業界全体が厳しい状況に陥れば、「ミレニアル世代が崩壊させた」という見出しを掲載するほどだ。
David Goldman/Getty
ミレニアル世代は、数多くの業界の存続を脅かしている。
紙ナプキンを買わない。ゴルフをしない。家も車も買わない。カジュアルレストランで食事もしない。
多くのメディアは、ミレニアル世代のお金の使い方を取り上げる。売り上げが下がり、業界全体が厳しい状況に陥れば、「ミレニアル世代が崩壊させた」という見出しを掲載するほどだ。
そんなミレニアル世代の多くは、憤りをあらわにする。「記事はミレニアル世代に責任を押しつけるためのデタラメだ」と。
Business Insiderは先日、「ミレニアル世代はカジュアルレストランを廃業に追いやっている」という記事を掲載した。上記は、その記事に対するある読者のコメントだ。
ミレニアルは、「殺人鬼」世代だって。
( エコノミストの記事「ミレニアル世代はなぜダイアモンドを買わないのか?」を受けて)
エコノミストは、ダーツを投げて「ミレニアル」と「ダイアモンド」のところに当たったから、その2つを結びつけて5000ワードの記事をでっち上げただけなんだろ?
ミレニアル世代がレストランチェーンでの食事や住宅の購入などを一斉にやめれば、無視できないほどの悪影響が生じる。売り上げが落ちたり、人員整理が行われたり、場合によっては企業は倒産するだろう。
しかし、ミレニアル世代に責任はないという主張は、ある意味正しいだろう。
ミレニアル世代の嗜好が、多くの企業や業界に破壊的な影響をもたらしてきた。しかし、彼らは、収入がなかなか伸びない状況や、彼らの経済的な態度を形づくってきた環境について責任はない。代わりに、非難されるべき相手を探すなら、それは目先の利益を追い求めるという他の世代には見られない、特異なお金の使い方をし、さまざまな事態を引き起こしてきた世代、そうベビーブーマー世代だ(アメリカで1946~64年の間に生まれた世代)。
世界金融危機(2007年〜)が起きたころ、ミレニアル世代はティーンエイジャーや大学を卒業するところだった。彼らは、大人になろうとしている時期に、経済的な苦境に陥る親たちの姿を目撃したのだ。
REUTERS/Robert Galbraith
「私たちは金融危機で、心に大きな傷を負ったのだと思う。金融危機で、5世帯のうち1世帯が極めて深刻な打撃を受けました。そうした世帯の子どもたちのこと、そして金融危機で人々がどれほど深刻な影響を被ったかを考えてみてください。一世代の消費習慣が丸ごと、永久に変わってしまったと考えてもおかしくはない」
モルガン・スタンレーのアナリストであるキンバリー・グリーンバーガー(Kimberly Greenberger)氏は、そう語った。
そのためミレニアル世代は、前の世代と比較して、お金をそれほど自由に使わないのだと同氏は加えた。
ミレニアル世代は洋服を正規価格で買おうとしないので、メイシーズやシアーズなどの小売店が打撃を受けている。また、彼らは株式投資に手を出そうとしない。投資が失敗する様子を見てきたからだ。彼らがお金をかけてディナーを楽しむ時は、特別な気分が味わえる小さなレストランを選ぶことが多い。チェーン展開するレストランは、代わり映えしないからだ。
ミレニアル世代は、ベビーブーマー世代の経済的判断や消費習慣に反発している。そのことは、彼らがなぜ、従来のトレンドをビジネスのよりどころにしている企業を破壊しかねない選択を行うのかを理解する上で、手掛かりとなる。しかし、ミレニアル世代が傷を負っているのは心だけではない。
負債を抱える学生の増加に抗議して、街頭演劇に参加するデモ隊(ニューヨーク市のユニオンスクエアにあるウォールストリートにて)
Reuters/Andrew Burton
Institute for College Access and Successによると、大学を卒業した学生10のうち7人が、平均3万ドル以上の学生ローンの返済を抱えている。これは、ローンを組んだものの卒業に至らなかった学生たちの膨大な負債額を省いた数字だ。そして、学生ローンの返済額が急増しているにもかかわらず、ミレニアル世代の収入は十分には伸びていない。大卒だろうと、大学に行かなかった者であろうと、それは同じだ。
こうした経済的負担を抱えていては、ミレニアル世代は貯蓄もままならない。金融情報サイト「GOBankingRates」によると、18歳~24歳までの「ヤングミレニアル世代」の31%、25歳~34歳までの「オールドミレニアル世代」の33%は、貯蓄口座の残高がゼロだ。
借金を抱えている上に、貯蓄も少ないとなれば、家や車などの大きな買い物が難しいのも無理はない。加えて、金融機関からの信用がないこともあり(これも不況のせいだ)、ミレニアル世代は、モノではなく体験や、すぐに楽しめることにお金を使う傾向が強い。先行きの不透明な未来に備えて、貯蓄しようとは思わない。
だから、贅沢をするとしても、せいぜい10ドルのアボカドトーストを食べる程度。まとまった額を投資したくても、多くの人は金もないし、経済状況に対して不安を抱いている。
つまりは、ミレニアル世代は、いくつかの業界を崩壊させている。企業は、ミレニアル世代の嗜好に適応するか、さもなく滅びるかだ。
しかし、「ミレニアル世代が、またなにかの業界を崩壊させた」という見出しがメディアを飾った時は、誰が、どのようにしてミレニアル世代をそんな風にしたのかを考えるべきだろう。
取材協力:Mary Hanbury
(翻訳:遠藤康子/ガリレオ)