「就職相談を親にするのは地獄の始まり」——古市憲寿氏が語る「100年ライフ」時代に20代がすべきこと

講演する古市憲寿氏

「悲観論を上回るイノベーションを」と語る、社会学者の古市憲寿氏

撮影:安楽由紀子

人生100年時代になった今、20代、30代で意識しておくことは何だろうか。

昨年発売された『LIFE SHIFT〜100年時代の人生戦略』をきっかけに、「人生を100年で考えよう」というさまざまな試みが始まっている。

イクメンやイクボスの火付け役でNPO法人ファザーリング・ジャパンでも、男性の生き方改革事業「男の100年ライフ応援プロジェクト」を今夏スタートさせるという。代表理事の安藤哲也氏はこう話す。

「定年後のことは定年になってから考えるというが、それでは遅い。仕事があるうちにワーク・ライフ・バランスを実践し、趣味、自己研鑽、社会活動といった自分にとっての3番目の居場所“サードプレイス”をどう作るか。いつまでもワクワクできる大人たちが増えれば、若年層も希望が持てるはず」

ファザーリング・ジャパンがプロジェクトのキックオフとして5月に開いたフォーラムの参加者は40〜50代が中心だが、20〜30代も見受けられた。女性も3割ほどと、性別や年齢に関係なく「人生100年時代の人生戦略」への関心の高さを伺わせる。

これから求められるのは“笑顔”

フォーラムで基調講演をしたのは、社会学者の古市憲寿氏。古市氏は1985年生まれの32歳だが、「父が定年後、家にいます」と早くも定年後の問題を身近に感じているという。健康寿命が75歳前後まで伸び、定年後も体力があるうちは働き続けたいという人も多い。しかし、その意思は仕事や社会に生かされにくいと指摘する。

「日本の会社はその人の専門性を雇うというよりも、“メンバーを雇う”という感覚で人材を採用します。会社内で部署の異動を繰り返し、定年時にはその会社のエキスパートになれるけれど、本当の意味での専門性が養われているかというと微妙。だから『定年後はどうする?』という問題が生じるのです」

「高齢者向けの求人欄を見ると、清掃や介護などは多くありますが、その人が積み重ねてきたキャリアや能力を生かす仕事が充分にあるとは言えません。さらに最近では、定年後も働き続けることが“老害”扱いされる場合もあります」

しかも近い将来、人工知能に多くの仕事が代替される可能性がある。これからの時代に求められるものは何か。意外にも古市氏は「笑顔」だと言う。確かに、日本の高齢者は総じて「いつも不機嫌」「横柄」「キレやすい」と評判が悪い。

ファザーリングジャパン代表の安藤哲也氏

「男の100年ライフ応援プロジェクト」を今夏スタートさせる、ファザーリング・ジャパンの安藤哲也代表

撮影:安藤由紀子

「会計や経理など専門的な知識と思われていたものほど人工知能に代替されていくと言われています。だからこそ、笑顔や感じのよさが重視される社会になっていくのではないでしょうか。実際、自動チェックイン機があるホテルでもスタッフと対面してチェックインする人は多い」

“笑顔”の訓練は高齢者になってから、では遅い。20代、30代から意識する必要があるのではないか。

介護問題深刻なのは団塊ジュニア

古市氏は介護の人手不足、施設不足がなかなか解消されないことにも警鐘を鳴らす。

「75歳以降、病院や介護施設にかかる人の割合が高まります。団塊世代には(介護を担う人材として)団塊ジュニア世代がいるのでかろうじて世代間のバランスが取れていますが、団塊ジュニア世代が高齢者になったときに支える現役世代がかなり少ない。団塊ジュニアが70〜80歳になる2050〜2060年代は悲惨なことになるでしょう。しかも、一人っ子で結婚もしていない本当の意味での単身高齢者が増え、大きな社会問題になると思います。人生100年時代、寿命が伸びてみんなが幸せになるかというと、そうではない可能性も高い」

暗い話題ばかりだが、「悲観論はその後のイノベーションで乗り越えられてきたという歴史がある」という。

悲観論はあくまでその時代の常識のなかでの悲観論に過ぎず、それを上回るイノベーションを人類は起こしてきました。また、いくら未来が悲惨といっても、乳幼児死亡率や感染症による死亡率が高かった昭和時代の水準に戻ることはないでしょう」

その上で、古市氏は次のように問いかけた。

「人生100年。これまでは65歳まで現役でそのあとは老後と言われてきましたが、これからは来るのは老後がない社会と言い換えてもいいでしょう。健康寿命は今後も伸びていくはず。その体を生かして何をするか」

親は30年前の常識で生きている

基調講演後のトークセッション「私たちから見た『男の100年ライフ』」でも、古市氏は「就職相談を親にするのは地獄の始まり」と、ミレニアル世代に向けて警告した。

「最近、若者の価値観が昔に戻り、保守化していると言われています。たとえば、女性は専業主婦、男性は正社員として働くことに憧れているというデータもあります。一つの理由は、自分の親世代をモデルにしてしまっているからだと思います。就職相談を親にするのは地獄の始まり。親世代は30年前の常識のなかで生きている。『正社員がいい』と言われてブラック企業に入るなど、親の意見に従って失敗する例もある」

今の時代、正社員であることが大事なわけでも、大学を卒業してそのまま就職することが絶対に正しいわけでもない。かつての正解は正解ではない。1970年代の就職人気企業ランキングを見ると、今は事実上倒産した企業やダメになった企業も入っています。常識はすぐに変わるもの。親の意見は参考するくらいにとどめて、できるだけ幅広いジャンルの人に意見を聞くのがいいと思います」

人生100年、定年後40年。今の生き方が“その時”を大きく左右する。


安楽由紀子: ライター、編集者。1996年国際基督教大学教養学部卒業後、編集プロダクション入社。2000年フリーランスに。

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