日本ではなぜ前文科事務次官の証人喚問ができないのか —— FBI長官と比較してみた


FBIのジェームズ・コミー長官解任を伝えるニュース

ジェームズ・コミーFBI長官解任を伝えるニュース(ニューヨーク、5月10日)

Spencer Platt / Getty Images

日米の政界を見比べていると、アメリカの方がまだマシな気がする。トランプ大統領の政治を決して肯定できない。しかし、アメリカでは、首脳に対するチェック&バランスが機能しているのに対し、日本は絶望的に見えるからだ。

トランプ大統領に解任された米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー前長官は6月8日、上院情報委員会で証言する。アメリカの、いや世界のトップに立つ人物が、FBIという司直当局の捜査に介入しようとしたのか。捜査当局のトップに自分への「忠誠」を示させようとしたのか。8日は、アメリカの政治史において、歴史的な日となるはずだ。

一方、日本の安倍晋三首相は、海外から見ていると、辞任するしかないと思った瞬間が最近、何度もあった。とりわけ昭恵夫人が、学校法人「森友学園」に対し「寄付」として現金を渡したと、籠池泰典学園理事長(当時)が参院予算委員会で証言したとき。そして、学校法人「加計学園」の獣医学部新設に絡み、前川喜平・前文部科学事務次官が内部文書の存在を告発した際だ。安倍首相と与党は、前川氏の証人喚問を拒否することを確認した。証拠や証言を集めようにも、証人喚問ができない。議院内閣制というのは、政権と与党が、都合の悪いことを調査せず、政治の透明性が失われていく制度だったのかと、震撼として見ている。

アメリカの大統領制では、議会と司法が、大統領の治世に睨みをきかせている。完全な制度というのは存在しないかもしれないが、これまでにトランプ氏の政策に対し、行われてきたことは、「チェック&バランス」そのものだ。三権分立というのは、改めて、国民のためにあるものだと痛感した。

例えば、イスラム圏7カ国の旅行者がアメリカに入国することを禁止しようとした大統領令「トラベル・バン」は2回、連邦地裁判事が「憲法に違反」とする差し止め命令を出して、即時に無効となった。

また、下院は3月、トランプ氏の公約の目玉である、オバマケア(オバマ前大統領政権の医療保険制度)の改廃法案「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト(AHCA)」について、 採決を見送った。共和党は、上下院ともに多数派を占め、可決は簡単かと思われたが、下院幹部は、党内の賛成票を可決するに足る数にまで取りまとめられなかった。仲間議員が「自分の選挙区民を満足させられない」と反発したためだ。

その後、AHCAは下院を通過したが、上院での可決は微妙だ。また、ホワイトハウスは、入国制限令を有効にするように、連邦最高裁にヒアリングを正式に求めた。しかし、両ケースは、議員は有権者の声を真摯に聞き、連邦地裁判事は合憲であるかどうかを見張るという職務を果たす形で、大統領とホワイトハウスの政策を覆した。

コミー前長官とトランプ大統領が2月に持った会談は、すべて大統領のツイートか、報道でしか知られていない。コミー証言で注目されるのは以下だ。

録音された『テープ』の存在をほのめかすトランプ大統領のツイッター

  1. コミー氏が、トランプ氏と会談した際のメモがあると報道されているが、実在するのか。
  2. トランプ氏の選挙陣営とロシア政府が昨年の大統領選挙で共謀したという「ロシアゲート」について、コミー氏が「大統領は、捜査対象になっていない」と伝えたと、トランプ氏はテレビインタビューで明らかにしたが、それは本当か。
  3. トランプ大統領が、解任した 大統領補佐官(国家安全保障担当前)マイケル・フリン氏についての捜査を止めるように依頼したというのは、本当か。

コミー氏が、これらが事実だと証言すると、それが大統領による捜査への「司法妨害」にあたるのかどうか、という法的な解釈の問題が浮上する。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、司法妨害に当たるとしても、大統領には「免責特権」があり、刑事訴追できるかどうかというのは、法学者の間で意見が分かれるという。しかし、この他に、トランプ政権に対しては、ロシアゲートの疑惑をFBIと司法省が捜査中だ。さらに、上下院の情報委員会も調査している。ロシアゲートの捜査・調査は時間がかかりそうだが、トランプ氏と側近が、ロシア政府と結託し、民主主義の選挙を意図的に操作したとなれば、アメリカの民主主義の根幹にかかわる大変な犯罪だろう。

パリ協定からの離脱を発表するなど、トランプ大統領は、世界秩序にとっても「問題児」だ。しかし、その身辺は、決して安泰ではない。チェック&バランスが機能し、ホワイトハウススタッフや身内であるはずの共和党も一枚岩ではない。それが、安倍首相を取り囲む状況と大きく異なる点だ。

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