アパレル300兆円市場、3つの勝ちパターン —— ユニクロ、無印、鎌倉シャツに学ぶ日本企業の生き残り戦略

世界のアパレル市場推移

世界のアパレル市場の推移(名目成長率、米ドル換算)。市場規模は10年間で倍以上に増えると見込む。

百貨店やショッピングモールの閉鎖が相次ぎ、小売業の崩壊が叫ばれるアメリカ。日本でも人口減少を背景に、アパレルは苦戦を強いられている。

しかし、世界的に見ればアパレル産業は依然、成長産業だ。

ドイツを拠点とするヨーロッパ最大の経営戦略コンサルティング、ローランド・ベルガーの報告書によると、2015年に1兆3060億ドル(約146兆円)だったアパレル産業全体の市場規模は、2025年には2兆7130億ドル(約300兆円)に倍増する。その成長率は年平均3.6%、物価変動を加味した名目ベースでは7.6%だ。日本の2016年度のGDP成長率1.2%を考えれば、その成長力はたくましい。

3つの勝ちパターン

しかし、現実は厳しい。アパレルが成長産業とはいえ、そこには明らかな勝者と敗者が存在する。店舗の閉鎖が相次ぐ小売業は残念ながら後者だろう。では、グローバルにおける勝者に共通するパターンとは何か。ローランド・ベルガーは次の3つに分類する。

  • 高付加価値型

ストーリーやクリエーティビティをベースとした付加価値「ブランド」を創り上げることで高い収益を生む。カテゴリー拡大(ライフスタイル化)によるブランド力と収益性の両立がポイント。中には粗利が95%に達するブランド商品もある。

例:エルメス、LVMH、バレンティノ、プラダ、ケリングなど

ユニクロ

グローバルSPA型の1つ、ファーストリテイリングが運営するユニクロ。

撮影:今村拓馬

  • グローバルSPA型

SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel:製造小売)は、企画から製造、小売りまでを一貫して行うビジネスモデル。消費者の嗜好の移り変わりを迅速に製品に反映させ、在庫のコントロールが行いやすいなどのメリットがある。

この製造小売型のストアブランドをグローバルに展開し、スケールメリットとブランド認知向上を享受するのがグローバルSPA型。コストパフォーマンスの高さにより、先進国から新興国まで多くの消費者を引き付ける。業界内で最も成長の著しいタイプだが、プレーヤーの増加により、勝ち負けがはっきりしている。

例:GAP、Inditex(ZARA)、H&M、ファーストリテイリング(ユニクロ)、良品計画(無印良品)など

  • カテゴリーキラー型

スポーツ、アウトドアといった「領域」や、スーツ、靴、かばんといった「アイテム別」など、特定のカテゴリーに特化することで安定的な事業運営と収益性の向上を図る。ただし、成熟した昨今の業界において、ほとんどのカテゴリーで定番ブランドができあがっており、ニッチ戦略のみでの成長は難しくなってきている。

例:アンダーアーマー、ナイキ、アシックス、鎌倉シャツなど

「市場の縮小=不況」ではない

人口減少を背景とした国内市場の縮小。それはアパレル業界に限ったことではない。だが「アパレル不況」は叫ばれても、「自動車不況」が叫ばれることはない。ローランド・ベルガーの報告書は、そこに問題の本質があると指摘する。

「トヨタ、日産、ホンダ等の日本の自動車メーカーは、1990年代以来、基本的に増収を続けてきた。国内市場が厳しくなる中でなぜ増収できたかというと、言うまでもなくグローバル展開を進めてきたからだ。国内市場がいずれ頭打ちになることは、10年以上も前から誰しも分かっており、世の中のBtoC事業者の多くが成長機会のある海外市場を目指してきた。一方、国内アパレル業界は旧態依然としたまま国内市場にしがみつき、グローバル化が最も遅れている業界になってしまった。一部成功例は出てきているものの、多くの国内アパレルは海外進出に苦労しており、これこそが業界が解決すべき本質的な課題だ」

その上で、海外進出が遅れた背景として、1) 消費者の変化に伴う市場の変容に対応できていないこと、2) 海外で成功するために必要なブランド構築の失敗、3) 経営者の意志と覚悟のなさを挙げる。

では、国内アパレル企業はどうすれば生き残れるのか。

アパレル産業の変化を表した図

市場全体は縮小するものの、マスボリューム市場のシェアは拡大すると見られる。

グローバル? サステイナビリティ?

報告書は、生き残りのために残された選択肢は2つ —— ブランド構築の明確な戦略とロードマップを作り、海外進出にチャレンジするか(=グローバル)、コアなファンを大切にする地道な事業継続(=サステイナビリティ)しかないと結論付ける。

「(国内企業がこれまで依拠してきた)中間価格帯のトレンドマーケットでは、市場の縮小と、消費者の価値観の多様化に伴うトレンドの小粒化・短サイクル化が同時に進んだ結果、国内のトレンドマーケットのみで大きな売り上げを作ることはますます困難になる。総合系アパレルやセレクトショップは苦戦を強いられるだろう。また、団塊の世代が本格的に服を買わなくなる2018年頃から、顧客が高齢化しているブランドの統廃合も加速する。一定規模の企業が更なる成長を求めるのであれば、海外進出にチャレンジするしかないだろう」

一方で、個性あるデザイナーズブランドやストリートブランドには、これまで以上に成長の可能性がある。

「多様化する消費者をニッチに捉えることができる中小のブランド、ショップにとっては実はチャンスが多い競争環境。長期的な考え方に基づく事業運営となるため、株式市場への上場には向かないが、企業の理念や姿勢を支持する消費者セグメントが増加する中では、21世紀のアパレル企業の1つの考え方になるだろう。ニッチでも世界に響く理念・デザインを表現したブランドを作ることができれば、サステイナブルな事業の継続はこれまでよりも遥かに現実味を帯びている」

しかし、いずれの選択肢を取るにせよ、ビジネスモデルに合わせたデジタルの活用は欠かせない。

「自動生産、IoTの活用、マスカタマイゼーション(注:大量生産とほとんど変わらないコストでオーダーメイド商品を作る「個別大量生産」)、店舗におけるAI/ロボットの活用、越境EC、SNS、メイド・トゥー・オーダー等を自社のビジネスモデルに合わせて有効活用し、バリューチェーンを絶えず進化させて消費者に対する付加価値の向上、カスタマージャーニーの進化を図ることが必要だ」

300兆円市場をめぐる戦いは待ったなしだ。日本のアパレル企業は大きな岐路に立たされている。

※ローランド・ベルガーの報告書「アパレル産業の未来ー国内アパレル企業の課題と進むべき道ー」(全文)はこちら

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