フィンテックは「提携」の時代に —— 既存大手とスタートアップが相互補完

フィンテックのイメージ画像

Shutterstock

金融サービス企業のあり方ががらりと変わる、そんな変革の時代に我々は突入した。これは、インデックスファンド、ディスカウントブローカー、ATMなどが登場した1970年代以来の変化だ。

この迫り来る破壊的イノベーションの波からは、誰も逃れることができない。どの企業も、フィンテック革命がもたらす強力な恩恵を活用する戦略を持たなくてはならない。

既に始まっているこの戦いは、意外な勝者を生むと共に、既存金融大手の中から敗者も出て来るだろう。数十年続いてきた古き慣例を徹底的に作り直そうとしているスタートアップ、独自のイノベーションで必死に環境に適応しようとしている既存の金融大手、そして既存の技術およびプロセスを一掃する破壊的イノベーション、これらの間で起こるせめぎ合い(もしくは提携)が、最も注目すべきポイントとなる。金融機関にとっては、数ある機能の一部とフィンテック企業が競合する構図となるので、提供する機能・サービスを細分化して、各分野で競う(もしくは提携する)ことを強いられる。

具体的には:

  • 従来型のリテールバンキング 対 ネット専業銀行:従来型のリテールバンキングは価値あるサービスを提供しているが、ネット専業銀行は、それらのサービスの多くを、より高い利率とより低い手数料で提供することができる。
  • 従来型の融資 対 P2Pレンダー:借り手と貸し手(個人および機関投資家)の融資を仲介する為のプラットフォームを提供するP2Pレンダー(マーケットプレイス・レンダーとも称される)は、従来の銀行を上回るペースで成長している。独自の小口ローンネットワークを作るという従来の銀行側の戦略が功を奏すか否かの判断には、もう少し時間がかかりそうだ。
  • 従来型の資産運用管理サービス 対 ロボアドバイザー:ベターメントを代表とする、人工知能(AI)を利用したロボアドバイザーは、従来型の資産運用管理サービスよりも低い手数料、そして少ない最低投資額で利用することができ、堅実なリターンを生む。一方、従来の大手資産運用管理サービスは、富裕層に好まれる対面型財務アドバイスを引き続き提供しながら、独自のロボサービスを開発している。

現在の環境は非常に流動的で、勝者と敗者が次々に生まれている。同時に、個人、企業がコスト削減や成長する機会も新たに創出されている。

米Business Insiderのプレミアムユーザー向けリサーチサービス「Business Insider Intelligence」でシニア・リサーチ・アナリストを務めるサラ・コシアンスキー(Sarah Kociansky)氏は、この重要なトレンドを数カ月にわたって調査。その研究結果をまとめたフィンテックのエコシステムについての報告書は、最新の情勢を説明し、破壊的イノベーションの機が熟した分野を特定、注目すべき新しい企業をいくつか紹介する。これらの新参企業は、金融サービス業界の主要な分野で革命を起こすポテンシャルを秘めており、次のVisaやPaypal、オンライン証券チャールズ・シュワブになり得る。特に以下の7つの分野での動向は要注目だ。

  • リテールバンキング
  • 融資
  • 決済と送金
  • 資産運用管理
  • 為替と株取引
  • 保険
  • ブロックチェーントランザクション

上記のセクターで働いているならば、このフィンテック革命がどう自身のビジネスやキャリアに変革をもたらすのか、理解することが重要だ。また、このデジタル経済下で雇用されているならば、雇用者の効率性、柔軟性、収益性を向上させるために、新技術をどう活用できるかを知っておきたいところだ。

フィンテック・エコシステムの図

フィンテック・エコシステムの図

Business Insider Intelligence

前述の報告書「The Fintech Ecosystem Report: The Emerging Technologies and Firms Driving Change in Financial Services and How Legacy Players Can Navigate The Disruption(フィンテックエコシステム報告書:新興テクノロジー、金融サービスに変化をもたらす企業、そして従来の企業がどのようにこの破壊的イノベーションを乗り切るか)」には、全体的な洞察の他に以下の内容も含まれる。

  • フィンテックに対する投資は成長を続けている。2015年の世界のフィンテック投資額は190億ドル(約2兆1000億円)だったが、2016年は8月中旬時点で、150億ドル(約1兆6700億円)に到達した。
  • フィンテックの中でも、メディアや投資家が注目する分野は変わりつつある。インシュアテック(保険とテックを合わせた造語)、ロボアドバイザー、ネット専業銀行は、革命が起きている分野のほんの一部で、B2Bフィンテックもこのエコシステムの中で注目が高まっている。
  • フィンテック企業には弱みもある。顧客獲得や収益性などの重要な課題が存在することから、フィンテック企業の多くは、パートナーシップを結び、ビジネスモデルを調整している。
  • 既存大手はプレゼンスを保つ為の戦略を実行している。フィンテックがもたらす脅威に気付いた金融企業の多くが、この破壊的イノベーションを生き残るための戦略を導入しており、それらの戦略の大半は、フィンテック企業と何らかの形で連携することを含んでいる。
  • 既存大手とフィンテック企業の関係は発展していく。今やフィンテック企業は単純な脅威としては見られていないし、無視することもできない。どちらかと言うとパートナーとしての見方が強まっているが、事態はそれほどシンプルではなく、実際にはより繊細な距離感が保たれている。

[原文:The fintech ecosystem explained

(翻訳:Yuta Machida)

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