、いかに2年ごとに機種変更されるハイエンドモデルから、新料金プランに対応したモデルに移行してもらうかが重要となりそうだ。

今回の新料金プランに対応するサムスン電子の「Galaxy feel」は、画面サイズは4.7インチで幅が67mm、高さが138mmとなっている。実はこのサイズはiPhone7と全く同じサイズなのだ。

サムスン電子関係者は「日本市場に向けた製品を開発していくうちに、偶然、このサイズになっただけで、iPhoneを意識したわけではない」というが、「NTTドコモ社内ではiPhone対抗商品として位置づけられているようだ」(同)と内情を語る。

同じ32GBモデルの場合、iPhone7は一括で7万6200円、かたやGalaxy Feelは一括3万3600円だ。端末単体の売上高はさがるものの、割引額を大幅に節約できることを考えると、NTTドコモがiPhone7の対抗商品としてGalaxy Feelに注力したくなる気もわかる。

NTTドコモとしては、単にMVNOやサブブランドに対抗して、値下げをしてしまっては、収益にマイナスの影響しか与えず、それだけは避けたいのは間違いない。しかし、ユーザーから見れば「ドコモのスマホは高い。ガラケーからスマホにデビューするなら格安スマホや他社のサブブランドを選ぼう」という気になってくる。そのため、NTTドコモとしては、いかに収益にダメージを与えず「ドコモも値下げして安くしている」というメッセージを消費者に伝えるかが重要となる。

そこで、収益構造を少しでも改善するという意味で、端末の購入補助をなくしていく代わりに、月額1500円を値引くという手法が編み出されたようだ。

ただ、このプランは「端末を定価で購入する」というのが前提となるため、定価が10万円近くするiPhoneなどのハイエンド端末には不向きな設計となっている。しかし、今回発売されたエントリーモデルだけでなく、他社でSIMロック解除したスマホやSIMフリー端末、中古端末には最適なプランといえるだけに、NTTドコモがどこまで対応機種を拡大するが注目だ。

「端末の購入補助が経営負担になっている」というのは、NTTドコモに限らずほかのキャリアでも似たような状況がある。ドコモwithの発表を皮切りに、他キャリアがドコモに追随していく可能性もありそうだ。


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。

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