1995年、NSX-T
Acura
オラクルの元CEOラリー・エリソン氏のエピソードはさまざまな媒体で紹介されている。特に、エリソン氏が豪華な大型ヨットやジェット戦闘機、ハワイの島などを買ったエピソードは、世間の注目を集めてきた。
しかし、もっと面白いのは、エリソン氏がプレゼントとして選んだモノだ。
エリソン氏は親日家として知られており、京都に所有する8600万ドル(約95億円)とも言われる別荘には、500点近い日本の芸術作品が所蔵されている。同氏の日本びいきを思えば、エリソン氏が日本を代表するスーパーカー、ホンダ NSXに惚れ込んでいることも頷ける。
実際、エリソン氏はNSXが発売されていた15年間、毎年、この8万ドルのスポーツカーを数台購入しては、友人や優秀な社員に贈り物やボーナスとして贈っていたと、Complex magazineやUSA Todayは報じている。
20年経った今でも、カッコいい。
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エリソン氏がNSXに惚れ込む理由はどこにあるのか? 理由の1つは、その歴史だ。
80年代後半、ホンダはカーレース、特にF1の世界で無敵と呼ばれていた。ホンダのF1エンジンは、コンストラクターズ部門で6年連続、ドライバーズ部門で5年連続で総合優勝を獲得した。
この成功を記念して、ホンダは「完璧なスーパーカー」を作ろうと考えた。目指したのは、速さ、ハイテク、軽量、そして正確なハンドリング。また当時、ヨーロッパのスーパーカーには見られなかった、高いレベルの信頼性と使い勝手の実現にも挑んだ。
2004年モデルに搭載された3.2リッターV6エンジン、 290馬力を誇る。
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エンジンは3リッターV6、F1で培われた技術とノウハウが注ぎ込まれた(後期モデルで、3.2リッターV6に)。ボディは、ハンドリング性能にこだわり、軽量なアルミニウムが採用された。
NSXの開発にあたって、ホンダは現役のF1レーサーにアドバイスを求めた。NSXのシャーシは、F1界のスーパースター、在りし日のアイルトン・セナ(1994年にレース中の事故で他界)が手がけた。
伝説のF1ドライバー、アイルトン・セナがプロトタイプのテストドライバーを務めた。
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1990年から製造中止となった2005年まで、熱狂的な人気を集めたNSXは、2002年にヘッドライトのデザインをマイナーチェンジした以外は、当初のデザインのまま製造された。つまり、NSXは軽量かつ精巧という当初の開発テーマに忠実であり続けた。
2004年モデル
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ハイパワーなスーパーカーが全盛の時代に、NSXは良識的な日本の流儀を体現した。V12エンジンやターボや4WDを採用せず、当初はパワーステアリングも搭載しなかった。純粋に、運転する楽しみを提供した。
なぜ、ラリー・エリソンはNSXに惚れ込んでいるのか? ホンダの、ヨーロッパやアメリカの競合に対する「やってやる!」という挑戦的な姿勢にあるのかもしれない。
大胆で攻撃的なビジネススタイルで知られるラリー・エリソンだからこそ、何か共感する部分があったのかもしれない。
[原文:This is the supercar Oracle founder Larry Ellison used to give away as gifts]
(翻訳:忍足 亜輝)