コンビニが出版社になる? セブン流「本づくりの極意」とは

セブン-イレブンの本棚

セブン-イレブンの中には、話題本の売り場を作って販促に取り組む店もある

提供:セブン-イレブン

全国約2万店のセブン-イレブン(以下セブン)でしか買えない本があることをご存知だろうか。

本をネットで注文して、お店で受け取る —— セブンはいま、通販サイトのセブンネットショッピングと実際の店舗の連携で、「街の本屋さん」戦略が本格化している。 実はこの「本屋さん」、フツーの書店ではない。セブンでしか買えないオリジナルの本・雑誌まで続々と作って出す、いわばコンビニだけど出版社のようなユニークな存在だ。

セブンの書籍・雑誌売り場を見てみよう。「よく売れている」という「週刊文春」「週刊新潮」「少年ジャンプ」「少年マガジン」といった週刊誌やコミック雑誌のほかに、実用的な付録がついたムックや判型が小さい雑誌などが目に留まるはずだ。

「新しい価値あるモノを作りだすことが私たちの商品開発のあり方。出版社さんと一緒になって本づくりにも日々取り組んでいます」 と、セブンネットショッピングの取締役とセブン商品本部オムニチャネルMD部の統括マネジャーを兼務する岡嶋則幸氏は語る。

コンビニで売れる本とは?

そもそも「書店とコンビニで売れる本は違う」そうだ。

「コンビニで売れる本」には次の3つの特徴があるという。

  1. ページに文字がゆったりと入っている。行間ツメツメの「文字ぎっしり」はダメ。
  2. イラストや写真・図を多用している。
  3. 本が分厚くない。

要するに、活字好きの「読書家」が好むものとは逆の本が売れる。

セブンイレブン本

「まだどこにもないもの」ではなく、既存のものの見せ方や内容に工夫をし、付加価値をつけて「セブン流」の本を作る。中でも売れ筋の商品がこちらの4冊。

提供:セブン-イレブン

2016年の大晦日に出て実売4万部と人気を集めているセブンオリジナル単行本『開運レッスン』(ゲッターズ飯田著・セブン&アイ出版・734円)の場合 —— ページをめくっていくと「感謝のある人に次がある」といった“心に響く言葉”と短い文章とイメージ写真からなる「見開き完結」で構成されていることがわかる。189ページだが、ざっと1時間以内で読めそうなライトさだ。

「店頭で本をパラパラめくったとき“あ、読めそうだな”と思ってもらえるかがポイントです」(岡嶋氏)

確かに仕事帰りにふらりと立ち寄ったコンビニに小難しい本があっても手は伸びない。それよりも「見て癒される・さくっと役に立つ」ような“お得感”のある本に惹かれる心理を、「消費者ファースト」のコンビニは熟知しているのだ。

今ではコンビニ限定販売の本や雑誌も珍しくはないが、セブンがオリジナルを作り始めたのは2008年ごろからだという。当時リーマンショックで世界的な大不況だった。少しでも客を囲い込むため、「他にはない商品を作らなければ」と雑誌・書籍担当のマーチャンダイザー(商品開発者)が立ち上がったことは察しがつく。

だが驚いたことに、「世の中のどこにもない、まったく新しい本を作っても売れない」(岡嶋氏)という。本のネタは常に「話題になっている」「売れている」などと既存のものの中から探すが、「見せ方や内容を変えれば、付加価値のある新しい商品(本)として生まれ変わる」(岡嶋氏)と考える。ここがセブン流「出版の極意」だ。

付加価値をつける本づくりとは、例えばこうだ。あるビジネス誌の「マネー特集」がよく売れると察知すると、その出版社にオファー。その特集だけを切り取って、文字を少なくし、イラストを多く入れ、“コンビニ仕様”のムックや単行本にカスタマイズする。逆に、出版社からの持ち込み企画の場合も多い。「これじゃ、既存記事を二次加工するだけではないか」と思われるかもしれないが、前出の岡嶋氏の発言を思い出してほしい。「まだどこにもないものは売れない」多くの人が関心を持つ記事をいち早く見つけ、「読みやすく」「平易に」といった価値をつけるからこそ売れるのだ。

以下、セブンで「今、売れている」というオリジナル本を岡嶋氏にピックアップしてもらった。それぞれの新しい「価値」、わかりますか?

  • コミック雑誌 月刊「ヒーローズ」(株式会社ヒーローズ・200円) 2011年11月創刊で現在も販売中。刷り部数30万部を記録。「ヒーローもの」という鉄板コンテンツを集めた。
  • MOOK「老けない体をつくる食べ方」(宝島社・539円) 2016年3月発売。実売14万部。健康実用書として40代男女のニーズとマッチ。低価格も魅力
  • MOOK「味付けの教科書」(宝島社・539円)2016年6月発売。実売10万部。和食の基本が学べる本。「味付け」というわかりやすい言葉が、和食の難しそうなイメージを和らげている。レシピも多く掲載され、実用的。

※価格はすべて税込み。オリジナル本の一部は書店にも流通済み。


吉岡 秀子:コンビニジャーナリスト。2002年から日本人のライフスタイルに応じた「新しいモノ・サービス」を生み出す拠点としてコンビニ業界を徹底取材。現在、コンビニ専門家として執筆のほかメディア出演等も。近著に「セブン-イレブンは日本をどう変えたのか」がある。

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