一昔前まで「海外移住」と聞くと敷居が高いイメージだったが、インターネットでの情報検索や移動手段などのコストが低くなったことで比較的気軽に計画・実行できるようになったのではないだろうか。それでも、仕事や居住環境など現地に行ってみるまで分からないことも多く、なかなか足を踏み出せないでいる人がいるのも事実だ。 そこで今回、「バルト三国のシリコンバレー」と呼ばれているIT先進国エストニア発の移住情報Webサービス 「Teleport(テレポート)」を紹介したい。
一言でいうと、仕事や居住環境など個人の好み・スタイルに合わせて移住先を見つけてくれる都市マッチングサービスだ。このTeleport、実は最近グーグル傘下のモビリティ・マネジメントシステム「MOVE Guides」に買収されて話題を呼んだ。また開発メンバーの多くがSkype出身という優秀なエンジニア集団でもある。ちなみにあまり知られていないが、Skypeはエストニア発のサービスだ。
エストニアのテック系カンファレンス「Latitude59」の様子
自分の好み・スタイルに合う都市を見つける
まず、TeleportのWebサイトトップページ左下にある「START EXPLORING」のボタンをクリックすると、自分の好みやスタイルを選択するページに移動する。好みに合わせて選択していこう。
Teleportのトップ画面。
設問項目は「生活コスト」「生活の質」「仕事・キャリア」「都市インフラ」「起業」の5つ。例えば、「生活コスト」の項目では、「所得税率の低さ」「生活コストの低さ」「家賃の安さ」の3つの選択肢の中から重要だと思うものを選択する。複数選択もできる。すべて選択できたら「NEXT STEP」ボタンをクリック。
仕事や居住環境に関して自分の好み・スタイルを選んでいく。
次のページでは、現在住んでいる場所、家賃、職業、収入、職歴を記入する。記入後に「SHOW ME RESULT」ボタンをクリックすれば、自分の好みとマッチングした順に都市を表示してくれる。
現在住んでいる場所、家賃、職業、収入、職歴を記入する。
筆者も試してみたが、最もマッチしたのはシンガポールだった。実際に現在、シンガポールに住んでいるので、住むべくして住んでいるのかと感心させられた。大都会が苦手、海の近く、活気ある場所など個人的な嗜好が見事に反映された。
選択肢によっては日本の都市が出てくることもある。筆者は大都会が苦手なので東京はマッチングリストに入っておらず、代わりに京都が入っていた。
Teleportが自分の合った都市を提示してくれる。
Teleportがおもしろいのは、今まで移住先として考えたことがなかった都市が候補地になること。筆者の場合、2番目のトロント、4番目のアムステルダム、5番目のミュンヘンなどは、移住先として考えたことがなかった。
多くの機能のうち、実際使ってみて個人的に役立ちそうだと感じたのは、生活コストの比較機能だ。「DETAILS」をクリックするとおすすめの都市の詳細情報があり、現在住んでいる場所と生活コストを比較できる。
例えば、シンガポールとトロントの生活コストを比較すると、家賃や食費、医療費、その他を合わせた総生活コストのうち、それぞれがどのくらいの割合を占めるのかが分かる。 シンガポールでは、総生活コストの74%を家賃が占める一方、トロントではその割合は58%にとどまる。また生活コストだけでなく、可処分所得も計算してくれる。インターネット上で情報を探し、生活コストを一括して比較するのは非常に骨の折れる作業なので、この機能は非常にありがたい。
シンガポールとトロントの生活コスト比較
選択した都市の物価の詳細リストもあるので、移住後の生活もイメージしやすいだろう。トロントの物価は、フィットネスクラブ月間会員費46ドル、映画チケット9ドル、ブロードバンドインターネット接続41ドル、公共交通を使った場合の月間交通費110ドル、ランチ12ドルなどとなっている。また、現地の求人情報を知らせてくれたり、職種ごとの年収情報などを調べられたりできる機能もある。
極め付きは、Teleportに登録している各国のユーザーからの現地の情報。もし心配事があれば、質問を投げてみてもよいだろう。
近年クラウドベースの仕事環境が整備され、LCCなど移動手段の低コスト化が進み、働く場所や住む場所の制約はなくなりつつある。特に働き盛りの20〜30代のミレニアル世代では、テクノロジーを使いこなし、好きな場所で好きな仕事をするというスタイルが増えてきているように思える。
次の目的地をTeleportで探してみてはいかがだろうか。
(撮影:細谷元)
細谷元:金融と先端テクノロジーを追う1980年代前半生まれのミレニアル世代。シンガポール在住。(Livit)