McLaren F1 GTR
McLaren
イーロン・マスク氏は、生涯を通じて妥協しない姿勢を貫いてきた。
1999年、同氏は、起業したスタートアップZip2を3億ドル(約330億円)超で売却後、自分へのご褒美として新車を買うことにした。ただの新車ではない。当時最も高価な名車「McLaren F1」だ。
この車は1993年から1998年にかけてわずか64台しか製造されなかった。2015年、その64台のうち2台が売りに出された。うち1台は、『Mr.ビーン』で有名なイギリス人コメディアン、ローワン・アトキンソン(Rowan Atkinson)氏が所有していたもので、1230万ドル(約13億6000万円)で売却されたという。もう1台は、サザビーズのオークションで1375万ドル(約15億3000万円)で売却された1998年製「McLaren F1-LM」。
新車価格が80万ドル(約8900万円)であることを考えても、この車がどれほど高く評価されているかが分かる。
1999年に放映されたCNN Perspectivesドキュメンタリーには、当時28歳だったイーロン・マスク氏と当時の婚約者(現在の前妻)が、このエキゾチックカーを受け取るシーンが収められている。
当時の婚約者は「1台100万ドルもするなんて。うっとりする」と言った。
「3年前、私はYMCAでシャワーを浴び、オフィスの床で寝ていたんだ。今、私は100万ドルの車を手に入れた。快適な生活に必要な他のものと一緒に」とマスク氏はカメラに向かって語った。「McLaren F1は世界に62台しかない(※現在は64台)。私はそのうち1台のオーナーになる」
当時、McLaren F1は世界に例のない車だった。デザインとエンジニアリングを手掛けたのは、ピーター・スティーブンス(Peter Stevens)氏とゴードン・マレー(Gordon Murray)氏の伝説的デュオ。この車には、F1レースで成功を収めてきたマクラーレンの最新技術が詰め込まれた。
McLaren F1の運転席に乗るマスク氏
Youtube/CNN/Every Elon Musk Video
BMW製の6.1リッター627馬力V12エンジンを搭載。手作業で組み立てられたカーボンファイバー・シャシーを備えるハイパーカーの最高速度は、時速240マイル(約386.2キロ)以上。F1マシンのようにセンターに配置された運転席、24カラットの純金を敷き詰めたエンジンコンパートメントなど、この車の特徴は他に全く類を見ない。
その後マスク氏の愛車はどうなったか? 2012年、オンラインメディアPandoDailyのインタビューで、同氏は数年間いつもこのエキゾチックカーに乗り、1万1000マイル(約1770キロ)ほど走ったと語った。
走行中のMcLaren F1
Youtube/CNN/Every Elon Musk Video
同じインタビューでマスク氏は、愛車を事故で壊してしまったエピソードを披露した。かつてペイパルを共同で創設したピーター・ティール氏に車の性能を自慢しようとして、McLaren F1をスピンさせた。すると車は堤防にぶつかり、3フィート(約1メートル)の高さを「円盤のように」飛んで行ったという。
事故後、車は修理され、現在は新しいオーナーの手に渡り、カリフォルニア州のどこかで大切に管理されている。
現在マスク氏はテスラの最新モデルを運転しているが、同氏が所有していたシルバーのMcLaren F1はいまだにテスラの性能評価基準となっている。2014年、同氏は、テスラ「Model S P85D」の0-60mphタイム(停止状態から時速60マイル(約96.6km/h)に達するタイム)はMcLaren F1の3.2秒に並ぶと誇らしげに発表した。2016年、テスラ「Model S P100D」はわずか2.28秒という驚異的な0-60mphタイムを記録した。
上記のドキュメンタリーのうちマスク氏と当時の婚約者がMcLaren F1を受け取るシーンは、以下の動画で見ることができる。
source:McLaren、Youtube/CNN/Every Elon Musk Video
[原文:Watch a young Elon Musk take delivery of his McLaren F1 hypercar — before he wrecked it]
(翻訳:まいるす・ゑびす)