総務省が問題視 格安SIMのUQとワイモバの速度は「不公平」なのか?

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格安スマホが盛り上がりを見せる中、大手キャリアのサブブランドの勢いが止まらない。

ソフトバンクやKDDIの潤沢な資金力を背景に、テレビCMを大量に投入。ネットワーク品質も大手キャリアと変わらないことから、ユーザー数が急増している。

特にソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルは、「格安スマホ市場で4割のシェアを獲得した」(ソフトバンク・寺尾洋幸ワイモバイル事業推進本部長)といい、一方のKDDI系のUQモバイルも「まずは年間90万契約を狙いたいが、それで満足してはいけない。大台(100万件)を目指したい」(UQモバイル・野坂章雄社長)と意気込む。

スマホ業界にとって毎年2〜5月の春商戦は繁忙期とされ、契約者を増やす"稼ぎ時"と言われている。入学や進学のタイミングに合わせて、スマホデビューする学生が多いからだ。

ワイモバイルの寺尾氏は今年の春商戦を振り返り、「昨年をはるかに超える契約者数を獲得した」と胸を張る。昨年、iPhone 5sの取り扱いを開始。学生需要を一気に取り込んだのだが、今年は昨年を上回る契約者を獲得できたようだ。

寺尾氏によれば「契約者数のうち、iPhoneが4割程度で残りがAndroid」という内訳だという。ワイモバイルではAndroidにおいても「Android One」という、キャリアが極力手を加えず、素の状態に近いAndroid体験が味わえるスマホを相次いで投入。iPhoneに対抗し、グーグルのブランド力を味方にユーザーを増やしつつある。

サブブランド各社、次のターゲットは「家族」

学生需要を取り込んだワイモバイルやUQモバイルが、次にターゲットにしているのが「家族」だ。寺尾氏曰く、「学生が家族を連れてきている」。家族のなかで学生がワイモバイルでスマホデビューして、「安くてちゃんと使える」という確認ができた段階で、家族の母親や父親が大手キャリアからワイモバイルに乗り換えていくのだという。

「2016年3月に獲得したユーザーの5人に一人は1年以内に家族もワイモバイルにやってきた」

ワイモバイルでは、2回線目以降は1回線あたり500円割り引くという家族割引サービスを展開しており、これがヒットした模様だ。この動きに後追いするかたちで、UQモバイルも家族向けの2回線目500円引きサービスを始めることになった。

「不公平な競争力」を問題視する総務省

回線品質は大手キャリアと同等、基本料金が安く、家族向け割引サービスも充実。全国にショップ網も完備し、サポート体制も充実とあれば、ワイモバイルやUQモバイルが、格安スマホの中で最強のように思える。

しかし、ここにきて、総務省がサブブランドの2社に対して目を光らせてきた。

総務省は5月31日に「電気通信市場検証会議」を開催。そのなかで、「キャリアのグループ企業である一部のMVNOが提供するサービスが、他のMVNOでは実現できないような価格設定がされており、競争上優位。キャリアから優遇されているのではないか」と指摘があった。

その対応として「電気通信事業者が不当に安価な料金設定を行った場合は電気通信事業法第29条第1項第5号の業務改善命令の対象になる可能性がある。不当な競争を引き起こすものとならないか、引き続き注視していく」ということになった。

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総務省の電気通信市場検証会議に関するWebページ。問題の5月31日開催の第4回の配布資料も公開されている。

関西電力系列の通信会社で、mineo(マイネオ)ブランドを手がけるケイ・オプティコムのモバイル事業戦略グループ、上田晃穂グループマネージャーは「MVNOがキャリアと同等の通信速度を出すのは、相当な帯域を確保しないといけない。純粋なMVNOとして、キャリアに対してきっちりと接続料を支払っているのか、かなり疑問だ。今後、総務省に健全で公正な競争になるように相談していくことになる」と指摘する。

UQモバイルは、安価な料金の割にMVNOが苦手とする昼間の通信においても、キャリアと変わらぬ通信速度を実現している。この背景に、KDDIとUQモバイルの間で、正当な接続料が支払われているのではなく、通信面で相当な優遇がされているのではないか、と見ているようだ。

大手キャリアと子分に独占させないために

総務省としては、MVNOを後押しすることで、日本のスマホ料金を引き下げたいという狙いがある。ようやく格安スマホ市場が盛りあがってきたが、ここでサブブランドが台頭してしまい、MVNO陣営が淘汰されてしまうと、結局、大手3キャリアとその子分たちで市場が占領されてしまう。総務省としては、MVNOがサブブランドに負けるのはできるだけ避けたい。そのために、何らかの予防線を張ろうとしている雰囲気がある。

昨今のサブブランドに対する逆風に対して、UQモバイルの野坂社長は「決められたルールをきちんと守っていく。ルールが変わるなら従っていく。総務省の電気通信市場検証会議はとても公平な議論だったのではないか」と語る。

ワイモバイルの寺尾氏は「サブブランドならサブブランドと宣言した上で、展開していけばいい。ユーザーにとってみれば、MVNOでもサブブランドでも関係ないのではないか」という。確かにユーザーにとってみれば、安くて品質が良く、サポートもしっかりしていれば、MVNOだろうが、サブブランドだろうが何でもいいのは間違いない。

現状、スマホの回線市場は「料金は高めだが品質のよい大手3キャリア」と「料金は安いが品質がイマイチな格安スマホ」という2つのセグメントに分かれている。しかし、総務省としては「セグメントを分けるのではなく、分け隔てなくお互いが競争できるように努めている」(総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部料金サービス課・内藤 新一企画官)と語る。

実はUQモバイルは「キャリアでもなく、格安スマホでもない、その間となる第三極を狙っていきたい」(野坂社長)と常々語っている。皮肉にも、総務省の考える「キャリアと格安スマホの分け隔てない競争関係」の間を埋めるのがサブブランドの存在だったりするのだ。

サブブランドが暴れれば、通信料金が下がって国民はハッピー。しかし、それによってMVNOが疲弊し、やっと立ち上がった格安スマホ市場から撤退されても困る。総務省としては、闇雲にサブブランドに対して規制するわけにもいかず、難しい舵取りを迫られている。


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。

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