アメリカのフィンテックが激変 —— 強気の老舗金融 vs. 退散するベンチャーキャピタル

フィンテックのイメージ

モルガン・スタンレーは、従来型の既存の金融機関が「金融革新を支配する」状況が生まれていくとの見方を示した。

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金融テクノロジーの世界で「パラダイムシフト」が起きている。

2012年から2016年にかけてフィンテックのスタートアップ企業に1170億ドル(約12兆8000億元)を注入したベンチャーキャピタル企業が手を引き始めた一方、既存の金融機関はフィンテックへの支出を増やす構えだ。

モルガン・スタンレーの株式アナリスト・グループは、5月18日に顧客に送ったフィンテックに関する大型レポートの中で、こうした変化で、従来型の既存の金融機関が「金融革新を支配する」状況が生まれていくとの見方を示した。

同リポートは、「既存の金融機関や支払機関は、研究開発の強化や先行投資に大胆に取り組んでいく可能性が高い。ベンチャーキャピタルと既存の金融機関の双方の態度の変化はパラダイムシフトを示すもので、既存の金融機関にとっては投資収益率のプラスになるはずだ」と指摘している。

ベンチャーキャピタルの役割は引き続き低下

金融テクノロジー企業の資金調達額は2012年から2015年にかけて急増した。この時期、ベンチャーキャピタルはこの業界に920億ドルを投入した。しかし今、ベンチャーキャピタルはフィンテック業界に食傷気味のようだ。

ベンチャーキャピタルによるフィンテック企業への投資額は2015年に世界で470億ドルに達したが、2016年には250億ドルに落ち込んだ。

フィンテックへの投資額

フィンテックへの投資額

Morgan Stanley

ニューヨークに拠点を置くベンチャーキャピタル、アンセミス・グループを率いるエイミー・ノイオカス( Amy Nauiokas )氏はBusiness Insiderの最近のインタビューで、投資額が減少に転じるまでの間を「熱狂の時代」と呼んだ。

ノイオカス氏によると、「大企業は自由に使える資金をため込んでいた。カネはある、資金を持っている、何かに使わないといけないと企業は考えていた」という。

こうした資金の存在が、フィンテック企業の評価額を一部投資家から不当に高いという声が出る水準まで押し上げた。例えば、モーティブ・パートナーズのマネージング・パートナー、アンディ・スチュワート( Andy Stewart )氏はロンドンで開かれたフィンテックの国際会議で、フィンテック企業の評価額は「あぶく」と述べ、業績と結びつかない水準になっていると指摘した。

モルガン・スタンレーのリポートは、「この1年の投資額の縮小は、フィンテックには業界の混乱につながりかねない独特の課題があることから、当初期待した投資収益率が得られないと投資家が気づいたことを示している。ベンチャーキャピタルの投資の縮小は今後も続くとみている」と指摘した。

空白埋める既存の金融機関

モルガン・スタンレーによると、既存の金融機関によるフィンテック企業への投資加速を後押しする要素は数多くある。最も明白な要素は混乱への恐れだ。

「フィンテックで混乱が生じる脅威があることから、既存の金融機関はテクノロジーへの投資を増やさざるを得ない状況に追い込まれている。経営効率化や市場シェア維持のために必要だからだ」と同リポートは指摘している。

規制緩和も引き金だ。もしトランプ政権がウォールストリートの規制緩和を約束通り成し遂げるなら、既存の金融機関は規制をめぐるコンプライアンスへの多額の支出を免れ、フィンテック投資に資金を回せるようになる。また既存の金融機関の課題であるコスト削減もフィンテック投資のインセンティブだ。

モルガン・スタンレーのリポートは、「既存の金融機関にとって収益向上策の一環としてコスト管理は引き続き重要な課題」と述べ、「フィンテックは、今後、人員増の節度ある管理と併せて、効率化促進のためテクノロジーを一層活用するという方向性に沿うものだ」と分析している。

こうしたパラダイムシフトはどんな結果をもたらすのか。それは、ウォールストリートの老舗金融機関の明るいビジネス展望だ。

モルガン・スタンレーのリポートは「既存の金融機関が投資を増やす一方、ベンチャーキャピタルは投資を減らしている。既存の金融機関は仲介金融機関離れの動きに飲み込まれることなく、新しいテクノロジーを取り込んでいくとみられる」と述べている。

[原文:A 'paradigm shift' is taking place in financial technology

(翻訳:編集部)

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