専門家はエネルギー分野と雇用への波紋を指摘 —— アメリカのパリ協定離脱の影響

トランプ大統領

アメリカのパリ協定離脱の影響は、世界の気候はもちろん、同国の経済と雇用にもおよぶ可能性がある。

Thomson Reuters

トランプ大統領は6月1日(現地時間)、アメリカはパリ協定から離脱すると発表した。現在世界中のほとんどの国が参加しているパリ協定は、世界の平均気温の上昇を産業革命前の水準と比べて、摂氏1.5度程度に抑えることを目指す画期的な協定だ。

アメリカのパリ協定離脱の影響は、世界の気候はもちろん、同国の経済と雇用にもおよぶ可能性がある。

マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院教授で、非営利団体Climate Interactiveのシニア・アドバイザー、ジョン・スターマン(John Sterman)氏によると、アメリカのパリ協定離脱は、化石燃料および再生可能エネルギーの今後の経済見通しに不透明感を生み出す。この不透明感は「ビジネスに悪影響」であり、また再生可能エネルギーへの投資に期待するビジネスにとっても悪影響となる。他国の経済にも悪影響を及ぼすばかりか、再生可能エネルギーの発展を鈍化させる恐れがあると同氏は語る。

現在、再生可能エネルギーのコストは減少しつつある。しかし、アメリカのパリ協定離脱による不透明感は、太陽光発電や風力発電の設置を鈍らせる。コストが長期にわたって高止まりすると、ひいては同国の再生エネルギーへの移行が遅れてしまう。

スターマン氏は今回の協定離脱により、アメリカ以外の国々による脱退や、アメリカに対する何らかの制裁が課される可能性を指摘する。

「例えば中国が、今回のアメリカの離脱への反応として、アメリカからの輸入品に炭素税を課し、それに他の国々が追随するということも考えられる」

すでに報じられているように、こうした観点から、エクソンモービルや石炭生産大手のクラウド・ピーク・エナジー(CPE)といった化石燃料企業のいくつかは、トランプ大統領にパリ協定から離脱しないよう求めていた。スターマン氏によると、こうした石炭、天然ガス、石油を扱う企業は、パリ協定により若干の規制を受けることになるとしても、協定から離脱して、中国やインド、EU、その他の影響力のある国との国際的な交渉テーブルを失うことを恐れていた。

「パリ協定に留まることにより、たとえかなりの温室効果ガスの排出制限を課されたとしても、気候変動に関する政策において、大統領はより合理的で国際的なアプローチづくりに貢献できるはすだ」と、CPEのCEOコリン・マーシャル(Colin Marshall)氏は4月6日、トランプ大統領宛の書簡に記した。

「アメリカがリーダーシップを取らなければ、過去25年間の誤った国際政策が引き続き支配的なものになってしまう。気候変動の課題に取り組むことは、必ずしも繁栄か環境かを選択するものではありません」

ソーラーパネルが立ち並ぶ様子

中国は風力タービンとソーラーパネルの生産をリードしている。

Reuters/Stringer

加えて、協定離脱の影響は、アメリカの雇用にもおよぶ可能性がある。

トランプ大統領は選挙公約の1つに雇用の創出を掲げていたが、スターマン氏によると、この問題で中国にリーダーシップを譲り渡すことになれば、「アメリカの雇用が犠牲」になる可能性がある。風力タービンやソーラーパネルの生産などは、すでに中国に奪われている。パリ協定離脱により、さらに雇用を失うことになるだろうと同氏は指摘した。

スターマン氏は、アメリカ国内での仕事、つまり、ソーラーパネルや風力タービンの設置、運用、保守などの仕事も失われる可能性があると述べた。こうした仕事に就いているのは、そのほとんどが「トランプ大統領の支持基盤」であるブルーカラーの労働者だと同氏は指摘した。

環境保護局(EPA)長官のスコット・プルイット氏と首席戦略補佐官のスティーブ・バノン氏が、パリ協定からの離脱というトランプ大統領の意向を支持した。その一方で、大統領の長女イヴァンカ氏とその夫である大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー氏は、パリ協定への残留を求めていると一部報道は伝えた。

以下の地図は、パリ協定の批准国、署名国、不参加国の一覧だ。アメリカは不参加国であるシリア、ニカラグアの仲間入りをした。内戦中のシリアは、協定の署名式に参加しなかった。ニカラグアは協定の内容が不十分であるとして署名しなかった。

パリ協定の批准国、署名国、不参加国を表す地図

濃い青:批准国(147カ国)、薄い青:署名国(48カ国)、赤:不参加国(2カ国)

Skye Gould/Business Insider

[原文:How leaving the Paris Climate Agreement could affect the US

(翻訳:原口 昇平)

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