アメリカにおける「Amazon Echo」の世帯普及率の予測(単位:100万世帯)。BI Intelligenceが2017年2月に実施した調査に基づき試算。
BI Intelligence
アマゾンのスマートスピーカー「Amazon Echo」に搭載されている音声アシスタントAI「Alexa」は今後、サードパーティの「スキル」(音声認識対応アプリケーション)の使用時に、広告を配信しないことになった。
この変更に先立ち、VoiceLabsは開発者との契約を更新していた。VoiceLabsは、Alexa向けスキルの構築に有用なデータを開発者に提供している企業だ。
VoiceLabsは先月、サードパーティのスキル上で、広告配信を始めた。それが廃止されることで、スポンサードメッセージ(スキル起動時か終了時に配信される6~10秒の広告)に大きな影響が及ぶ。VoiceLabsによると、5月21日にアマゾンがポリシーの一部を変更したことで、VoiceLabsのスポンサードメッセージの目的である「ユーザーの好みに合わせた広告配信」が非常に難しくなったという。広告の導入はマネタイズの一手段であるため、開発者の収益プランに影響を及ぼす可能性がある。
ただ、広告を制限することは、開発者にとっては理想的でないが、アマゾンにとっては全体的に見てプラスになりそうだ。ユーザー体験を向上させ、最終的にはAmazon Echoが市場でトップを走る状態を維持できるからだ。
- 音声アシスタントAIの競合はAlexaを視野に入れているため、Alexaが市場でのリードを維持するにはアドバンテージが必要だ。2014年、AlexaがAmazon Echoに搭載されたとき、音声入力によりスマート家電をコントロールしたいと考える消費者たちの間で、大人気となった。BI Intelligenceの試算では、現在Amazon Echoはアメリカの約900万世帯に普及しており、この普及率は他の競合製品よりもはるかに高い。だが最近、グーグルとアップルはAlexaと競合する音声アシスタントAIを搭載し、スマート家電のコントールを可能にするハードウエアを発表。Alexaのユーザーの相当数を奪う可能性がある。
- 広告が配信されないユーザー体験は、Alexaと競合製品との差別化につながる。おそらくグーグルは自社のGoogleアシスタントに広告を組み込むだろう。同社の2017年第1四半期の売上高の約87%は、広告収入だ。アップルも同様に、サービスセグメントの強化戦略として、HomePodに広告を導入すると見られる。しかしユーザーは広告を邪魔に感じる恐れがある。したがって、アマゾンにとって広告のない製品を提供することは、新しいユーザーを獲得し、既存ユーザーの買い替えを思いとどまらせる一方策となり得る。結果として、Amazon Echoが市場競争でトップを走っている状態を維持することができるだろう。
[原文:Amazon shies away from Alexa ads]
(翻訳:まいるす・ゑびす)