広告業界で、アマゾンは静かに台頭しつつある。
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- アマゾンは、重要な広告出稿先として急成長している。
- 多くの企業がアマゾンで商品を販売しており、アマゾンで広告を運用する必要がある。
- アマゾンへの広告出稿を、長期的に企業のどの部門が担当するかは不明確だ。
アマゾンは常に、広告業界で「眠れる巨人」と呼ばれてきた。世界有数の広告代理店WPPのCEOマーティン・ソレル(Martin Sorrell)氏は、アマゾンのことを考えると夜も眠れないと語った。そして今、広告代理店の担当者たちは、アマゾンは、グーグルやFacebookに重大な影響をおよぼす広告出稿先として、急速に成長していると見ている。
「アマゾンは重要なプレーヤーになりつつある」と広告代理店360iの会長ブライアン・ウィナー(Bryan Wiener)氏。
ウィナー氏によれば、EC関連の検索はまずアマゾンで行われている。「そうした検索は、グーグルの収益を減らし始めている。まさに転換期を迎えている」
簡単に説明しよう。最近までそうではなかったのだが、360iのクライアントの多くは今、アマゾンで自社商品を販売している。そうした会社のマーケティング担当者にとって、販売促進のための広告出稿は重要なことになっている。360iは、アマゾンでの広告ノウハウを急ピッチで構築しようとしている。
「我々はノウハウを体系化し、戦略化しようとしている」とウィーナー氏は述べた。
アマゾンでの広告の進化は、まだ比較的初期段階にある。同社はここ数年でデジタル広告における地位を急速に高めている。同社が保有するデータを活用して、マーケッターが顧客をターゲッティングできるようサポートするなど、広告出稿者向けのアドテクノロジーを構築している。過去18カ月以上にわたり同社は、検索広告に焦点を絞ってきた。グーグルの主要な収入源となっている領域だ。
広告代理業と投資業を展開するBullishのマネージングパートナー、マイケル・ドゥダ(Michael Duda)氏は、最近、クライアントにFacebookやグーグルへの広告出稿を取り止めるよう勧め、アマゾンへの出稿を増やしていると語った。その結果、取り扱い額は約10%伸びたという。
ほとんどのマーケッターにとって、「アマゾンには開拓すべき余地が多大にある」とドゥダ氏は語った。
マーケティング予算のサイロ化
企業のマーケティング予算は「サイロ化」しがち。
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アマゾンは、より大きなマーケティング予算を獲得しようという、新たな課題に取り組んでいる。ウィーナー氏によれば、多くの企業においてアマゾンへの広告掲載は、店内POPや看板などを担当するチームが手がけている。Facebookやグーグルの広告を手がけるデジタル広告のチームではない。
これが潜在的に事態をややこしくしている。たとえば、同じ分析ツールを使って、アマゾンと他のデジタル媒体の広告効果を比較したり、あるいは、いつ、どの媒体に広告を出稿するのかを決めることが難しくなっているとウィーナー氏は述べた。
また別の問題もある。広告担当者によると、アマゾンは広告の掲載基準や、クライアントが広告出稿によって得た顧客データをアマゾン以外でも使用できるのか否かを明確化する必要がある。別の言い方をすれば、「壁に囲まれた庭(wall garden)」と称される顧客の囲い込みを行っているグーグルとFacebookに投げられている不満と同じ類のことだ。
アマゾンの今現在の強みは、商品にすでに興味を持ち、商品を購入しようとしている人たちが集まっていることだ。聞いたこともないような商品は取り扱われない。
グーグル、そしてFacebookは慌てる必要はないだろう。両社の最近の好調ぶりがさまざまな指標に現れているとしても、両社ともまだ具体的なアマゾンの影響を感じてはいない。
しかし、ウィーナー氏は以下のように述べた。
「無視し過ぎると、突然、大きな脅威となるだろう」
[原文:Amazon's ad business may be nearing a 'tipping point' (AMZN)]
(翻訳:本田直子)