KDDIが挑むホームIoT「au HOME」に潜むビジネスチャンス ——日本版Amazon Alexaになれるか?

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au HOMEは月額490円で何台でも機器をぶら下げられる仕組み。セットプランを使うと、カメラとセンサーを割賦の形で、コミコミで月額980円で利用できる。

KDDIが5月30日の開催したau夏モデル発表会は、率直なところ地味にまとまってしまった印象が拭えなかった。

対するドコモが決算発表での「シンプルプラン」、夏モデル発表会での「ドコモwith」と立て続けに新料金プランを打ち出して話題をさらっていったのに対し、auは質疑応答のなかで対抗プランの予定を明らかにしたのみで、プラン詳細に踏み込む内容ではなかったからだ。

その中で、意外な発表だったのが、家庭向けIoTプラットホーム「au HOME」だ。グーグル本社からGoogleアシスタントのプロダクトマネージメントディレクターを招いて提携を発表するなど、手堅い発表に終始する中で個人的に引っかかるものがあった。

KDDIとGoogleの握手

auHOMEに関連して、主にGoogleアシスタントでのパートナーシップを発表。写真左がKDDI田中孝司社長、右はGoogleアシスタントのプロダクトマネージメントディレクター、スティーブ・チェン氏

なぜ、いまKDDIがホームIoTビジネスに参画するのか?

au HOMEは、auのインターネット回線「auひかり」契約世帯を対象に、au HOME対応のインターネットカメラや人感センサーなど展開して、専用のau HOMEアプリで一限管理していくプラットフォームだ。

対象をauひかり契約世帯に限定しているのは、auひかりの開通と同時に設置されるホームゲートウェイ(ルーターのようなもの。以後は便宜的にルーターと表記)にZ-WAVEという無線通信規格に対応したUSBドングルを挿すことで、ルーターそのものをIoT機器のハブである「IoTゲートウェイ」に機能拡張させるという仕組みのためだ。

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au HOMEのネットワーク概念図。auひかりのホームゲートウェイをIoTゲートウェイ化して、対応機器のハブとし、家庭内外からのコントロールやモニタリングを可能にする。

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サービスイン当初のau HOME対応機器。遠隔操作可能な見守りカメラが1万円そこそこで、手頃な価格に抑えられている。

au HOMEの対応機器

au HOMEサービスイン時に順次発売予定のIoT機器。

発表会を取材しながら感じたのは、ルーター自体をIoTゲートウェイに仕立てる、というのは、冷静に考えると、なかなか筋が良い考え方だということだ。

というのは、いま家庭用のIoT機器プラットフォームの争いは、「いかにして一家に一台あるデバイスにIoT機器の制御をするハブ機能を持たせるか」にかかっているからだ。

この分野で比較的身近なのは、アップルの「Home Kit」がある。アップルは、家庭用IoTプラットホームを、iOS系デバイスを中心としたエコノミーの中で実現しようと試みている。

ただし、アップルの試みも順調とは言い難い。先ほど書いた「一家に一台あるデバイスにハブ機能を持たせられるか」という問題を抱えているからだ。アップルは、今の所、ハブ機能をApple TVに持たせようとしている。けれども、Apple TVの国内普及はご存知のとおりで、今すぐにホームIoTの世界で脅威になる、というような道筋は、まだ見えそうにない。

家庭内のIoTプラットホームになるための4つの要素

そこでKDDIのau HOMEに話を戻す。ホームIoT機器のハブになりえる要素としては、いくつか条件がある。

  1. 一家に一台レベルで常設されている電子機器で、かつリビング/ダイニングに近い方がいい(無線LANなどの電波を届かせる必要があるため)
  2. 24時間通電する電源が確保できること
  3. インターネットに常時接続されていること(回線種別は問わない。物理回線でもLTE回線でもいい)
  4. ネット経由のアップデートによる機能改善が頻繁にできること

たとえば、1と2を満たすものは、冷蔵庫やテレビ、エアコンなどがある。けれど、3のハードルが意外と高く、またこの手の耐久消費財は4もなかなか難しい(製品のライフサイクルが長く、またソフトウェアドリブン思考で頻繁なアップデートと機能改善をしていく文化が弱い)。

Apple TVを当てはめてみよう。2〜4は満たしているし、特に4はアップルの得意なところでもある。しかし、普及度という点で、iPhoneやiPad並みの商品価値に高めなければ、1のハードルを超えられない。だから難しい。

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Amazon Echo。5万件を超えるレビュー数、フィリップスのIoT電球Hueとのセット販売もされている。

アメリカでバカ売れしているアマゾンのAIスピーカー「Amazon Echo」シリーズは、1000万台に迫る勢いで台数が出ていると言われ、アメリカではAIスピーカーに搭載されるAmazon AlexaがホームIoTプラットホーム候補の一大勢力になりつつある。ただ、対日本で考えると、日本語という言語の大きな壁があるために、日本上陸したとしても同じように成功するかは五分五分だ。

さて、チェックリストを踏まえてau HOMEを見ると、1〜4まですべて満たしているのだ(もちろん、「auひかり加入世帯では」という但し書きがつくことになるわけだが)。

とはいうものの、KDDIは発表会の質疑応答のなかで、今後auひかり以外の一般世帯へもau HOMEをサービス拡大していく可能性について、否定はしなかった。auひかり回線でのビジネスがうまく運べば、対応ルーターの拡大や、IoTゲートウェイ機能を持った小型のハブ機器などのリリースなどの形で一般展開する可能性は、社内のビジネスプラン上はきっと存在するはずだ。

au HOMEに欠けているものと、今後のデータビジネスの可能性

なぜKDDIはIoTプラットホームになろうとするのか? 答えは明確だ。デファクトスタンダードになったIoTプラットホームは、様々な家庭用IoT機器の情報集約において大きなアドバンテージを築くことができる。さらに、集約されたデータの分析などを通して、ビジネスにおいて有利な立場をとれる可能性が高いからだ。

さらにKDDIはすでにケータイ払いを通じて「決済」も押さえている。つまり、このIoTプラットホームを通じてユーザーに何かを買ってもらうサービス構築(たとえば生鮮食材の注文に対応したIoT冷蔵庫など。Amazon Alexa対応冷蔵庫では、LGがすでに発表している)にも有利だ。

また、KDDIは現時点では「(au HOMEを通じて収集した、BtoBでの)データ販売については現時点ではそこまでは考えていない」(田中社長/BUSINESS INSIDERの質問への回答より)ものの、データ活用は会社として積極的に進めていく方針であることは認めている。5月30日から施工された改正個人情報保護法も、収集したデータの積極活用に関しては追い風の要素だ。現状はノープランだというデータ販売にしても、それがBtoBで大きな価値を生むビジネスになるとなれば、当然話は変わってくる。

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au HOMEは、auが将来のビジネスの主軸に据える「ライフデザイン」カテゴリに属するサービス。電力自由化でauでんきなども始まっている昨今、IoTコンセントなどで取得した電力データと組み合わせた新しいビジネスなど、さまざまな横展開の可能性は広がっている。

au HOMEは7月下旬にローンチする。現時点で確実に足りないと感じるのは、SDK公開などによる、サードパーティへの解放、つまり「オープン化」だ。

もちろん、オープン化することで互換性がしっかりとれていないハードが増える可能性は高まる。その点は、たとえばマイクロソフトが実施している「Windows10 Insider Preview」のような形で、ITリテラシーが高い一定のユーザーのみへの先行機能としてリリースするなどすれば、サポートコストはそこまでかからないはずだ。

家庭用IoTの世界は、カメラやセンサー以外にもコンセントからスイッチ、電球まで、カテゴリーが幅広い。早い段階で透明で開かれたプラットホームにして外部の力を集めていくことは、本格普及に欠かせない要素になる。

(撮影:伊藤有)

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