写真: Masahiro Honda
シリコンバレーが生んだスタートアップ・アクセラレーション・プログラム「500 ACCELERATOR」の神戸版、500 KOBEが今年もやってくる。
昨年は206社応募、参加採択企業は21社。講師(メンター)には過去に1000億円級の資金調達をした起業家(昨年)も揃う。
西海岸につながるスタートアップの登竜門からは2017年、どんなサービスやプロダクトが生まれるのだろうか?
500 KOBE ACCELERATORとは
昨年の500 KOBEの参加者。
提供: 神戸市産業振興局
500 Startupsは、シリコンバレーを拠点に世界60カ国1800社以上を支援する、世界で最もアクティブなシード投資ファンドだ。2015年、総額約33億円の日本法人を設立。その500 Startupsが運営する、スタートアップアクセラレーションプログラムの神戸版が500 KOBEだ。
特徴は、グローバルチームによるマンツーマン指導を含めた5週間にわたるシリコンバレー流の実践的なプログラムにある。昨年は日本だけでなくタイ、フィリピン、韓国、中国など、国外の起業家も参加した。
メンターは全員シリコンバレーでの起業経験者
「スタートアップにとって甘い助言はなんの得にもならない。徹底的に突っ込んだフィードバックがもらえる」と松村氏。
写真: 西山里緒
「シリコンバレーの最新のビジネス理論が、現役の起業家から聞ける。あそこにいれば八百屋さんでも強制的に成長させられると思う」
そう語るのは、昨年の参加者でホテル・旅館の料金比較サービスMagicPriceを運営する株式会社「空」CEOの松村大貴氏だ。 総勢15人いたメンターは全員、シリコンバレーでの起業経験者。
会社やサービスを複数回つぶした経験がある人(貴重な経験だ)、イグジットを済ませていまはエンジェル投資家として活躍している人など、今でも世界で活躍する現役選手だ。
スタートアップが陥りがちな問題の多くは、彼ら自身がすでに経験したもの。だから必然的にアドバイスは実践的なものになる。起業経験のない大企業の役員などがアドバイスをすることが多い日本のアクセラレータプログラムとは大きく違う。
シリコンバレー流、超速PDCAサイクル
「オマエ(会社に)必要?と言われました(笑)」と石田氏。
写真: 今村拓馬
高級飲食店予約サービス、ポケットコンシェルジュを運営する株式会社「ポケットメニュー」オフィスマネジャーの石田誠也氏も、同じく昨年の参加者だ。
石田氏が500 KOBEで圧倒されたのは、そのスピード感だったという。
「サービスの説明をしていたら、数十秒くらいで話を遮られるんです。『オーケー、オマエの課題はよくわかった。こことここはクソだから直せ。ここはまあまあだから、ここを伸ばそう』」
「『とにかく時間がもったいないから早くしろ』『30分話すよりも、5分で話してあとの25分をサービス改善に使え』はよく言われましたね」
シリコンバレーのスタートアップカルチャーでは、「テクノロジーが世界をいい方向へ向かわせる」というマインドのもと、革新的なサービスに人も資金も集中させる。なにが必要でなにが無駄かを徹底的に追求する、タブーなしの鋭いフィードバックもシリコンバレー流だ。
「国内向けのサイトはいらない、国内向けの人材もっといらない。いま20人いるみたいだけど10人まで絞らないと死ぬよ、と」(石田氏)
日本のアクセラレータプログラムだと、テーマが決まっていたり企業と提携していたりといった制約があることも多い。メンターから的の外れたアドバイスをされることも。500は文字通り世界に通用するビジネスを生み出すことを目的として、参加者もメンターもプログラムに取り組む。
2分以内で「ビジョンだけ話せ」
講師は起業家かつそれぞれの分野のスペシャリストだ。
写真: Masahiro Honda
特徴の一つがプログラム中を通したピッチ(投資家向けの短いプレゼンテーション)トレーニング。スタートアップにとって何より重要なことが、投資家にサービスをアピールし、投資を得ることだからだ。
「まず言われるのが『長すぎ』。基本は全部ひっくるめて2分以内。事業内容からキーマン、敵までメンターに説明したら『ビジョンだけ話せ』と。メンバーに魅力がないし、サービスに数字がないから。あとは英語がヘタ、発音直せと言われたり」(石田氏)
「実は起業家って内向的で、プレゼンが苦手な人が多い。そこを徹底的に叩いて良くしてくれる。最終日のデモ・デーには実際に投資家へプレゼンをするから、こちらも本気になれる」(松村氏)
ピッチをすることで、サービスの強みや数字、改善点が見えてくる。ピッチの練習をしながら、同時にサービスも良くしていく。
500が生むスタートアップのエコシステム
シリコンバレーのマインドセットに染まることのできる10週間。
写真: Masahiro Honda
500のモットーが、”Have Fun and Shit Done”。楽しんで仕事をしよう、その結果として社会を変えることができるようなサービスを生み出そう、というものだ。
夕方を過ぎればメンターたちはさっさとオフモードに入り、ビールを飲み始める。参加者もビールを飲みながらピッチの練習をして、お互いにフィードバックをする。楽観的に、そして徹底的に楽しみながら働きまくる。松村氏はそんなシリコンバレー・カルチャーに影響され、プログラムのあとには改善スピードが劇的に上がったという。
「参加者もメンターも、ポジティブ&サポーティブ。与えることが結果的に自分のためになることを、みんな知っているから」
500 KOBEに参加して、世界のスタートアップシーンのプレイヤーとつながれるネットワークの中に入れたのも大きなメリットだった。
「いまでもSlackチャンネルやFacebookグループで参加者とメンターとはつながってます。メンターとはFacebookやインスタでいいね!をする仲。シリコンバレーに行く時はこの人に頼ればいい、という人脈ができたのは大きい」
世界60カ国で展開するスタートアップアクセラレータのネットワークに、日本から飛び込めてしまう500 KOBE。 今年の夏、シーズフェーズのスタートアップにとって、神戸はアツい。
500 Startupsと神戸市が開催するアクセラレーション・プログラム「500 Kobe Accelerator」は2017年7月31日(月)〜 2017年10月10日(火)の10週間。応募は6月16日(金)まで。
BUSINESS INSIDER JAPANは500 Kobe Acceleratorのメディア・スポンサーです。