同社のデータ・インサイト・サミットで語る、Power BIの責任者ジェームス・フィリップス(James Phillips)氏。
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2014年、サティア・ナデラ氏がマイクロソフトのCEOに就任した後、最初にリリースした製品が「Power BI」と呼ばれるツールだった。そしてこのツールは他の誰よりも、ナデラ氏にとって必要不可欠なものになった。なぜなら、ナデラ氏はPower BIを使って、マイクロソフトを舵取りしているから。
Power BIのコンセプトはシンプルだ。エクセルから会計システム、セールスフォースやオラクルなどのソフトウエアまで、どんなデータもチャートやグラフに変換し、今この瞬間、会社がどうなっているかを教えてくれる。
6月12日、シアトルで開催された同社のデータ・インサイト・サミットにおいて、同社バイスプレジデント兼Power BIの責任者ジェームス・フィリップス(James Phillips)氏は「Power BI Premium」のリリースを発表した。大企業にも対応可能なハイエンドツールだ。同氏は、マイクロソフトが力を入れているPower BIを、より多くの人に使ってもらうことが目標だと語った。
「Power BIはマイクロソフトの社内ではOffice 365のメールよりも広く使われている。もはやPower BIは仕事に欠かせない」
野火のように広がっている
ナデラ氏が最大の愛用者となっているPower BIは、マイクロソフトの社内でも「野火のように」広がっているとフィリップス氏。
同氏の言葉を借りると、マイクロソフト社内でPower BIが起動していないPCを見つけることはできない。
「我々は全ての業務にPower BIを活用している。CEOのサティアを筆頭に全員だ」
Power BIの画面。エクセルから会計システム、セールスフォースやオラクルなどのソフトウェアまで、どんなデータもチャートやグラフに変換。会社の今の状況を把握できる。
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ナデラ氏の右腕で、クラウド部門を統括するスコット・ガスリー(Scott Guthrie)氏は、出社するとまずPower BIをチェックし、同社のクラウドビジネスの状況を確認する。CFOのエイミー・フッド(Amy Hood)氏は1580億ドル(約17兆円)に上る同社の資産をPower BIで管理している。Surfaceのハードウエアチームはサプライチェーンのチェックに使い、Office部門はアクティブユーザーの状況確認に使っている。カスタマーサービス部門もPower BIを活用し、問題の解決状況を管理している。
マイクロソフトがこれほどまでにPower BIを使っているという事実は、実は同社の営業努力の賜物だとフィリップス氏は語った。同氏は最近ビル・ゲイツ氏に対して行った2時間のPower BIの進捗報告ミーティングを振り返り、ゲイツ氏に一般的な使い方ではなく、彼自身がいかにPower BIを使用しているかを見せ、そのインパクトの大きさを伝えた。
「彼はとても気に入ってくれた。Power BIの大ファンになった」とフィリップス氏は語った。
理解不足という懸念
この逸話の価値は高いと、フィリップス氏は考えている。
なぜなら、Power BIの技術そのものは確かなもので、調査会社のガートナーもタブローやオラクル、セールスフォースなどの競合ツールとの比較で、Power BIに高い評価を与え、その「実行力」を評価している。だが、より大規模な市場において、Power BIは「うまく理解されておらず」、顧客は「マイクロソフトの中の小さなプロジェクトの1つに過ぎない」と考えているのではないかとフィリップス氏は懸念しているからだ。
マイクロソフトはPower BIのユーザー数を公表しておらず、ユーザーが作成した「データモデル」(データ集計用テンプレートの正式呼称)の数が1150万に上り、毎日、3万のデータモデルが新規作成されていることのみを公表している。
ゲイツ氏とナデラ氏。
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Power BIは現代のビジネスにおいて極めて重要な役割を担っており、それが証明されるのは時間の問題だとフィリップス氏は考えている。マイクロソフトの自社製品であるOffice 365、CRMツールのDynamicsなどは膨大なデータを生み出し、それらを有効活用していくことは至難の業だ。さらには、サーモスタットやカメラ、その他のセンサーなど、インターネットに接続されたデバイスから、大量のデータがITシステムに送られ始めていることは言うまでもない。
Power BIはこれらのデータを全て取り込み、さらにセールスフォースやグーグルアナリティクス、オラクルデータベースなどのデータも合わせて、誰にでも理解できる形で提供してくれる。フィリップス氏はPower BIを「Office 365とDynamicsを下支えする基盤」と呼ぶ。
「この会社のイノベーションのスピードは、危険なほど速い」
フィリップス氏は、これからも製品の完成度をさらに高め、Power BIの価値を明確にし、Power BIがマイクロソフトの目指す方向性だとアピールしていくと述べた。
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※source:Microsoft
[原文:Microsoft's top execs use this app almost as much as they use e-mail]
(翻訳:まいるす・ゑびす)