アメリカの中古住宅市場を縛る金利上昇観測

家の中で窓の向こうを見つめながら、外へ出ていきたそうにしている人

Flickr/Renaud Camus

アメリカの住宅市場は2008年の世界金融危機から回復しているものの、その実情はそう単純ではない。

住宅価格は危機前の水準に回復したが、賃金上昇率は伸びていない。このため大都市を中心に、買い手にとって手頃な価格の住宅が少なくなっている。

表面的には、住宅価格の回復は、持ち家を売り出そうとしている人々にとっては朗報であるはずだ。だがアメリカの保険会社ファースト・アメリカンのチーフエコノミスト、マーク・フレミング(Mark Fleming)氏によると、史上最低水準にあった住宅ローン金利の上昇が見込まれているため、転居を控える動きが生じそうだという。

「金利のせいで、今住んでいる家の『囚人』になってしまう。長期にわたる低金利の副作用が、経済を脅かしている」と、フレミング氏はBusiness Insiderに話した。

同氏によると、1980年代以降の住宅ローン金利の長期的低下で、転居へのインセンティブが生まれた。たとえ売り手の収入が変わらなかったとしても、より低金利の住宅ローンに借り換えることができたので、少し大きな家を買うことが可能だった。

住宅ローン30年固定金利の推移

Andy Kiersz/Business Insider

過去最低水準の金利の上昇が見込まれる今、住宅の所有者は持ち家を売り渋っている。なぜなら、家の買い替えに伴い、組む住宅ローンの金利も高くなり、月々のローンの支払い額が上がるからだ――フレミング氏はそう語った。

住み替えを難しくする供給不足

供給不足の市場で自分の持ち家を売りに出すことは、住宅所有者にとって、「住みかえる家を見つけられないリスク」と背中合わせだ。

「住宅の所有者全員が一斉に売りに動けば問題は解決するだろう。だが、他の全員が踏みとどまる中で自分だけが勇み足を踏むリスクは冒せない。いわゆる『囚人のジレンマ』に陥っている」と、フレミング氏は語った。

「この新しい日常に慣れる必要がある」

フレミング氏によると、需要に追いつくほどのスピードで新しい住宅が建てられるかも疑問だ。

全米不動産業者協会(NAR)によると、需給ギャップのせいで、中古住宅市場における買い手の競争がかつてないほど激しくなっている。中古住宅が売りに出されてから買い手がつくまでにかかった日数をみると、2017年4月は平均29日で、記録的な短さだった(5月24日水曜日のNAR発表)。つまり買い手が住宅購入の判断を早めていることを意味し、市場の熱は上がっている。

「競争やストレスに耐えている購入希望者の状況は、数カ月でいくらか落ち着くかもしれない。春から売れ残っている中古住宅の所有者たちが、夏の終わりにかけて値下げを検討するからだ」と、アメリカの不動産情報サービスZillowのチーフエコノミストSvenja Gudell氏は記した。

「しかし需要が供給を上回り、価格が上昇していくこの状況はしばらく続くだろう。買い手は、この新しい日常に慣れる必要がある」

[原文:A likely shift in the mortgage market is creating 'prisoners' in housing

(翻訳:本田直子)

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