10.5インチiPad Pro実機 現地レビュー—— iPadはノートPCの夢を見るか?

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これまでタブレットを買った人の多くが「これ、仕事に使えるかも」と思ったのではないか。思えばタブレットというジャンルは、「重たいノートパソコンから卒業し、タブレット1枚で仕事をこなす」—— そんな夢を抱いて新しい製品を買ったものの、結局「大きなスマホ」程度の活躍しかできず、自宅のリビングに置きっ放し、ということを繰り返してきた。

アップルは6月中旬より、iPad Pro 10.5インチを発売する。価格は、10.5インチモデルの最も安価なWi-Fi版/64GBで7万5384円、LTE版/64GBは9万1584円だ。

10.5インチ版というのは、実は長期間、噂になってきたデバイスだ。ただし、世間では「9.7インチが10.5インチになるのね」という程度でしか受け止められていなかったはずだ。実際、6月5日にアメリカ・カリフォルニア州サンノゼで開催された開発者向けイベント「WWDC2007」で披露された時も「噂通りだね」という反応で終わるはずだった。

しかし、今回のアップルはこれまでとは違うアプローチを採った。iPad Proをハードウェア的に進化させるだけでなく、iOS11に、パソコン代わりにも使えそうな機能を盛り込んだのだ。iOS11のアップデートで、iPadは本当に「パソコン代わりに使えるタブレット」になるかもしれない。そんな淡い期待を抱かせてくれる。

「10.5インチ&120Hz駆動」が使い心地を最大化する

まず、ハードウェアだが、従来の9.7インチのiPadに比べて、本体サイズはほんの少しだけ大きくなった。とはいえ、これまで9.7インチを所有していた人からすれば充分、許容範囲だと思う。画面が10.5インチにサイズアップし、ウェブの閲覧性などは格段に見やすくなっている。

iPad Proの比較

左が10.5インチ、右が従来の9.7インチ。数字にして0.8インチの差でも、比べると結構サイズに違いがあることがわかる。

通常、ディスプレイは60Hzで、1秒間に60回、表示を書き換えている。iPad Proでは、最大120Hzのリフレッシュレートでの表示を可能にしている。これにより、例えばウェブページをすばやくスクロールした場合でも滑らかに表示してくれ、日常の使い心地が確実に向上する。

この120Hzでの表示は、最近であればシャープのスマホ「AQUOS R」でも導入されているのだが、大画面であればあるほど、この効果を体感しやすくなっていると思う。ちなみにこのリフレッシュレートはコンテンツなどに応じて変化し、画面に動きがない場合は24Hzにもなり、バッテリー寿命を延ばすような働きも行う。

また、リフレッシュレートが高まったことにより、Apple Pencil(アップルペンシル)の反応もさらに向上し、より紙に書いている感覚に近づいた。Apple Pencil側は進化していないのだが、ディスプレイが良くなったことで、書き味が良くなった。

iPad Proがロック画面の時、Apple Pencilのペン先でタッチすると、アップル純正のメモアプリがすぐに起動するようになった。大事なメモをすぐに取りたいというときに役立つ。

細かな話をすると、「すぐに書けるメモ」の起動時に画面ロックは解除していない。だから直近に使ったメモだけが読み書きできる形だ。ほかのメモにアクセスしたり、他の機能を使うには、ロックを解除する必要がある。このあたりは従来からある、ロックを解除しなくても、カメラ機能が起動する振る舞いと同じと考えるとわかりやすい。

アップル純正のメモアプリの使い勝手が良くなるだけに、Evernoteなどのアプリは出番が減ることになるかもしれない。

iPad Proのアクセサリー

iPad Pro発表と同時に追加されたアクセサリー。レザー製のレザースリーブ(1万7064円)にはペンも収納できる。ペン単体のケース「Apple Pencilケース」(3456円)も新たに追加された。

iPad Proアクセサリー

新しいスマートカバー。左がレザー製の高級版(9504円)、右は通常版(6264円)。

iOS11でiPad Proはどこまで「ノートPC的」に使えるようになるのか?

次は本題の「iOS11の新機能」だ。これまでiPhoneやiPadは、フォルダ管理やファイルと言ったものを極力、遠ざけてきた。パソコンのディレクトリ構造などがないために、確かに初心者には親しみやすいものになっていた。

しかし、パソコンを使っているユーザーからすればなんとなくまどろっこしい操作性だったりもした。iPad上で、2つのアプリでファイルをやりとりしようと思ったら、一度、OneDriveやGoogle Driveなどクラウドを経由するのが最も近道という、便利なのか不便なのかよくわからない状態になっていた。

iPadはアプリの起動が速いというところは魅力だが、このファイルのやりとりに関しては、長年、イライラさせられてきた人もいるだろう。この使い勝手の悪さが結局、「iPadは仕事では使えない。生産性が上がらない」という評価につながっていたのだ。

今回、アップルは、iOSのUI/UX設計そのものに大きな方向転換を決断した。

ファイル管理アプリを標準搭載し、アプリ間でのファイルのやりとりをスムーズにしたのだ(大仰に語ってみたが、実際は単にパソコンと同等にしただけに過ぎないのだが)。

iPad ProとiOS11

iOS11(β版)のファイル管理アプリ画面。iPad Proで動かすと、まさにMacのノートPCのようだ。左ペインを上から見ていくと、iCloudドライブやDropboxが、まるでiPad内のフォルダーかのように表示されている。

ファイル管理アプリにより、ファイルのコピー&ペーストができるようになった。複数のアプリをコピーしたいときは、例えば左手の指でファイルを押し続けながら、もう片方の右手で別のファイルを選んで左手で押し続けているファイルに近づけると、複数のファイルとしてまとまっていく。あとはコピーしたい先に持って行けば、コピーされていく。マウスやトラックパッドがないので、「両手」を使って操作していく。

iOS11のメール操作

iPad Proのメールへの添付ファイル操作。自然なドラッグ&ドロップ操作ができるので、ユーザーにとっては「やりたいことがそのままできる」に近づいた。

ウェブとメールの画面を左右同時に開き、ウェブ上の画像やURLをドラッグ&ドロップして、メールに添付する、ということも可能になった。

これまでは、ウェブ上の画像は、まず写真として保存し、写真アプリを開きメールに添付するメニューを選んでメールを書いていくという煩わしい作業であったが、iOS11ではそうした操作は不要になる。

ファイル管理アプリで驚いたのが、さまざまなクラウドストレージにも接続できるようになっている点だ。しかも、「最近使ったファイル」の一覧表示機能では、「接続しているすべてのクラウドストレージにある、最近使ったファイル」を寄せ集めて表示してくれるのだ。同じくファイルの検索もすべてのクラウドを横断的に探してくれるので、ファイルがあちこちのクラウドストレージに分散していても、iOS11ならまとめて探せるわけだ。実に効率的に目的のファイルを探し出してくれるようになった。

iPad ProのDock

iOS11のホーム画面。Macを見慣れている人には逆に違和感がないほどだが、画面下にごく当たり前かのようにDockが表示されている。ここからアプリを呼び出したり、タスクの切り替えなどができる。ただし、時間帯や使う場所によって「おすすめのアプリ」を表示する機能があり、これは現行のmacOSよりも進化している。

そして、iOS11を組み合わせたiPad Proの画面構成は、MacOSに近づいてきた。画面下では、Macでおなじみのアプリランチャー機能「Dock」が使えるようになり、よく使うアプリを横一列に収納できるようになった。10.5インチのiPad Proなら最大16個並べることが可能だ。そのうち、右の3つはサジェストとして、最近使ったアプリや、時間帯や場所によってよく使うアプリ、Macなどと連携するアプリなどが自動的に表示される。

ひとつのアプリが全画面表示されている際、Dockからアイコンを引き出すと、そのアプリが起動する。「Slide Over」として、さっと中身を見るだけにもできるし、さらに作業をしたければ「Split View」として画面を分割して2つのアプリを同時に使うということも可能だ。Split Viewで2つのアプリを分割して表示しつつ、さらにその上にSlide Overでアプリを表示させ、さらにPicture in Pictureで、動画再生を小窓で表示するということもできる。つまり、最大4つのアプリを同時に表示することができるのだ。

iOS11のスプリットビュー画面

複数枚の画面を表示したところ。センターの黒い縦線が、画面を左右分割するスプリットビューの分割線。右のビューでは、画面の上にAppleMusicの画面を重ねている。

また、Dockのところから上にスワイプすると、開いているアプリをサムネイル状に一覧表示できる。アプリを切り換えたい時も従来に増してスムーズになった。

iPad Pro

Dockをスワイプして呼び出すアプリタスクの切り替え画面。画面中央から左にアプリ、右側はiOSの各種機能になっている。

個人的に嬉しいのはスマートキーボード(Smart Keyboard)に日本語(JIS)版が登場したことだ。これまでは英語版しかなく、特にエンターキーが小さいのが不満だった。実際に購入して使っていたこともあったのだが、従来のUSキー配列のスマートキーボードは使いづらくてすぐに使用をやめてしまった。代わりに、仕方ないのでMac用のMagic KeyBoardを持ち歩き、iPad Proと組み合わせて使っていたのだった。

今回、スマートキーボードに日本語(JIS)版が出たことで、Mac用のMagic KeyBoardとおさらばできるのはかなり嬉しい。

iOS11との組み合わせによって、iPad Proはかなりパソコンの使い勝手に近づいてきた。ただ、「素直にiPad Proではなく、ノートパソコンを持ち歩けばいいのではないか」と思えなくもない。

しかし、iPad ProのいいところはいつでもどこでもLTEにつながるという点を忘れてはならない。Wi-Fiを探したり、ルーターを持ち歩いたり、スマホのテザリングをオンにしなくてもいい。このちょっとしたことだが、ストレスなくネットにつなげるというのが、体験としては意外に重要だったりする。

コンパクトで携帯性に優れ、ペンが使えて、コピー&ペーストもしやすく、日本語も打ちやすくなって、いつでもどこでもネットにつなげられるiPad ProとiOS11。今度こそiPad Proが「仕事に使えるタブレット」として、我々を裏切らないことを願うばかりだ。


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。

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