調査レポート:バブル期以上の人手不足で日本の働き方は悪化?仕事終わらない、休めない‥

街中のビジネスパーソンたち

働き方改革ブームの一方で人手不足が職場を襲う

撮影:今村拓馬

人手不足や採用難で、日本の職場では仕事が増えて休みもとりづらくなっている —— 。長時間労働削減など働き方の見直しに、これまでになく関心が高まるのとは裏腹に、業務負荷が増えたり休暇がとれていなかったりなど、仕事の現場は前年よりも悪化している実態が、リクルートホールディングス(HD)傘下のリクルートワークス研究所の調査で明らかになった。

若年層男性で仕事の負荷増大

リクルートワークス研究所は全国15歳以上の男女約5万人を対象とした「全国就業実態パネル調査」を1月に実施。2016年の働き方を振り返ってもらった。そこで「仕事量や負荷が適切である」かを示すスコアが、前年比0.9ポイント低下した。これは仕事量や負荷の状態が、前年よりも悪化したことを意味する。

男女共にすべての年代で前年よりもスコアが低下したが、女性よりも男性で低く、とくに若年層(15〜24歳)の男性で前年比マイナス3.3ポイントと低下幅が著しく大きい。若年層男性で、より「仕事量や負荷が前年よりも多くなっている」との結果が出た。

仕事量が増えたなどの棒グラフ

職場の余裕がなくなっていることをうかがわせる結果が出た

出典:リクルートワークス研究所

リクルートワークス研究所の戸田淳仁・主任アナリストは、4月の有効求人倍率がバブル経済期の水準を超えていることや、同研究所の調査で2017年卒の大卒求人倍率が1.74倍と、採用しづらくなる水準とされる1.6倍を超えていることなどを踏まえ「人手不足や採用難もあいまって、既存の従業員の担当する業務量が増加している」とみる。

ほかにも「休暇が取得できている」が前年比マイナス0.6ポイント、「OJT(職場教育)の機会がある」も前年比マイナス1.7ポイントと、それぞれ低下した。職場の余裕のなさが浮き彫りとなる結果が出た。

残業で補う中小企業と大企業で格差

調査では、とくに中小企業でワークライフバランスが悪化している点に注目する。「残業時間がない、短い」のスコアを、従業員規模別に分析したところ、従業員1000人未満の中小企業ではマイナス、つまり「残業時間が増えている」との結果が出た。これに対し、1000人以上の大企業では前年よりも残業時間の改善がみられたという。

休暇取得は、企業規模に関わらず悪化していることから、戸田氏は「業務負荷が増える中で、大企業では休暇が取りづらいとはいえ、残業時間を減らす方向で生産性を高めている可能性がある」とみる。一方、中小企業では、仕事量が増えている事態を、残業や休日出勤で対応していることがうかがわれるという。

制度よりも業務プロセス改革を

戸田氏は「働き方改革がブームになり、単なる残業時間の削減や在宅勤務可能にするなど、制度に目が行きがちだが、本質は業務プロセスの改善にある」と、働き方改革の視点の偏りを指摘。「会議や無駄な仕事をなくす、自動化するシステムへの設備投資など、生産性を上げる業務プロセス改革を行うべき。そうでなければ、今後も人手不足がずっと続く中で、職場が立ち行かなくなる可能性がある」と、警鐘を鳴らす。働き方改革が、単に残業時間短縮に終始してしまっては「意義や実効性も失われる可能性がある」との見方だ。

リクルートワークス研究所の今回調査では、人手不足が働き方改善の重しになっている事態が見えてきた。実際、日本の人手不足は深刻さを増している。

4月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.03ポイント上昇の1.48倍で、バブル経済期のピークだった1990年7月(1.46倍)を上回った。1974年2月以来、43年2カ月ぶりの歴史的な高水準だ。完全失業率も「完全雇用」とみなされる3%を切り、2月以降は22年ぶりの2%台で推移している。人手が確保できずに受注を見直す建設業界や、サービス縮小の宅配便業界など、経営に支障が出るほどの人手不足に悩む業界が、じわじわと増えつつある。

そんな中で単純に「残業するな」「早く帰れ」といった表面的な「働き方改革」を遂行すれば、持ち帰って仕事をしたり、休日返上したりといった本末転倒の事態になりかねない。働き方改革は、仕事の効率化や生産性を高める工夫といった、第2ステージを迎えている。

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