「アメリカが止まった日」FBI前長官証言が暴露したトランプ氏の本質

「彼」が入場すると、テレビ画面から、カメラの連続シャッター音が機関銃のごとく轟いた。

アメリカ東部時間6月8日10時から中継された、米連邦捜査局(FBI)前長官のジェイムズ・コミー氏の証人喚問を見るため、半休や休暇を取った市民もいる。首都ワシントンのバーは、ウォッチパーティを早朝から開いた。多くの人が中継を見ただけでなく、証言に驚愕し、「アメリカが止まった日」となった。

Mark Wilson/Getty Images

政治色に左右されるべきではないアメリカ最高位の捜査機関トップだったコミー 氏は、今年1〜4月の間、トランプ氏と5回に及ぶ1対1での接触を強いられた。コミー氏は、ロシア政府がトランプ氏の選挙陣営と共謀し、2016年大統領選挙に影響を及ぼした可能性について、フルスピードの捜査を指揮していた。

予想もしなかったトランプ氏の要請、原則を無視した接触。普通の市民なら心臓が縮みあがるような、前代未聞の大統領との対話が、コミー氏の証言で浮かび上がった。

同委員会は前日の7日、コミー氏が、大統領との3回の単独ミーティング、そして、大統領から直接かかってきた2回の電話での会話の内容を記した冒頭証言を文書で公開した。冒頭証言の時間を節約し、議員が、その内容と背景について、突っ込んだ質問ができるようにするためだ。

その内容は以下だ。

  1. 今年1月6日、トランプタワーでの情報当局ブリーフィングの後、1対1の会談。これは、あらかじめ当局者が予定し、FBIが行なっているロシア疑惑捜査について個人的にレクチャー。
  2. 1月26日、ホワイトハウスでの夕食に招かれ、会談。コミー氏は、他にも客がいると思い出かけたが、大統領と2人きりだった。トランプ氏「私には、忠誠が必要だ。忠誠を期待している」(長い沈黙。コミー氏は身じろぎもせず、表情も変えないようにした)。コミー氏「私は誠実です」。トランプ氏「それでいいんだ。誠実な忠誠が欲しい」
  3. 2月14日、ホワイトハウス大統領執務室でブリーフィングの後、トランプ氏に残るように言われた。 トランプ氏(ロシア政府高官との接触について報告を怠り解任された大統領補佐官マイケル・フリン氏について)「彼はいいやつだ。これ(=捜査を)見送って欲しい」
  4. 3月30日、トランプ氏から直接電話。4月11日、トランプ氏から再度、直接電話。 5月9日、トランプ氏は、コミー氏を突然解任した。

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「なぜメモを残したのか」 と尋ねる上院議員ら。オバマ前大統領と4年間で2回あった単独ミーティングでは、コミー氏はメモを残していない。同氏は、こう答えた。

「正直なところ、私たちのミーティングの本質について、彼(トランプ氏)が嘘をつくかもしれないと、懸念した。そこで、文書にしておくことが重要だと思った」

コミー氏は、メモが将来必要であることも予測し、ミーティングの後、FBIの車両の中で、パソコンに打ち込んでいる。

「政府内で、共有できるようにすることが必要だと思った。こう考えた。『(大統領が捜査を指揮するFBI長官に単独で会談するのは)不穏な動きでもあり、FBIの仕事にとっては重大事だ。文書にする必要がある』と」

「私の常識からみると、トランプ氏は、私がFBI長官の任にとどまる見返りに、何かを得ようとしている、と思った」

大統領執務室に残された際は、大統領選挙の捜査をしているFBI長官が2人きりになる「異常」を懸念したセッションズ司法長官と、クシュナー大統領上席顧問(トランプ氏の娘婿)が、最後までコミー氏の横でうろうろしていた。しかし、トランプ氏に退室を要請されたという生々しい証言も含まれる。以下は、証言のハイライトだ。

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Q「大統領の言動は、司法妨害に当たるのか」

コミー氏「それを決めるのは、特別顧問ムラー氏の仕事である。私は、非常に懸念される、遺憾だと思った」

Q「トランプ氏や側近が、FBIは十分に職務を全うしていないという批判をどう思うか」

コミー氏「嘘だ。単純明白に」

Q「フリン氏への捜査を見送るように言われた際、なぜ、大統領に『あなたがしていることは、間違っている』とその場で反論しなかったのか」

コミー氏「私がもっと強かったら、そうしていただろう。ただただ、驚愕してしまい、そのままにしてしまった。もし同じことが再び起きたら、次はもう少しうまく乗り切れるだろう」

メモや証言から浮かび上がるトランプ大統領は、政府の手続きは気にもかけず、自分の事業に立ちはだかる障害物を個人的なディール(交渉)で排除しようとする依然として「商人」の顔。トランプ氏を支持する市民は、まさにこういう常識はずれな彼が好きなのだ。

しかし、相手は、独立の捜査が保証されるべきFBI長官で、大統領 と捜査当局とのコミュニケーションに慎重になるのは、当たり前だった。ここでも、空気を読めない大統領の姿が浮かび上がる。

Win McNamee/Getty Images

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