「やっぱり安倍政権しか選べない」東大生はなぜ自民党を支持するのか

都議選を前にして、安倍政権の支持率が急落している。共同通信が6月17日、18日に行った調査によると、安倍政権の支持率は44.9%で前回より10.5ポイント低下。不支持の43.1%と拮抗する状況になった。2012年の第2次安倍政権発足以来、安定して50%以上の支持率を保ってきた安倍政権。しかし、加計・森友問題のスキャンダルや「共謀罪」の強行採決などが大きな批判を浴び、ここにきて「安倍一強」とも呼ばれた政権人気が翳りを見せている

東京大学

撮影:今村拓馬

しかし一方で、若い世代に限れば、「いまの野党を見ていると、自民党しか選べない」という声も多い。

6月の世論調査では安倍政権の支持率に関しては、どのメディアでも軒並み10ポイントほど下落したが、世代別で見ると、30歳以下では依然として60%以上が支持している(読売新聞6月17、18日調査、全体では内閣支持率は49%)。

中でも注目すべきは、ここ数年で大きく伸びてきている東大生の自民党支持率だ。

東大生の自民党支持率

東大生の自民党支持率の推移。1988年~2017年

出典: 東京大学新聞社のデータをもとにBUSINESS INSIDER JAPANが作成

東京大学新聞社が毎年新入生を対象に行なっている調査によると、自民党の支持率は近年劇的に上昇している。今年4月の調査では36%に達し、過去30年で最高を記録した。特に70%前後を占めていた『支持政党なし・わからない』という無党派層の変化が大きい。2013年以降は10ポイント以上減り、その分自民党支持が増えている。

若者が現政権に肯定的であることについて、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の西田亮介准教授(社会学、メディア研究)は以下のように分析する。

若者が政治意識を醸成する場は「①家庭②教育③メディア」に大別できるが、日本では家庭で政治の話をする習慣がなく、教育で生の政治を学ぶ機会がない。マスメディアはかつては両論併記によって比較的中立的な立場をとっていたが、今は若者への影響力を失っている。その結果、現実的なメディアリテラシーを持たない若者がインターネットの過激な言説に触れ、批判的に捉えることなく受け入れてしまうという状況が続いている。自民党が野党に比べてメディア戦略に長けているという点も政権人気を後押しする。

実際のところはどうなのだろうか?

昨年から実施された「18歳選挙権」で初めて投票権を手にし、自民党を支持している東大生たちにその理由を聞いた。


現状肯定派

昨年のアメリカ大統領選挙で、民主党候補としてヒラリー・クリントン氏と競った超リベラルなバーニー・サンダース氏を支持したのは、大学生たちだった。欧米では「リベラル」は学生の特権とも言われるが、そんな世界の潮流に対しても東大生は冷ややかだ。政治観に関しても世界を基準にするべきではない、安倍政権は「日本らしさ」を重要視し、日本の国益を守る政策を打ち出しているから評価するとの声がある。

法学部3年・都内私立高校出身

東大生

「野党に任せられない」

「まず、企画の前提が間違ってますよね。東大生なんて高所得者層の子どもが多いんだから、現状肯定派なのは当然じゃないっすか」

「日本は再チャレンジができない社会と言われているけれど、さっしー(指原莉乃)と安倍総理は一度どん底に落ちたところから這い上がった。自分も一浪しているので、そこに共感する」

安倍政権はもっとも重要な安全保障政策と経済政策が「ちゃんとできている」という。

「教育とかは反対する人がいないから、そもそもイシューにならないですよね」

「国が好きっていうのに右も左もないのに、安全保障を議論すると、すぐ軍隊万歳、戦争賛成みたいに思われ、臭いものに蓋をするみたいな事なかれ主義が蔓延している。 欧米がいいからなんでも真似をするというのは思考停止。そういうのは後々、じわじわ悪い方向に行くと思います」

法学部4年・関東地方私立高校出身

東大生

「政治は"結果"」

今の世の中全員が正しいと思えることはない。政策全般において、負の側面も覚悟しつつ、正の側面を取るという価値判断をしている点が良いと思います」

安倍首相は経済がどん底の時代を引き継いで、批判はあっても以前よりは良くなったと感じている。

政治は結果がすべて。安倍総理は結果を出しているという点で評価できます

野党は理想的な政策を提案するが、どうやって結果を出すかという方法が現実的でない。

「リアリスティックな政治が正しいと思っていて、その点自民党はベター」

今後の日本については、なんとかしないとという危機感は持っている。

「その中で国民の生活をより良くする、守っていくために政治を進めてくれる党を選んでいます」

工学系研究科修士2年・関東地方公立高校出身

東大生

「理想論より政策の積み重ね」

「自民党は長く政権を担当しており、政治手法がブラックボックス化されている点はよくないと思いますね」

それでもこれまで自民党内でじっくり議論されてきた政策の積み重ねを評価している。

「理想は政権のチェック機能としての野党がいる二大政党制だけど、いまや自民党内の派閥だけでも十分かもしれないですね

自民党内も一枚岩ではないので、派閥間でうまくパワーバランスを取れば悪い方向にはいかないのではないかと分析する。

安倍政権下で日本の若者が内向きになっているという意見についても、「『日本らしさ』を追求するようになったんじゃないですか」と話す。

「自分が専攻する学問においても、西洋的な価値観を重視してきたことへの批判もありますし、世界がこうだから日本も、という風にはならないですね。世界ではなく、日本を支点に物事を考えています


消極的支持派

「他に選べる選択肢がないから、自民党」という消極的支持も目立つ。前出の西田氏はこう語る。

「日本は55年体制と選挙制度の影響で二大政党制の歴史が築かれてこなかった。二大政党制にもっとも近づいたのは民主党政権時代だが、それがうまくいかなかった、という認識が世の中に広まったことで、自民党以外の選択肢がないと若者が思ってしまっているのではないか」

工学部3年・地方公立高校出身

「たまにテレビで見ると、民進党などの野党は論理的じゃない感じがする。理論として正しいか否かではなく、ただ相手を言いくるめればいいという雰囲気が苦手

政治には全く興味がなく、ニュースも科学関連のニュースをチェックするくらいだ。それでも「自民党や安倍総理には悪い感じはしない」。

野党が好きではないので、一応自民党を選ぶかなって感じですね」。

文学部3年・都内私立高校出身

東大生

「ベストではないが選ばざるを得ない」

「東大に入る前、ちょっとだけ自衛隊にいたんです。その経験もあって、なんというのかな、ネットとかで政治をゲームみたいにとらえてるような人たちに嫌気が差して、この世の中に関わりたくなくなってしまって……

いまは西洋哲学を専攻しつつ、ラテン語、古代ギリシャ語を含めた6カ国語を独学で勉強している。

特異な経歴を持つ彼女が自民党を支持する理由は「ひとつずつ候補をつぶしていったら自民党しか残らない」。まず緊縮・増税派の共産党、社民党、民進党はNG。日本維新の会は地域党色が強すぎる。「高等教育無償化のために憲法改正」とうそぶくような自民党の正々堂々としない態度はどうかと思うが、国にとってもっとも重要な経済政策と国防政策を見るとやっぱり自民党だ。

それにしても、今の日本は保守と革新が転倒してますよね〜。それが面白いな、と


安倍首相好き派

自民党ではなく安倍政権、安倍首相が好き」という意見も出た。自民党や野党をうまく回し、目的を遂行している点に好感が持てるという。

文科一類2年・都内私立高校出身

東大生

「やるべきことはやっている」

「私の夢は、いつか勲章をもらい皇居に上がることなんですよ」

幼い頃からの夢のため、いまは国家公務員試験の勉強の真っ最中だ。

安倍総理は人柄の良さがにじみ出てますよね

2009年の民主党政権交代前(当時12歳)は「民主党に期待していて、自民党の有力議員が落ちる度にテレビの前で歓声を上げていました」。「それがまさか、こんなことになるなんてね……」。健全な二大政党制を望んでいるが、野党には期待が持てない。

経済政策についても「2006年の第一次安倍内閣の時は理想的なことばかり話していた気がしますが、今回は経済という国民の基盤となる部分にちゃんと力を入れている」。

自民党の「自主憲法を制定するという目標を忘れて政権を取ることだけに集中している点」や、議員の「上の人にとりあえず従っておこうという姿勢」は評価できないというが、「民主党政権時代の記憶が残っているうちは自民党の支持率は下がらないんじゃないですか」。

文科一類2年・地方公立高校出身

東大生

「現実的に軌道修正している」

小学生高学年くらいの頃はネットの影響で、かなり右寄りの思想を持ってましたね。だんだんと世界史の知見が広がって、今は柔らかくなりました」

現政権については、これまで左に寄り過ぎていたのを軌道修正しているだけで、他国と比べても問題ない範囲だと感じている。安倍首相についても「野党に動じずに、官邸中心に上手く政治を回している姿」が好きだという。

だが、2016年の参議院議員選挙では比例で維新の会に投票した。その理由は「地方自治体で独自の政策を作り、地域にあった政治が行われたほうがいいと思うから」。本人としても「Jターン(出身地の近くの地方都市に戻って定住すること)ならアリ」で東京にこだわるわけではない。それでも「成熟した自民党、子どもの維新という感じで、期待はしているけどまだ早いかなという感じです」。

(人物の撮影:西山里緒、分部麻里)

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